その5
ダニーとフランクは互いに武器を突きつけ合いながら、何とかこの硬直状態を打開しようとしている。だが、どちらも武器を棄てるという選択肢がないことは明白だった。
「…しかし驚いたよ。まさか開場時のセキュリティチェックを掻い潜って武器を持ち込むとはな」
「あの程度のセキュリティチェックなど目じゃないわ。大方のサーモグラフィや金属探知機を通せるように工夫したんだもの。私の技術力をバカにしないで欲しいわ」
ミス・ジェーンがフランクに対して得意気な態度で返す。ダニーはフランクのピストルに掛ける指の動きを慎重に見定めていた。フランクは旗色が悪いのか脂汗をかいているように見える。
「さてどうするよ、社長さん。このままにらめっこを続ける気か?」
「フン、下等生物が。いい気になるなよ!」
フランクは銃口をダニーからミス・ジェーンへと向けた。しかしミス・ジェーンは動じることなくフランクを睨み付ける。
「やれるものならやってみなさい。私を撃った瞬間に貴方も死ぬわ。でも…それで本当にいいの!?まだ貴方には引き返せるチャンスがあるわ!!」
「フッ、小娘が生意気なことをほざく。私に説教など百万年早いわ!お望み通り撃ってくれる!!」
「やめろ!!!」
フランクが引き金を引こうとした瞬間、ダニーのパルスキャノンが先に火を吹いた。弾はフランクの喉元を撃ち抜き、フランクは社長の椅子に持たれるように崩れる。
「が、がはっ!!!が、ああ、あ…」
フランクはもがき苦しみながらも喉から吹き出す血を必死に押さえようとする。声にならない叫びを続けた後、豪快に血を撒き散らしながらフランクは床に倒れ込んだ。社長室の床に敷かれた絨毯は瞬く間にフランクの血で真っ赤に染まった。
「う、撃っちまった…」
ダニーはパルスキャノンを構えて呆然としている。ミス・ジェーンはフランクの元に駆け寄り、容態を見ている。その顔色が優れないことから既に手遅れであることはダニーにも理解できた。ミス・ジェーンは目を瞑って首を横に降る。
「…フランクは死んだわ」
「…そ、そうか…」
ダニーは取り返しの付かない行為をしたかのように項垂れる。ミス・ジェーンはダニーの元に歩み寄ると優しくダニーを抱き締め、慰めた。
「貴方は悪くないわ、ダニー。何れにしてもフランクはこうなる運命だったのよ…余計な苦しみを与えなかった分、まだ彼にとっては幸せだったと思うわ…」
ミス・ジェーンもやるせない表情でフランクの亡骸を見つめている。どこか憐れみのような感情も混ざっているようだった。ダニーはゆっくりと社長室の出入口に向き直り、ミス・ジェーンを見つめた。
「これからどうする?総会に戻って説明しようか?」
「そうね、まずは彼の死を伝えなければ…」
二人がフランクの死をどう説明すればよいか話していると突然、社長室の壁が音を立てて崩れ出した。壁の向こうには無数の透明のスクリーンが並び、まるで電脳空間のような青緑の無機質な背景が現れた。
「な、何だ?これは!?」
「一体どういうこと?!」
ダニーとミス・ジェーンが突然の出来事に驚愕していると、無数のスクリーンに死んだはずのフランクの顔が浮かび上がってきた。その姿は不気味を通り越してシュールである。
「フランク!!?貴方、まさかあの研究を完成させたというの!!?」
ミス・ジェーンがスクリーンのフランクに向かって思わず絶叫した。ミス・ジェーンの問い掛けにスクリーンのフランクは不気味な笑みを見せた。




