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「国のためにスパイを密告しろ」と言うから巨悪を追い詰めたのに、緊急事態条項の絶対権力の前に俺の正義は紙屑になったんだが?  作者: 中将


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第4話 「教授」の本領発揮

 カノンちゃんのファンの中で俺は認知度が高い。


 何と言っても常にネットライブの最上ランクの「SSS席」を陣取っており、ライブ中は常にカノンちゃんと交流をしていることから常に目立ち、発言に影響力があるのだ。


 カノンちゃんのことならデビュー当時からすべての情報を持っており、公式ホームページの誤りを訂正したほどだった。そのためにファンの間では「教授」とまで呼ばれている。

 気を良くしてファンの間のアカウント名も「教授」に変えたのは懐かしい思い出だ。


 だが、カノンちゃんのファンコミュニティは彼女の消滅から1週間も経つと瓦解寸前になっていた。

 週末の恒例になっていた生声を聞けないという事が大きなモチベーション低下に繋がっているのだ。


 ここは「教授」としてまとめ上げなければいけない――彼女が戻ってきたときにファンクラブが激減していたら悲しむに違いないのだから。

 これは、カノンちゃんが不在の間で俺ができる唯一のことと言っても過言では無かった。


 俺はこれまでのカノンちゃんの動画の魚拓を取ってあった。勿論、肖像権や著作権などがあるために俺個人で楽しむ目的で公開するつもりは無かったが、

 公式ホームページが閉鎖された以上、求心力を保つために一時的にそれらの動画をファンクラブの間だけでも共有しておこうと思った(ちなみに、俺のPCファイルはカノンちゃんの動画と画像で埋め尽くされている)。


 するとやはり怒りや嘆きの声、そしてファンをやめるという声は徐々にではあるが無くなっていった。

 実際に動画投稿サイトや公式サイトで見ることができる動画まで保存して公開する奴は他にいなかったのだ。


『流石です教授! これでカノンちゃんロスを解消できます!』


『カノンちゃんの声がまた俺に活力を与えてくれる!』


『うぉぉぉぉ!!!! 教授最高!」


 と言った称賛の声で埋め尽くされていった。


 よし! カノンちゃんがいなくなっても俺のおかげでコミュニティの瓦解を最小限に防げるかもしれない!


 そんな風に思って爽快感に浸っていた際に、俺のSNSに直接話したいという連絡があった。


 それは長里さんと言う、芸能人だった。芸能人でもありながらカノンちゃんの推し活をしているという事で話題になっている人物だが、腰が低く物腰が柔らかであることから非常に世間でも好感度が高い。


 どうやら俺と話をして今後のカノンちゃんコミュニティをどうするのかについて話し合いたいらしい。


 そこで雷が落ちたような閃きが頭に落ちた。この長里さんは世間的な認知度があり、光山すらもアカウントフォローしているという事が分かっている。

 ――あの屈辱を感じた日以来、光山について色々と調べたからな。光山がフォローしているアカウントで共通の知人は把握していたのだ。


 長里さんには大変悪いが利用できないか――と思ったのだ。


「長里さんに声をかけていただけて光栄です。テレビに出ておられるような有名な方に声をかけていただけるなんてこんなに嬉しいことは無いですよ」


「カノンちゃんのファンの間に有名人も一般人も関係ありませんよ。

 それに教授の活動は本当に素晴らしいです。中々、混乱しそうな同志をなだめたり、全て保存したのを無料で公開することは出来ませんよ。流石ファンの中でも四天王と言われるだけのことはありますね」


「いえいえ、動画をお金を払って渡せば色々と権利関係の問題が生じますしね。長里さんのような方にお声をかけていただけて本当に嬉しいです」


「最近はちょっと政治的な発信をするだけで捜査や逮捕されてしまう世の中になったのかと思うと本当に恐ろしいです。

 カノンちゃんなんてほんのちょっと皮肉を込めて歌っただけだったのに……」


「本当にいつになったらカノンちゃんは解放されるんでしょうかね? とにかく気になりますが、彼女が帰還するまでの間コミュニティを維持するのが教授としての責務なのかなと思っています」


「政治的発信をするだけで捜査や逮捕のリスクが高まるだなんて本当に信じられませんね。

 かと言ってここで自主規制をしてしまえば政府に負けてしまうようで大変癪なのです。

 教授、何かいい対策はありませんか?」


 俺は息をスーッと大きく吸い込んだ。この次の俺の発言が運命の分かれ道だと思ったからだ。


「”匿名性が高くなると情報の安全度が上がる”と言う情報を耳にしたことがあります。

 その情報によると『ドバイのセキュリティサーバー』を経由すれば、日本の警察は手出しできないし、AIの検閲も回避できる最強のシェルターになるみたいなんです」


「へぇ、そうなんですか。それなら早速やってみようかな……言論空間に息苦しく感じている同志にも勧めてみようかなと思います」


「それが良いと思います。カノンちゃんが戻ってきたとしても俺たちがいなくなっていたら悲しむでしょうからね。

 早速お教えしますね」


 このサーバーは俺が調べた限りでは逆に警察に悪い意味で注目されていることが分かっている。


「ありがとうございます、教授。これで自由な言論空間を維持できます」


「いえいえ、ご紹介しただけですから。サーバーを利用するだけで利用料などがかかりますのでその点は自己責任でお願いしますね」


 こうして通話が終了した。


 長里さんがドバイのサーバーで検閲が回避されると純粋に喜んでいるのが分かったので胸がチクリと痛んだ。

 現実は全く逆なのだ。このサーバーで政治的発信をすればむしろ逮捕されるリスクが上がるのだ……。

 良い人だからこそ相手の発言を純粋に受け止めてしまい、騙されやすいということなのだろうか……。


 翌日、長里さんが匿名性が高いドバイサーバーについて宣伝していた。俺がドバイのサーバーを教えたことは書いていなかったのでそれは幸いだったが心の傷は大きくなっているような気がした。


 だが、俺はその傷を見ないふりをした。

 

 俺のプランは確実に進んでいる。むしろ予定通り過ぎて怖いぐらいだ。

 後は光山の奴がこれを見つけて罠にかかるのを待つだけだ……。

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