その41
その41
これで晴れて魔物の大量虐殺・・・いや、スタンピードを避けて村を守るための正当な武力行使による、魔物の数の適正化を行う予定であった。
にもかかわらず、アズミから待ったがかかってしまう。もちろん当然ながら魔物退治は続けているものの、朝と晩、それと昼食前の昼の休憩時間も、魔力を練るような瞑想や、剣術の型を振りながら魔力を循環させる訓練をさせられる。
「なあ、アズミ、こんな事をするより、トウガラシでもバンバンばら撒いて、魔物をガンガン捕まえてった方が良いんじゃないのか?」
あと3か月もすれば王都に行って魔法学園に入る予定である。最悪欲しい知識さえ手に入れば、卒業はしなくてもいいとは思うが、とは言っても卒業はしといたほうが、後々何かの役に立つ事も考えられるし、学資としてお金は多い方が良いに決まっている。
「トウガラシは群れている魔物には効果が有るけど、相手が一匹二匹だと刀の方が早いのよ。」
確かにそれは言えるかもしれない。一匹二匹の魔物にいちいちトウガラシを使っていたんでは、数がいくつあっても足りないし、大量に使うとなると、作るのも面倒だし、収納バッグに入れておかざるを得ないが、バッグから取り出すのも面倒だ。
「それに、カズもわかると思うけど、魔法は科学的知識・・・のもたらす精密なイメージが絶大な効果を発揮するわ。それは、魔力を使った身体強化も同じ・・・。」
まあ、身体強化についてはこの村に来る時に走ったことである程度理解できるけれど、あえて今やる事なんだろうか?
と、思っていたが、いざやってみると多少は効果があるようで、意外とサクサク魔物を狩れるようになった。特にアズミのスピードが爆上がりで、手加減をしてもらわないと、俺の獲物がなくなる。俺様の技術向上のためにも、ぜひぜひ、手を抜かずに手抜きをお願いしたい。
と、言う訳で、やっといい感じでルーチンワークが回り始めたのだが、そこにまたまたイレギュラーが紛れ込む。
この村にやってきて1週間もたったころ、誰かに付け回されているらしいことに気づいた。まだ直接顔を合わせたわけではないが、どうもこちらの様子をうかがっているふしがある。
冒険者同士がバッティングすることはよくある事なので、始めは気にしていなかったが、様子をうかがっているのがいつも同じグループとなると話は変わってくる。
「ちょっと気持ちが悪いわね。」
アズミもこぼす。相手が何を考えているのか判らないのが、どうにも気持ちが悪い。
「彼奴ら、どこまで、何をやるつもりなのかってのが、どうにもな・・・・。一応ギルドに話しておくか?」
冒険者ギルドでは明確な犯罪行為はともかく、小さな諍い程度ではギルドの建物の外ではタッチしない。しかし現在ここに居る冒険者は同じ依頼を請け負っている臨時のパーティーのようになっているので、その辺が少しあいまいになっている。
何か大事になった場合、いきなり結果を持って行くより、あらかじめ話をしておいた方がスームズに行くだろう。
こっそり後ろに回り込んで、付け回しているパーティーの人相を確認してから、ギルドマスターに話を通しておくことになった。
「おい、またお前たちか!」
ギルマス、(臨時ではあるが、)は余分な仕事が増えそうと思って、少々不機嫌であるが、そういう対応はこちらも心外である。
「またって、なに、またって!」
アズミも少々オカンムリである。
大体、過去、俺たちは悪い事はした覚えがない。多少魔物を多めに捕まえたり、冒険者を助けたり、むしろ良い事をしたのであって、その反響が少しばかり大きくなっただけである。
「まあ、いい。で、今度は何だ?」
”まあ、良い。”はないだろ、と思うが、こちらはお願いする立場だし、ギルマスに余分な仕事を押し付けるのは確かだし、あまり強い事を言う訳にもいかない。
こういう時はアズミに任せるに限る。で、俺様は得意の引き籠りである。
「・・・・と、言う訳で、相手が何を考えているか判らないので、何かまづい事が起きた時のために、あらかじめ話を通しておこうと思って。」
「ああ、一応本人には話しておくが、冒険者なんて話だけでは収まらんぞ。
俺が話せばとりあえずその場はおとなしくなるかも知れんが、納得はしまい。後々の事を考えれば、力を見せておかないと…。」
「いいわよ。人間ではカズ以外の人を相手にすることがないから、ちょうどいい機会かもしれない。」
「おい、アズミ、良いのか? あまり目立ちすぎると、色々と面倒が起きそうな気がするけど・・・。」
「良いのよ、カズ。いつまでも大人しくしてるばかりじゃ、冒険者は務まらないし、その辺はいろいろ考えてるから。」
「話の特徴から見て、多分”アロナワの栄光"の連中だと思うが、アズミが問題ないなら話を通しておく。ま、たまには他の冒険者みんなの気晴らしに、ちょうどいい見世物・・・・、ゴホッ、その、なんだ・・・、気晴らしだ、気晴らし、良い気晴らしにはなるだろう。」
まったく、アズミを見世物にする気か? まあこの人、悪い人ではないのだが、カナのギルマスもそうだったが、ギルマスと言うのはみんな冒険者を掌で転がす趣味でも持ち合わせているのか?と、疑いたくなる。
何かと問題が起きそうだが、まだ起きていないのに騒ぐわけにもいかず、取り合えず”臨時の”ギルマスに下駄を預ける事に成った。
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