その6
『フハハハ…全く此処まで上手くいくとは思わなかったよ…ペニーの奴は最期までよく仕事をしてくれた』
スクリーンの中のフランクたちが一斉に喋り出す。ダニーとミス・ジェーンは呆然としながら、この光景を眺めた。するとスクリーンの映像たちが切り替わり、総会の会場やキングスカンパニーの支社、ドローン製造工場、そして海兵隊の本営が映し出された。
「一体何だ…これは…?」
余りにも異様な光景にダニーが思わず呟く。ミス・ジェーンは顔を真っ青にして、その場にしゃがみ込んだ。スクリーンに浮かぶフランクの笑い声だけが周りに響き渡る。
『見えるかね?君らの姿はスクリーンの向こうにいる人々の見ている画面にも映し出されているのだよ』
「何だと!?」
ダニーが慌てて海兵隊の本営の映像を見ると、作戦指令室にいるナターシャやMr.ウルヴァリンの姿が確認できた。彼等もダニーとミス・ジェーンの姿を見て驚愕しているようである。
『ようやく、これで私の念願が叶った。ダニー、とかいっていたな。本当に君には感謝する。まあ、随分痛い思いをさせてくれたがね』
「まさか、本当にAIに転生を果たすなんて…」
『全てはあの女、ペニーのお陰だ。今の私の姿を見ればあの女も草葉の陰で喜んでいるだろう』
「…貴方、ペニーにまたしても手を掛けたというの…?」
ミス・ジェーンが声を震わせてスクリーン上のフランクに問いかける。フランクはニヤリとミス・ジェーンを見下すような笑みを浮かべた。
『もうあの女は用済みだ。「キングブレイカー」で始末させてもらった』
「何てこと!!?」
「貴様!!」
ダニーがスクリーン上のフランクに向けてパルスキャノンを撃ち込む。が、弾はスクリーンを貫通して遥か向こうの壁に着弾した。フランクの笑い声が更に強まる。
『まだ私の力が理解できていないようだな。下等生物だから仕方ないにしても、ちと教育が必要なようだな』
「チッ、ふざけやがって!!」
ダニーが右腕のレーザーブレードを射出したとき、突然目の前に全身メタリックの光沢に覆われた筋骨隆々の大男のアンドロイドが現れた。
アンドロイドはゆっくり動き出すと、ダニーの顔面に拳を見舞った。不意打ちを受けたダニーは一気に壁際近くまで吹っ飛ばされる。
「ダニー!!!」
ミス・ジェーンが立ち上がって叫んだ。アンドロイドは不気味な笑みを見せる。ミス・ジェーンがアンドロイドの方を振り返ると息を飲んだ。
「フランク…なの?その姿は…?」
「フッ、小娘。驚いているようだな。この日の為に私が用意していた完璧な義体だ。やっとコイツが陽の目を見る時が来た」
「くっ…これこそが貴方の最終目標だったのね…」
「ハハハハハ…あんな醜い肉体から早くオサラバしたかったのでね。実に清々しい、全く最高の気分だよ…ハハハハハ」
そういうとフランクの義体は社長の席の前に横たわる自身の遺体を掴んで社長室の隅の方へと放り投げた。その様子を見たミス・ジェーンは戦慄して後ずさる。
「何て人なの…自分の体なのよ…両親からもらった体を何だと思っているの…!!?」
「フン、あんな糞みたいな肉体など此方から願い下げだ。両親からもらったなぞ、もはやどうでもいいことだ。貴様らに私のコンプレックスなど理解できるか!私が成りたかったのは、この完璧な体なのだ!本当に長い道のりだった…此処に至るまでの犠牲なぞ些細なもんだよ…!」
「そんな勝手なこと許されると思うの?!フランク!!」
「ハハハ…小娘。私の完璧な姿を指を咥えて這いつくばって見ているがいい…ハハハ…ハハハ!!」
メタリックの大男の姿となったフランクが狂ったように高笑いする。ダニーは攻撃を受けた頬を押さえつつ、ミス・ジェーンの元に駆け寄った。ダニーも先程までのフランクとは似ても似つかぬ大男の姿に動揺している。
「マジかよ…あんたもMr.ウルヴァリン並みの隠し玉を持っていやがったか…」
「ハハハ…驚くのはまだ早いぞ、ダニー!これを見るんだ!!」
そういうとフランクは義体の両足からジェット噴射して、社長室の天井を突き破った。慌ててダニーもフランクを追って両足のジェットパックを起動して上空へと飛び上がる。
「待って、ダニー!!罠かもしれないのよ!?」
「だとしても、このまま放置する訳にはいかない!!ミス・ジェーン、早く此処から脱出するんだ!」
ダニーはミス・ジェーンに向かって叫ぶとフランクの待つキングスカンパニーの本社タワービルの真上に辿り着いた。するとダニーの目の前には信じられない光景が広がっている。
「ようこそ、ダニー」
「チッ、ミス・ジェーンの言った通り罠だったか…」
フランクの義体の周りには無数のドローン兵器が取り囲んでいた。フランクはダニーを見下すように余裕の笑みを浮かべている。ダニーは顔をしかめつつ、レーザーブレードとパルスキャノンを射出して迎撃態勢を取った。
「この義体の性能を試す時が来た。ダニー、お前には文字通りスケープゴートとなってもらう。この光景は先程のスクリーンを通して各地に中継されている。お前の死によって人々は私の力を知ることになり、私はより完全なる「王」となるのだ!!!」
「…下らん…今こそ決着を付けてやる…最終決戦だ!!!」




