その3
「皆様、本日はお忙しいところ弊社の大株主総会にご参加いただきまして大変恐縮です。これよりスクリーンの資料を元に私の方から説明させていただきます」
壇上のフランクにより今回の独断による私設軍の投入並びに軍の上層部との癒着に関する疑惑の釈明が始まった。ダニーとミス・ジェーンを囲んでいたスーツ姿の男たちも一旦動きを止め、壇上のフランクを見据える。
フランクの説明自体は事務的な当たり障りのないものに終始した。要約すると、自分には一切非がないことと一連の行動に対する正当性、そして軍の上層部やダニーらへの責任転嫁であった。
ツラツラとご託を並べてはいるが、呼び集められた幹部や株主の大半は説明の内容に到底納得していない。現に説明が終わり、会場内の照明が再点灯すると一気に怒号や罵声が会場中に響き渡った。
「全く持って説明になってないぞ!」
「証拠は何だ!?そんな資料で納得できるか!」
「我々を騙して、会社を私物化していたのか!」
「あんたがトップのままじゃ、皆納得しない!今すぐCEOを退任してもらおう!」
フランクに浴びせられるのは辛辣な言葉ばかりである。フランクは頭を下げてじっと耐えているが、拳をわなわなと震わせている限り限界が近いようである。ダニーらも針のむしろ状態のフランクを演壇の下から眺めていた。
「敵ながら…此処まで言われて同情するぜ。ま、自業自得だからフォローする気にもならないけどな」
「昔からプライドだけは無駄に高かったから、大分堪えてはいるはずよ」
ダニーとミス・ジェーンが小声で喋り合う。フランクは壇上から顔をゆっくり上げると不意にダニーらと目が合った。フランクは何かを思い立ったのか悪魔のような笑みを浮かべる。突然フランクは壇上からダニーらを指差して幹部や株主に注目させた。
「皆様、私が今回の事態を招かざるを得なかった最大の元凶が今目の前におります。彼等こそ正に国家の敵であり、私は彼等から一刻も早くこの国を救いたい思いから、今回のような独断に至ったまでです。彼等こそが「ウロボロスの終末」なのです!」
フランクの発言に会場内が騒然とし、ダニーとミス・ジェーンに参加者たちの視線が集中する。参加者の注目が向いたところでスーツ姿の男たちが一斉に拳銃を抜いてダニーらに銃口を向けた。
ダニーはミス・ジェーンを守るべくスーツ姿の男たちを睨み付ける。対してミス・ジェーンはドヤ顔を見せる壇上のフランクに呆れて深く溜め息を付いた。
「はあ…大根役者っぷりも此処まで来ると清々しいわね…」
「フン、何とでも言うがいい。ペニーの奴が私に内緒で総会に呼び寄せていたみたいだが、飛んで火に入る夏の虫とはこのこと。今こそ貴様を始末させてもらう、ジャネット・シーラン・キング!!」
ミス・ジェーンの本名を呼ぶフランクの発言に会場内は更に騒然とした。ウィルソン相談役とマーカス支社長は「やめろ!」とスーツ姿の男たちに向かおうとするが、人だかりに埋めれて身動きが取れない。
男たちが引き金を引こうとしたとき、ダニーはタキシードを破り捨て、パワードスーツの姿を露にした。するとダニーの両肩が開き、小型のレーザービームが全方位に射出された。
レーザーはスーツ姿の男たちの肩や腕を貫き、男たちは呻き声を上げて一斉に倒れ込む。突然の出来事に会場内は大パニックになったが、ミス・ジェーンが皆に落ち着くように冷静に促した。
「大丈夫だ。連中の命に別状はない。ちょっと戦力を奪っただけだ」
ダニーがミス・ジェーンに微笑む。ミス・ジェーンも満足げに頷き、壇上のフランクに視線を向けた。その目はダニーの時とは対照的に氷の如く冷たい。
「さ、そろそろ裸の王様には王国からご退場いただこうかしら?フランク・フリーマン」
ミス・ジェーンを睨むフランクの顔が引きつり出した。その表情は演壇の背面にあるスクリーン一杯に写し出された。




