2幕 オトギウォーズ1.5 集う、ヒーロー(2)
「この……どこまでも邪魔をしおって!」
拙者と雉鳴の二人を相手に、ダースオーガはストームガールを追いかける事はおろか、ただ攻撃を受け流す事しかできない。
実のところ拙者達二人を相手にまともに戦えるだけ、この男もまあまあ凄いのだが、こいつを褒めるてやるつもりなど毛頭無い。
「一成! 大丈夫? 怪我は無い?」
「お、俺は大丈夫だけど、クロガネはダメだ! 一部の機能が壊れたみたいで動かせないから、一度戻って修理しないと!」
クロガネの言葉を聞くと同時に、ストームガールはクロガネに残されていた方の腕を抱え込む。
「わかった、アタシが運ぶ!」
華奢な身体のどこにそんな力があるのか、ストームガールはクロガネを抱えたまま飛翔し、撤退を試みようとする。
「ちょっと! 逃がすわけないでしょ!」
しかし、先程ブレイズライダーに蹴り飛ばされたジェネラルGが起き上がり、逃走を防ぐべくストームガール目掛けてアームを伸ばす。
「タフな野郎め。まだ起き上がってくるのか!」
ジェネラルGの動きに気付いたブレイズライダーが、靴裏から火を噴きながら勢い良く飛び上がりストームガールとアームの間に割り込むと、両手に灯した炎でアームを溶かしつくす。
そして、追撃を逃れたストームガールとクロガネは、空の彼方へと飛び去っていった。
「乙女相手に野郎とは失礼ね! ……まあいいわ。それよりもそんなにアテクシと戦いたいの? そこまで求められちゃったら、応えない訳にはいかないわね!」
「お前が何を言ってるのか理解する気はないけど、ヴァッサの事を聞かせてもらわないといけないからな。もう少し付き合ってもらうぞ!」
ブレイズライダーはジェネラルGの言葉を受け流すと、自身の目的を果たすべく殴りかかっていく。
「ぐぬぬ、面倒な奴らめ。鬼達よ! こいつらの相手をしろ!」
拙者と雉鳴の二人相手には勝てないとみたダースオーガが後退りながら叫ぶと、どこからか鬼や機械人形が姿を現し、拙者達を取り囲む。
「……あの男、勝てぬとみて逃げたしたか。まあいい、さっさとこいつらを片付けて後を追えばいいだけだ」
「なあ、桃太郎、戦いながら教えてくれ。今ジェネラルGと戦っているヘルメットの男。一体何者だ?」
……どうやら、ブレイズライダーはヒーローとしての知名度はあまり高く無いらしい。
少々面倒だが、さっさと説明を済ましておいた方が良いか。
「あの男の名前はブレイズライダー。自称だがヒーローを名乗っていた。拙者がここに来る途中、偶然通りかかって拙者をここまで運んできてくれたのだ」
拙者は二本の刀を振るいながら、先程ブレイズライダーに会った時の事を思い返す。
「なあアンタ……いや、桃太郎さん。騒ぎを起こしてる奴等に用事があるって言ってたけど、どういう関係なんだよ」
雉鳴の元へと向かう為に、車を強奪……いや、ヒッチハイクをしていた拙者の前に唯一停まってくれた自身をヒーローと称する男、ブレイズライダー。
お互いの自己紹介を済ませて、拙者が壊滅させた鬼ヶ島の上位組織であるナントカカントカという奴等が狼藉を働いている街へ向かっている最中。
暫くはお互い黙っていたのだが、沈黙に耐えられなくなったのかブレイズライダーが拙者の事情を聞いてくる。
拙者の事情を説明すると混乱させるかも知れないが、まあ混乱したところで誰が困るわけでもないし、別に構わんだろう。
「拙者は鬼ヶ島という組織によって作られた人造人間で、訳あって鬼ヶ島を壊滅させたのだがな、今暴れている奴等の中に鬼ヶ島の一味が加わっているらしい。故に奴等を成敗しようとしていた訳だ」
「じ、人造人間? ……何を言ってるのかよくわからないけど、とにかく今暴れまわってる奴等をどうにかしにきたって事で構わないんだよな?」
