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キングブレイカー  作者: 43番
第一章 ダニーとウロボロスの終末
3/97

その3

「思ってた以上に装甲が薄いな。本当にテロリストの銃弾やドローン兵器の攻撃を防げるのか?」


「心許ないのは確かだな。作戦概要じゃ散々性能の良さをアピールしてたくせに、いざ実物見たらこれだもんな。これじゃ過剰広告で訴訟もんだ。全くクーリングオフ対象だな」


「本当にメリットだけでデメリットなんて一ミリもアピールしてなかったしな。とんだもんを掴まされたもんだ」


「俺たちゃ、連中のいい実験台さ」



  作戦の目標地点に向かう大型輸送ヘリの格納庫の中でキングスカンパニーから無償提供された最新鋭のパワードスーツ「3DS-2020」を身に付けたダニーとライナスはスーツの着心地に対してぼやいた。他にも同じスーツを着こんだ海兵隊員たちが10名ほど口々に同じような感想を小声でこぼしていた。



「今日はクリスマスイブだというのに散々な一日になりそうだな…」


「ま、いいじゃないか。俺たちゃサンタクロースだ」


「はあ?」


「よい子のテロリストの坊やたちに銃弾と砲弾を好きなだけプレゼントしてやるのさ」


「じゃあ、このヘリはさしずめトナカイか」


「そういうことだな」



  ダニーとライナスは肩を竦めると不意に格納庫内にブザーが鳴り響いた。目標地点到達の知らせであり、同時に格納庫の搬入口が重々しく開いた。気圧の変化で上空へ吸いだされそうになる。パワードスーツの重みがあるとはいえ、一歩バランスを崩せば、そのまま真っ逆さまに落下してしまいそうだ。



「ダニー!」


「ん?」


「現地で会おう!」


「ああ、お互い無事に地上へ降りようぜ!」



  ダニーはライナスと言葉を交わすと他の隊員と共に搬入口へ向かって駆け出し、一気にヘリから飛び出した。パワードスーツのおかげで激しい気流の衝撃は防げているが、それでも風に流されそうになり何とか体勢を整える。他の隊員たちもダニーと同じく体勢を立て直すのに苦戦しているのか、ぐるぐる廻り続ける者や隣に降りている兵士にぶつかりそうになる者もいる。


  ダニーはバイザー越しに見えるパワードスーツの計器の降下距離を慎重に眺め、パラシュート射出のタイミングを見計らう。



「1200…1100…1000…よし、今だ!!」



  ダニーは一気にパラシュートを射出して降下速度を緩めた。射出の衝撃によって体に激しい痛みを受けたが、それよりも他の隊員を見失わないように気を張り続ける。



「目標地点に間もなく到達。パラシュートを切り離し、ジェットパックを起動させる」



  降下距離300メートルを切った辺りでダニーはパラシュートを切り離し、パワードスーツの肩と腰に仕込んだジェットパックを起動させた。他の隊員も同じようにジェットパックを起動させた。が、一人の隊員がパラシュートを切り離してもジェットパックが起動せず、そのまま落下していくのにダニーは気づいた。



「まずい!地表に激突する!」



  ダニーは思わず落下していく隊員に飛んで向かい、手を差し伸べようとしたが、あと一歩間に合わなかった。落下した隊員は地面に激突してパワードスーツごと爆発に巻き込まれてしまった。



「……畜生、なんてこった…」


「ダニー、まずいぞ。今の爆発で奴等に気付かれた!」



  ダニーがハッと周りを見渡すと無数のドローン兵器がこちらに迫ってきていた。



「どうやら楽にはいきそうもないな……」



  ダニーはパワードスーツの両腕から自動小銃を射出し、ドローン兵器へ向けて発砲を開始した。他の隊員たちも自動小銃、グレネードランチャー、小型ミサイルを射出し、一斉に攻撃を開始した。ドローン兵器の砲撃を受けつつ、一機また一機と打ち落としていく。ダニーも被弾したもののスーツの表面が少し凹んだだけで中のダニーは傷一つ付いていなかった。



「思ってた以上にこのスーツできるじゃないか!」


「この調子じゃ30分足らずで制圧できそうだな!」


「ああ、派手にいこうぜ!ヒャッハー!」



  隊員の一人が抜け駆けて野戦病院跡地へ突っ込んでいったが、そこへ無数のドローン兵器が立ちはだかった。



「邪魔だ、邪魔だー!」



  隊員が銃口を向けるとドローン兵器たちが隊員を取り囲むように配置に付き、一気に突っ込んでいった。



「やる気か!!畜生が!?」



  隊員は射撃でドローン兵器を打ち落としていくものの死角から体当たりを受けた。隊員が怯んだ隙に他のドローン兵器も次々と体当たりを仕掛けていく。



「クソッタレが!嘗めきりやがって!」



  隊員が引き金を引こうとすると突如ドローン兵器が大爆発を起こした。



「ぎゃああああああ…!!!」



  隊員の悲痛な叫び声と共に通信が途切れた。仲間の死に動揺することなくダニーは爆風の合間をぬって野戦病院跡地に突っ込んだ。


  病院跡地にはテロリストのメンバーと思われる兵士たちが潜伏しており、自動小銃と小型ロケットランチャーをダニーに向けてきた。



「そこだ!!」



  ダニーは躊躇することなく、テロリストに向けて発砲し一人ずつ確実に仕留めていく。他の隊員たちも跡地に到着し、ダニーと共にテロリストに向けて攻撃を開始した。



「ダニー!こっちの援護を頼む!」


「ライナス、余所見するな!」


「何!?」



  ライナスに向けてロケットランチャーが放たれようとしていたのに気づいたダニーは迷わずランチャーごとテロリストをグレネードで吹き飛ばした。



「サンキュー、ダニー」


「一個貸しな」


「覚えとくよ」



  ダニーとライナスは片手でグータッチした。気づくと他の隊員らによってテロリストたちは制圧されており、メンバー全員死亡が確認されていた。



「ひとまず任務完了、だな」

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