その19
ナターシャはダニーをしっかりと、それでいて優しく包み込むように抱きしめた。大粒の涙を溢してダニーの胸に顔を埋めている。ダニーも左腕でナターシャを抱きしめ、背中を擦って宥めている。しばしの抱擁の後、ナターシャはダニーから一旦離れて改めて顔を見合わせた。
「良かった…生きてはいる…みたいだな」
「この姿じゃ無事とは言い難いがな」
「本当に…目も当てられないくらい酷い有り様だな…。その、両目は…見えているのか?」
「ああ、痛々しい見た目の割には見えているから安心してくれ。ただ全体的には重傷だから、しばらくは治療が必要かもしれない、な」
ダニーは自嘲気味に笑った。明るく振る舞うダニーの様子にナターシャも涙を拭って優しく笑い返した。
「ナターシャも足を怪我してるじゃないか。大丈夫なのか?」
「ダニーに比べればこんな傷どうってことないよ。それにあたしの目的は無事に果たせたからね」
「……ってことはサザンカを…!?」
「ああ…全て終わったよ」
「そうか、本懐を遂げられたのか。おめでとう…」
ナターシャの晴れやかな表情にダニーも安堵して微笑む。ナターシャもありがとうと礼を云ってダニーを再び抱きしめる。しかしナターシャは周りの只ならぬ様子を見てある疑問を浮かべた。
「ところでダニー、キングスカンパニーの私設軍たちはどうなったんだ?ミス・ジェーンと一緒に加勢に向かったら焼け野原のようになっていたから気になったんだが」
「ああ、それなら思わぬ援護が入ってね」
「援護?」
「さっきミス・ジェーンと一緒にホバークラフトへ入っていった少佐が戦闘用のドローンたちを私設軍たちにぶつけてくれたのさ…ある意味同士討ちという形にはなったが、お陰で俺も、Mr.ウルヴァリンも何とか命は助かった」
「…えっ、…そう、なのか?」
「ああ、かなり事情はややこしいので説明したいが長くなるのでね。後でゆっくり話すよ」
「わかったよ、ダニー」
「そろそろ俺たちも行こう。一通り駆逐したとはいえ、またキングスカンパニーの増援が来るとも限らないしな」
「…うん、そうだね」
ナターシャがダニーの顔を眺めて顔を赤らめる。先程まで涙を流していたので目の周りと合わせて真っ赤だ。照れるナターシャの様子を見て、ダニーも照れ臭くなってきた。黙っていたらキスの一つや二つでもしそうな状況である。しばしこの場の余韻が続く、と思ったが、
「おおい、お二人さん!私を蚊帳の外にしないでくれ」
二人の頭上からMr.ウルヴァリンが割り込んだことであっさりと二人は現実に引き戻された。ナターシャはMr.ウルヴァリンを見上げて鋭い目付きで睨み付けている。いい雰囲気を邪魔されたことへの抗議のようだ。
「…いたのかよ、ドラネコ。大きすぎて全然気付かなかったよ」
「おいおい、それはないだろう…私も頑張って戦ったんだよ」
「まあまあ、拗ねるなってMr.ウルヴァリン。あんたのお陰で俺たちはまた再会できたんだから」
ダニーは言い合う二人を宥めようとした。が、不意に意識が遠退き、その場に倒れ込んだ。慌ててナターシャがダニーを支える。
「ダニー!!?」
「…だ、大丈夫、だ。体力の、限界が来た…だけ、だよ」
そういうとダニーは気を失った。ナターシャとMr.ウルヴァリンは急いでダニーをホバークラフトに乗せて新たな拠点へと急いだ。
次回で第四章は完結となります




