その1
これより第五章です。
クライマックスに向けるのでちょっと短めになるかもしれません。
ダニーたちとサザンカ率いる忍者部隊+キングスカンパニーの私設軍とルーズベルト少佐のドローン部隊との三つ巴の戦いから10日が経過した。戦いの後、ダニーらは発電所跡の拠点から数十キロ離れた拠点へホバークラフトで移動し、戦いの傷を癒すことにした。
ダニーは戦いの直後に気を失ったものの、三日後に意識を取り戻し、ミス・ジェーンの尽力によって失った義体も修復された。新たな義体は以前よりも内蔵できる武器が増え、大幅に強化されている。
両目の義眼も差し替えられたが、ルーズベルト少佐戦に使われた切り札は使用不可となった。ちなみにダニーが意識を失っている間はナターシャが片時も離れず、看病を続けていた。
Mr.ウルヴァリンはメカコングの体から元の黒猫の体に戻り、再び散歩もとい諜報活動に入っていった。メカコングの体は再びメンテを受ける為に拠点の地下深くに格納されている。
そしてダニーらに保護されたルーズベルト少佐は辛うじて一命は取り留めることができた。しかしダニーとの戦いの傷は深く、しばらくは安静を余儀なくされることとなった。
「アーノルド、と呼んでいいのかしら?」
ミス・ジェーンがルーズベルト少佐に優しく語り掛ける。ルーズベルト少佐は黙って頷いた。ミス・ジェーンはルーズベルト少佐に自身の体の容態を説明する。
「正直いってアーノルド、貴方の体は重傷ね。しばらくは車椅子生活になることを覚悟してちょうだい。まずは傷の治療だけど、今後のリハビリや義体の調整についてもスケジュールを組み立てるわね」
「…すまない、ご婦人…」
「ミス・ジェーンよ」
「えっ…?」
「「ミス」、覚えておいてね」
「ああ、すまない。失礼した、ミス・ジェーン」
ルーズベルト少佐がばつ悪そうに頭を掻く。ミス・ジェーンは穏やかに笑ってルーズベルト少佐の手を握った。
「大丈夫、きっと元の状態に戻れるわ」
「ありがとう…しかし、私は元の状態に戻れるのか些か不安なんだ…」
「どうして?」
「私は自分の独断でクーデターを部下に命じて起こした。自分の信じる正しい道を選んだとはいえ、多くの人を巻き込み人生に多大な影響を及ぼしてしまった。果たして海兵隊に戻ったとき、私は以前のように部下たちに接して彼等と向き合うことができるのか、とても不安なんだ…」
ルーズベルト少佐はダニーとの戦いの後のやり取りを思い出し、俯いてミス・ジェーンに吐露した。少佐の心情を察したミス・ジェーンは握った手を強めた。
「大丈夫、貴方が選んだ選択は決して間違っていないと思う。貴方の部下たちが付いてきてくれたのが何よりの証拠じゃないかしら?それに仮に貴方が行動を起こさなかったとしても何れ誰かがクーデターを起こしたと思う。皆同じ不満を抱えている以上、貴方の行動を責める人はいないと思うわ」
「……すまない、ミス・ジェーン。私としたことが、弱音を吐いてしまったようだ」
「気にしないで、アーノルド」
ミス・ジェーンは穏やかな笑顔を見せた。つられてルーズベルト少佐も微笑み返す。そのとき、ベッドの下から一匹の黒猫がひょっこりと現れた。
「おやおや、お二人さん中々いい雰囲気ですな。正に美女と野獣じゃないかね?」
「病人をからかうのは辞めて、Mr.ウルヴァリン」
Mr.ウルヴァリンの登場に呆れるミス・ジェーンに対してルーズベルト少佐は喋る黒猫に驚いて凝視した。
「な、何なんだこいつは?いきなり出てきて何者だ?!」
「あー、そうか。キングピンは戦いの時、メカコングの体だったから黒猫の姿を知らないのね。実はこっちが本来の姿なんだよ」
「な、ま、まさかあの時のメカゴリラか!!?」
「大正解。でもお宅の方がゴリラに近いかな」
「誰がゴリラだ!!…ゴホゴホ」
Mr.ウルヴァリンの言葉にルーズベルト少佐が思わず咳き込んだ。ミス・ジェーンは少佐の背中を擦りながらMr.ウルヴァリンを眼光鋭く睨み付ける。Mr.ウルヴァリンは頭を掻いて誤魔化した。
「ところでMr.ウルヴァリン、何か用があるんじゃないかしら?冷やかしなら出てってちょうだい」
「おお、そうだ。実はこっちにキングピンと同じエンブレムを付けた軍服の一団が向かっているそうなんだよ」
「!海兵隊か!!」
ルーズベルト少佐が思わずベッドから身を起こす。Mr.ウルヴァリンは構わず続けた。
「うむ、サイクロップス君からの依頼でキングピンの容態を直接確認させたいとのことで此方の居場所を本営に連絡したんだ」
「どういうことだ?」
「サイクロップス君曰くキングスカンパニー打倒の為に是非とも海兵隊と協力したいそうなんだ。その為にキングピン、お宅の存在が必要なんだと」
「ダニー・マードックめ…アジな真似を…」
「で、どうするかね?キングピン。君ら海兵隊は我々と組むのかい?」
「……これ以上其方と争うつもりはない。キングスカンパニーという共通の敵が出来たからには一時的に共闘するしかないようだな…」
「そうこなくちゃ」
ルーズベルト少佐からの言葉を聞いてMr.ウルヴァリンはニンマリと笑った。




