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黒翼契約譚《レイヴン・クロニクル》 IF:血月の黙示録  作者:
第一章:血月の黙示録

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4/6

第四話:血の匂い

この作品は、『黒翼契約譚レイヴン・クロニクル』の世界を礎に紡がれる、IFもしもの物語。

登場する者たちや根幹の設定には本編との繋がりがありますが、舞台と運命は全く別の軌跡を描き出します。

夜風が冷たい。


旧十三番街。屋根の上を、黒い影が駆け抜ける。


「対象反応、前方区域へ移動」


エルの声が、通信機越しに淡々と響く。


「高位吸血種反応、複数確認」

「うち一体は、始祖級疑似波長と一致」


セレナが槍を握り直す。


「……ノクス・R・アンリタ・ミラージュ」


教会が追う《偽りの始祖》

もし討てれば、長い戦いが終わる。

そう信じている。


一方、時計塔。


「ノクス様、どこ行ったんだろ」


クロエは窓際で頬杖をついていた。外は雨。

時計の針だけが静かに響く。


「また単独行動か」


レグルスが壁へ寄りかかり、不機嫌そうな声で言う。


「止めなかったの?」


「止まる男なら苦労しない」


クロエは小さく笑う。


その時だった。


――ドンッ!!


時計塔の扉が、激しく開かれる。


「っ……!」


クロエの顔色が変わる。

そこに立っていたのはノクスだった。


黒い外套が裂け、血が床へ滴るほどに溢れている。


「ノクス様!?」


クロエは駆け寄るが、ノクスはもはや立っていられず、壁へ手をついて荒い息を繰り返している。


「問題……ありません」


「あるよ!!」


クロエの声が震える。こんな姿は、今まで一度も見たことがなかった。


レグルスの目が細くなる。


「教会か」


「……執行官クラスが三人」


ノクスが低く答える。


「随分、派手にやられたな」


「問題ありません」


そう言った直後、ノクスの体が前に崩れ落ちる。


「ノクス様!!」


クロエが慌てて抱きとめ、手がたちまち赤く染まる。

温かく、濃厚な血の匂いが鼻をついた。


その瞬間、クロエの胸の奥で何かがざわめき立つ。


――足りない。


知らない感覚なのに、なぜか心の底から理解してしまう。


このままでは、彼は死ぬ。


クロエは混乱し、呼吸が乱れる。

どうすればいい?薬?包帯?――違う。

そんな表面的なものではなく、もっと根本的な何かが必要だと、体が叫んでいる。


次の瞬間、クロエは自分の指先を自ら噛み切っていた。


赤い血が零れ落ちる。


レグルスが目を見開き、ノクスも薄れゆく意識の中で瞳を揺らす。何より、クロエ自身が一番驚いていた。


「……え?」

「なんで、私……」


なのに口は勝手に動き、抑えがたい衝動が言葉を紡ぐ。


「……飲んで」


その声は静かだったが、まるで遥か太古から繰り返されてきた絶対の命令のような響きを帯びていた。


ノクスが苦しそうに目を伏せ、かすかな声を漏らす。


「クロエ……様……」


レグルスの呼吸が止まる。

だがクロエはそれに気づかず、ただ目の前の大切な人を救いたい一心だけで手を差し伸べていた。


ノクスはゆっくりと、クロエの指先から流れる血へ口をつける。


次の瞬間、信じられない光景が広がった。

彼の深く裂けた傷口が、まるで最初から何もなかったかのような速度で塞がり始めたのだ。


クロエの瞳が大きく揺れる。


「……なに、これ……」


部屋の空気がふいに変わり、窓の外に浮かぶ赤月の光が、わずかに濃く、鮮やかに染まった。


そして時を同じくして、遠く離れた十三番街の外周で――


ノクティスが突然足を止め、胸元を押さえる。


「……っ」


胸の奥が熱く燃えるようになり、血が騒ぎ出す。まるで長く忘れていた何かが呼び覚まされ、最も尊ぶべき存在――“主”の気配をはっきりと感じ取ったかのようだった。


エルが静かに振り返り、機器の数値を確認しながら告げる。


「反応数値、急上昇」

「始祖波長を確認」


その冷静な声だけが、静まり返った夜の街へと響き渡った。

読んでいただきありがとうございます!


少しでも面白いと思っていただけたら、

ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです!

引き続き「レイヴンクロニクル」をよろしくお願いします!

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