……若干困惑しているようだが、理解が早くて助かる。
「うむ、大体そういう事だ……ブレイズライダー、このスピードを維持したまま真っ直ぐ進んでくれ」
「……? 構わないけど、一体どうした――!?」
歩道に飛び降りた拙者の姿を見て、言葉を失ったブレイズライダーを尻目に刀を抜くと、目の前にいた鬼たち目掛けて駆け出し、斬り捨てる。
そしてその場で跳躍し、再びバイクへと飛び乗った。
「よし、先に進むぞ……どうした? 前を見てないと事故の原因になるぞ」
何故か此方をポカンとした様子で見ているブレイズライダーに声をかけると、我に帰ったブレイズライダーは慌てて前方へと視線を戻し、スピードを上げる。
「……いや、急な事で驚いただけだ」
ああ、なるほど。
拙者が急に飛び降りた事で驚かせてしまったのか。
「驚かせて悪かった。逃げる人達を追い回してる鬼の姿が視界に映ったのでな。説明する暇もなかったから、そのまま飛び降りたのだ」
「どっちかといえば刀を振り回しながらバイクと並走してる方に驚いた……いや、急に飛び降りたのにも驚かされたけど。それにしても桃太郎さん、凄いな」
ほう? この男、拙者の凄さがわかるとは中々見る目があるではないか。
「そうだろう? これも日頃の鍛練の賜物だ。お主も己を鍛え続ければ、いずれは拙者のようになれるぞ」
この男の年齢はわからないが、声の雰囲気からして多分拙者よりは若い。
拙者を尊敬しているというこの男を、導くのもまた道理。
そういうわけで鍛練の大切さを説いたのだが、ブレイズライダーは頭を横に降る。
「そっちじゃない……いや、やっぱりそっちも凄いけど、俺が凄いと思ったのは人助けの為に躊躇無く飛び降りた方だよ。俺、運転に集中してたとはいえ、気がつかなかった」
……何だ、そっちか。
拙者の類い稀なる身体能力に憧れを抱いたと勘違いしていた事に気付き、僅かながらがっかりしてしまう。
とはいえ、この男が拙者の事を敬い慕っているのは事実。
ならば、失望させないように返事をしなくてはな。
「フフフ、拙者の動体視力を持ってすれば容易い事よ。まあ、拙者は後ろに乗せてもらってるだけだから、周囲に気を配りやすいというのもあるがな」
「そうじゃない。桃太郎さんだって急いでるだろうに、自分の用事を後回しにして人助けした事が凄いって言ってるんだ」
……この男、つくづく拙者の考えと別の事を言ってくる。
「そんなことか。拙者にとってはあの程度朝飯前……いや、食前の運動にもならん。ようするにあの程度の奴等を相手に手間取る事はないというわけだな」
拙者のありがたい言葉を聞いたブレイズライダーは感動するかと思ったが、予想を裏切り突如として笑い出す。
「いきなりどうした? 何かおかしな事を言ったか?」
「いや、やっぱり凄いって思っただけだ。桃太郎さんみたいに凄い人、今まで会った事無い」
……微妙に含みを感じるが、言葉通りに受け取っておくか。
「うむ、拙者は凄いのだ。……どうした? 急に停まって?」
突如としてバイクをその場に停めたブレイズライダーに問いかけると、彼は黙って前方を指差す。
そこでは黒く巨大な装甲服と、背中からアームを生やした装甲服が戦っており、その奥ではポニテ少女と雉鳴が見覚えのある憎い奴と戦闘を繰り広げているではないか。
「既に戦闘開始してるみたいだ。桃太郎さん、俺はこのまま突っ込むけど、引き返すなら今の内――」
「アームを一本、拙者が持っていく。その後は任せた」
拙者は即座にバイクから飛び降りて刀を抜くと、アームを生やした装甲服へと斬りかかっていった。
今回の話を読んでいただきありがとうございます。
ブクマ・ポイント・感想をもらえれば筆者のモチベーションが上がるので非常にありがたいです。
次回投稿は前日にTwitterで告知予定です。




