その13
ダニーとルーズベルト少佐は互いに武器を向け合ったまま硬直状態に入った。ダニーのパルスキャノンは発射速度は速いものの、弾数は残り僅か。対するルーズベルト少佐のバルカン砲は弾数こそ圧倒的有利であるものの発射までの挙動が遅いため、隙を突かれる恐れがある。
互いに一長一短があるため、次の攻撃に移るまでに慎重に為らざるを得なかった。
その時突然、ルーズベルト少佐の周りを囲んでいたドローンたちが一斉に別の方向へと飛び去っていった。ドローンたちの向かう先にはMr.ウルヴァリンとキングスカンパニーの増援部隊がいる。両者は互いに睨み合い戦闘状態に入りつつあった。
「まずい!!Mr.ウルヴァリン!」
「今の貴様の状態ならドローンどもを仕掛ける必要はない。私だけで十分だ」
「アーノルド!貴様!!」
「仲間の心配をする前に自分の身を案じたらどうだ?ダニー・マードック」
ルーズベルト少佐のバルカン砲がゆっくりと回転を始めた。いつでも発射可能なように準備している。ダニーもドローンより先にルーズベルト少佐を仕留めるべく、冷静に案を巡らす。
互いに睨み合いの末、ルーズベルト少佐の操縦席から発射の挙動を確認した瞬間、ダニーはパルスキャノンを二発撃った。弾はパワードスーツのバルカン砲が弾を撃ち出す前に両方のアームに直撃。アームに装着されたバルカン砲が煙を吹いて地面に落ちる。
「!?バカな!」
「隙あり!アーノルド!!」
ダニーは間髪入れずパルスキャノンをパワードスーツの操縦席へ向けて発射した。
…が、しかし、プスンと小さく煙を出したまま左腕のキャノン砲から弾は発射されなかった。
「!!!?弾切れ…?」
「…ハハハ、残念だな、ダニー」
ダニーのパルスキャノンの弾切れを確認するとルーズベルト少佐がゆっくりとダニーの元へ近づいた。そしてアームでダニーを掴むと腰の辺りを両方のアームで締め付け出した。さながら鯖折りのような格好となっている。
「ぐああああああ……!!」
ダニーが苦悶の表情を浮かべて呻き声を上げる。視界がボヤけ始め、徐々に意識が遠退いていく。
「お前には手を焼いたが、これで終わりだ。せめて最期は英雄として死なせてやる。それが私からの手向けだ」
ルーズベルト少佐はアームの力を更に上げてダニーの胴体を完全にへし折る態勢に入った。
ダニーは薄れ行く意識と戦いながら、不意に残った左腕で自身のバイザーを上げてルーズベルト少佐に素顔を見せた。ダニーの素顔を初めて見た少佐が顔をしかめる。
「貴様……一体何の真似だ…?」
ダニーの両目の義眼は赤く鈍い光を放っている。その内赤い光は徐々に強くなり始め、ルーズベルト少佐も目を細めねばならないほど眩しく輝き出した。両目に光を集約しているようだ。
「今更目眩ましとは、そんな足掻きが通用するか!」
ルーズベルト少佐が目を細めて叫んだ瞬間、腹部に激しい痛みと耐え難い熱さが襲い掛かった。驚いた少佐が目をやると、操縦席のパネルや操縦桿が真っ黒に焦げて溶解している。そのまま自身の腹部を見ると操縦桿と同じように真っ黒に焦げて穴のようなものが開いていることに気づいた。
更にアームで捕らえているダニーを見ると両目から白煙と血液と涙のようなものを流して、ガックリとしている。
「ま、ま、まさか……ダニー…貴様……これが狙いか……?」
「そうさ……アーノルド……隠し玉はここぞと言うときに取っておくものだから、な」
操縦席を破壊されたパワードスーツが力を失い、地面に膝を付く。それと同時に両方のアームもダニーを離した為、ダニーも地面へと倒れ込んだ。




