その5
ドローン兵器の自爆による轟音と豪炎によって野戦病院跡地は包まれ、辺り一面に衝撃波が広がった。ライナスに覆い被さられたダニーは共に爆風で吹き飛ばされ、跡地から数十メートル離れた地面に叩きつけられた。
「んがはぁ!!」
声にならないような呻きが喉の奥から外に飛び出した。パワードスーツを着込んでいるとはいえ、叩きつけられた衝撃による痛みはダイレクトに体に伝わってくる。
「何だったんだ、今のは…」
ダニーは気を失わないように必死にバイザー越しの風景を凝視する。しかし見えたのは黒煙とわずかに立ち上る炎、そして跡形もなく崩落した野戦病院跡地だけだった。今の地点から確認する限り、他の隊員たちの姿は発見できない。あとは鼻につく焦げた臭いが辺りを覆っていた。
「ハッ!? ライナス?!」
ダニーは慌てて自分に覆い被さっているライナスに目を向けた。目の前のライナスは全く反応がなく、ピクリとも動かない。
更にその先に視線を向けると、野戦病院の鉄骨が無惨にもライナスの背中に突き刺さっているのが分かった。
さすがのパワードスーツといえども爆風の衝撃で飛んで来た鉄骨を完全に防ぐことはできなかったようだ。
「ライナス!応答しろ!!ライナス、返事をするんだ!!!」
ダニーは必死にヘルメットの無線越しからライナスに呼び掛けた。しかしライナスからの返答が来ることはなかった。
我慢ならずダニーは自分のヘルメットを取り、ライナスのヘルメットも剥がしてライナスの息を直接確認した。
が、ライナスは完全に事切れていた。
「ラ、ライナス……嘘だろ……」
ダニーは愕然としつつも、ソッとライナスの遺体を地面に横たわらせた。
「…ライナス、あんたとの貸し借りはゼロと思っていたが、最期にとんでもない借りができちまったな…。あんたの結婚式に行ってみたかったぜ…」
ダニーは志半ばで逝った戦友に静かに敬礼した。そしてゆっくりと立ち上がると他に生存者がいないか、跡地へ歩き始めた。
「こちらダニー・マードックだ!誰か、誰か生存者はいないか!頼む、応答してくれ!」
ダニーが何度も何度も呼び掛けても他の隊員からの返事はなかった。
「そんな馬鹿な…!?自分以外全滅したというのか?!」
ダニーは瓦礫の山と化した野戦病院の中でガックリと膝を付いた。突然の出来事に動揺を隠しきれず、項垂れるダニーの頭上からヘリの音が響いた。ヘリは一機だけではなく、三機ほどだろう。
先のドローン兵器の自爆攻撃を確認した司令部が送り込んだ援軍かもしれない。ダニーは何とか立ち上がるとヘリ達に向かって大きく手を振り、無線でも呼び掛けた。
「こちら先鋒隊のダニー・マードック!作戦遂行中の敵の自爆攻撃を受け、部隊は自分を除き、壊滅した模様。至急援護と生存者の発見を頼む!」
ダニーの必死の呼び掛けに対し、しばしの沈黙の後ヘリ側が応答した。