2幕 オトギウォーズ1.5 集う、ヒーロー(9)
「緊急アラートだと!? 何があった!」
……どうやら本当に緊急事態だったらしい。
式間殿は通信機を取り出すと、何が起きているのか把握するべく警備に連絡をとる。
「正面ゲートが突破されました! た、大量の水が流れこんできて、敵が――うわぁ!?」
スピーカーになっていたのか、通信機から拙者達にも聞こえるように警備員が状況を説明しようとする……しかし、途中で通話が途切れてしまう。
奴らめ、予想よりも早く動いたか。
「絶対に安全な場所は無いということだ。さあ、文殿の護衛に向かうぞ」
「ま、待ってくれ! 俺も行く!」
拙者が一番に部屋を飛び出し、続けて一成君にストームガール、雉鳴の順で部屋から出てくる。
「多田博士のいるラボは五階だ。ここからならエレベーターが一番早い」
……今いる場所は十五階。
もどかしい事に結構距離があるな。
「よしわかった、案内してくれ」
「……移動しながらでいいから聞かせてほしいんだが、よく襲撃が仕掛けられるとわかったな?」
拙者達を先導しながら、見事に襲撃される事を的中させた拙者を怪しんだのか雉鳴が問いかけてくる。
怪しまれているのは少し癪だが、先程の拙者の言動から間髪置かずに襲撃された以上、仕方ないか。
「少し考えればわかることだ。ノワールガイストの奴等は此方に作戦が漏れてしまったのを把握していて、作戦を変えることにしたのだろう」
「黒鉄重工襲撃は囮で、JDFの襲撃が本命だったてことだね。……でも、彼等の目的は文ちゃんなんだよね? どうしてJDFの支部にいるってわかったんだろう?」
流石はスーパーヒーロー。
ストームガールは中々の理解力を見せてくれた上に、いい質問まで投げかけてくれる。
「それはだな――」
「単純に文の事を監視してたんだろ。普段どこにいるかなんて一週間も見張ってればある程度わかるだろうし、何人かで交代して遠くから見てれば怪しまれる事もそんなにないだろ。……ですよね、桃太郎さん?」
拙者の言葉を遮って、一成君が代わりにストームガールの質問に答える。
一般人だと侮っていたが、中々に頭が回るではないか。
「その通り。先程の襲撃後に逃げ出した鬼達を一部の隊員が追っている以上、ここの警備が薄くなるのは必然。まんまと敵の策に嵌められてしまったという訳だな」
エレベーターの前に到着し、備え付けられたパネルにどこからか取り出したカードを触れさせてエレベーターを呼ぶ雉鳴の様子を見ながら説明を終える。
「成る程、わかった。丁度エレベーターも来たし、多田博士の元へ――」
拙者の理路整然とした非常にわかりやすい説明によって雉鳴を納得させる事はできたが、更なる面倒ごとが拙者達に襲いかかり、雉鳴も思わず絶句する。
目の前のエレベーターが開いた途端、中からJDFの職員が投げ飛ばされてきたのだ。
「いたオニ! ヒーローどもオニ!」
雉鳴が投げ飛ばされた職員を受け止めると、エレベーターに乗っていた鬼達がわらわらと外に出てくる。
「鬱陶しい鬼どもめ!」
「鬼たちを抑えてくれ! 俺はこいつを安全な場所に置いてくる!」
即座に刀を抜き何匹かの鬼を斬り伏せ、雉鳴は職員を避難させるべく近くの部屋へと向かう。
……鬼達の数は軽く二十匹はいるだろうし、殲滅するには少し時間がかかるか。
「桃太郎さん! 退いて!」
背後から響いた声にすぐさま反応して飛び退いた瞬間、鬼達目掛けて突風が吹き付けられ、彼等は皆エレベーターの中へと押し戻される。
「ここはアタシが抑えておくから、三人は階段で文ちゃんの元に向かって!」
ストームガールは視線を非常用階段に向けながら叫ぶ。
戻ってきた雉鳴が階段へと続く扉に向かい、拙者もその後に続く。
「……ごめん、楓花! ここは頼んだ!」
最後に残った一成君もストームガールへ謝りながら、拙者の後ろについてくる。
「うん、頼まれた! さあ、アタシを倒さなきゃここから先には進めないよ!」
数としては不利ながらも、そうは感じさせないストームガールの声を聞きながら雉鳴の開いた扉に飛び込んだ瞬間、殺気を感じて即座に刀を振るい、上から飛びかかってきた鬼を斬り捨てる。
……どうやら上の階から降りてきた鬼達と鉢合わせてしまったようだな。
「う、上から!? エレベーターは使えないし、一体どうやって上まで登ったんだ!?」
「さあな。一つだけわかるのは、絶対に安全なんて言葉は信用できないという事だ。雉鳴! 後ろにいる奴等は拙者が抑えるから、お主は前にいる鬼達を頼む! 一成君、拙者と雉鳴の間から離れるなよ!」
正面だけでなく屋上からも侵入したらしく、上も下も鬼だらけ。
背後から迫る鬼達を斬りつけながら二人に指示を出す。
「わかった、任せ――」
『こちら、五階ラボの多田だ! 敵の襲撃を受けているから、至急応援を――』
雉鳴の返事を遮るように、建物内のスピーカーから文殿の助けを求める声が響くが、それも途中で途切れてしまう。
……文殿の元にも護衛はいるらしいが、この侵攻速度からして敵はかなりの手練れ。
一刻も早く文殿を助けに行かなくては手遅れになる……かもしれない。
「文!? 畜生! 俺にもっと力があれば!」
拙者と雉鳴が鬼を薙ぎ倒しながらラボを目指して進むなか、無力さを痛感した一成君の叫びが辺りに響き渡った。
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