兄弟子との再会2
「メイサ…!」
フェリクスがメイサをぐっと引き寄せる。バランスを崩したメイサは、ぽすん、とフェリクスの腕の中に倒れ込んでしまった。抱きかかえられるような形になってしまい、慌てて抜け出そうとするが、フェリクスはメイサをガッチリと捕まえて離さない。
「ひ、人違いです……離して……」
堪らず抗議の声を挙げるが、フェリクスはますます力を入れた。あろうことか、メイサの頭に頬をすりつけ、すがるような声でメイサの名を繰り返しつぶやいている。以前から距離感がかなり近いなぁと思っていたフェリクスの、しかし甘すぎる声と仕草に呆然とし、メイサはなすがままなってしまった。
「おい、ウルスラ、無事かっ……」
我に返ったゲイリーが心配そうにウルスラーーもといメイサに駆け寄ると、フェリクスがそちらを見やった。見ただけなのに、ものすごい迫力だ。メイサは固く閉ざされたフェリクスの腕の中からその眼をちらっと見上げただけで、「ひぇっ」と小さい声が出た。ゲイリーなんてその場で固まってしまっている。美形ってこれだから怖い……。
「誰だ、貴様は」
先程メイサの名を連呼していた甘く掠れた声とはまるで別物の、恐ろしく冷たい声だった。だ、誰……。メイサが見知っている穏やかで優しい兄弟子の姿とあまりに違っている。
固まり続けるゲイリーが気の毒で、メイサはとりあえずフェリクスの胸をぐいぐいと押し、その腕から何とか逃れた。フェリクスはひどく傷ついた顔をしながらも、なおもメイサの右手を固く握ったままだ。
「あのっ、人違いです。私はウルスラと申しまして」「私がメイサを見間違える訳ないだろう?」
ものすごい被せられた……。
メイサが何とか言い訳を紡ごうと顔を上げると、フェリクスはその顔を愛おしそうに見つめ、自由になった左手でメイサの頬を優しく撫でた。途端に、メイサの変身魔法が解け、夜明け髪と琥珀色の瞳が現れた。
「え……ウルスラ……?」
「だから貴様は誰だ。ねぇ、メイサ、こいつは誰? もしかして恋人? 今すぐ消えてもら」
「しっ仕事仲間です!!!」
今度はメイサがフェリクスを遮った。今王太子殿下が言ってはいけない言葉を言おうとした気がする!
「ふーん、仕事仲間。つまり俺の知らないメイサをこいつは知ってるんだ? やっぱり今すぐ消え」
「フェリクス、何事だ」
低く艶のある声が響いた。
そうですよね。フェリクス様がいるということは。近衛騎士団長も来ている訳で。
つまりオリバー様も来てるんですよね。
と思わずあるある三段活用をしてしまった。
む、むなしい。
あはは……とメイサが諦めた顔で声のした方に振り向くと、怪訝な顔をしたオリバーと目があった。その目がみるみるうちに見開いていく。
「っメイサ……」
その時、突然メイサの足元が白く光り輝き始めた。
と同時に、メイサは自分の運命を悟った。
これは大賢者様の転移魔法陣だ。
あまりの眩しさに目を瞑った。何度経験しても慣れない浮遊感がメイサを包み、胃がひっくり返ったようなむかむかした気分をひたすら耐える。
やがて光が弱まったのをまぶた越しに感じ、そろり、と目を開いた。
「やあ、久しぶりですね」
目の前に笑顔の大賢者様が立っていた。




