その20
「バカな!!??全滅、だと!!?」
「は、はい、今回の作戦に投入した歩兵部隊、戦車、戦闘ヘリ、航空部隊、装甲車輌部隊いずれも壊滅…しました」
「そ、そんな…あり得ん…サザンカは、サザンカはどうしたのだ!?」
「…そ、それが、忍者部隊も…サザンカ様含め全滅を…」
「……な…サザンカほどの手練れが敗れるとは……」
キングスカンパニーの本社の社長室にてダニーらの掃討作戦の報告を受けたCEOのフランク・フリーマンは予想だにしない戦果に対して、怒りの余り体を震わせている。握り締められた両手の拳は机に何度も打ち付けたことで、血が出そうなほど赤く腫れ上がった。しかし拳の痛みに構うことなく、フランクは尚も机を殴り続ける。
「ぐう……ううううううう、海兵隊は!!司令官に装備を提供したはずだぞ!何か成果はないのか!?」
「そ、それが…由々しき事態が起きまして…」
フランクは海兵隊のクーデターの報告を受けると腰を抜かしたようにへたりこんだ。自分の息が掛かっていた司令官を含む上層部全員が拘束されたことと、クーデターに使用されたのが皮肉にも自分が提供した装備だったからである。
「何たることだ…あり得ん…こんなことあってはならない………」
フランクは独り言を反復しながら現実を受け止めきれない様子を見せた。フランクの余りの取り乱し様に取り巻きたちも皆、どうしていいか分からない状況である。
「直ぐに!!私設軍の追加投入を命令する!!軍が頼りにならない以上、我々だけで奴等を殲滅するのだ!!!!」
「そ、それが……直ぐに追討命令を出すことが出来ないのです…」
取り巻きのお茶を濁す答えにフランクの怒りは更にヒートアップする。
「何故だ!!!!?社長は私だ!!これは社長命令だぞ!貴様らに私を止める権限はない!!」
「……その、今回の私設軍の投入が社長の独断で行われ、尚且つ全滅したことが我が社の幹部たちや株主に知られてしまい、非常に不信感を持たれています。早急に社長自ら株主総会等を開いて説明責任を果たすように圧力を掛けられておりまして…社長命令だけで私設軍を動かすことができない状況なのです……」
「ぐぬぬぬぬぬ…内部からも突き上げられているというのか……下っ端と外野の癖に猪口才な…!!」
フランクは自身の席の前に置かれた姿見を思いっきり殴り付けた。鏡は蜘蛛の巣のようにひび割れ、フランクの拳から血が滲み出す。鏡にはひび割れの影響で歪んだフランクの像が幾つも写っている。
(フランク…)
AIのペニーのホログラムが社長室の机から現れ、優しくフランクを慰めるような声を呟いた。しかし今のフランクにはそれすらも怒りに火を注ぐ。フランクはその場で膝を付き、血の滲んだ拳で床を叩いた。
(皆、申し訳ないけど此処から出て。フランクと二人で話したいの)
ペニーからの言葉を受け、取り巻きたちは急ぎ社長室から退散する。項垂れるフランクにペニーが話しかけた。
(フランク、例の研究のことだけど、漸く完成の目処が立ったわ)
「何!!!?」
フランクはペニーの言葉を受けて顔を上げる。絶望の中に一筋の光明が射したような表情である。
(最短でも二週間、遅くとも来月にはシステムは完成するわ。そうなったらいつでも発動可能よ)
「……よろしい。このような状況の中、完成の目処が立ったということは計画を早めた方が良さそうだな…」
(………)
「ペニー、最短での完成を頼む。併せて株主総会を開いて幹部連中と株主どもに説明する。幹部の連中のスケジュールを調整して二週間後の開催に設定しようと思う」
(わかったわ…善処する…)
「よろしく頼む」
フランクはペニーに依頼して通信を切ると血の滲んだ拳をハンカチで丁寧に巻いた。姿見の横に置かれた筋骨隆々のメタリックの人型オブジェにフランクは目をやる。
「あと少しだ…誰にも、誰にも私の邪魔はさせん!」
これにて第四章は完結です。




