第111話 俺、初動負け
『ハァァアアナァアアアアアアアアア!!!!』
『ギャアアアアアアアアア!!!!!!!!!』
ヒッヒィィィイン
「ハッハッハッ、こりゃまた元気だなぁ」
止めろよクソジジイ!!!!
オッス、俺タカネノハナ、今マルことハナマルゴーゴーに襲撃を受けている。
場所はお馴染みクレノファーム、オッチャンが来て以降とくに次に向けて動き出す様子もなく俺は放牧地でのびのびと過ごす日々。
はたして今が何月なのか、前走から何ヶ月経っているのか、馬の身ではさっぱりわからない、わかるのは雪が積もるようになってヒャッハー!と遊べるようになったことくらいだ。
それなりに積もらないと遊びがいがないというか、危険だけが増えるんだよな。
今日も今日とて雪をバッフバッフと掻き分け遊び冬でも届けられる青草をモッサモッサと食べる一日を過ごし厩舎に戻ってふかふかにされた寝藁の上に寝転がろう、そう思っていた俺に待っていたのはマルの急襲であった。
遺憾の意!ジイサンは絶対こうなることを予想していたはずだ!なんならマルの帰還と俺の引き上げの時間を調整した疑惑すらある!!!!
馬運車の音が聞こえるなーとは思ってたんだよ、けどここは現役から繁殖諸々多数の馬を世話している場所だ珍しい話じゃない、そう思いスルーしていたのが間違いだった。
結果的にご機嫌で馬房へ戻ろうとする俺へ一目散にやって来たマルへの反応が遅れ俺は首を無限にハムハムされている。
マルの引き綱を手にしていた人間?早々に諦めてたぜ、下手に抗っても危ないからな、特にこの季節は。
多分だがジイサンから事前に言われていたことでもあるのだろう、なぜかって?
ジイサンと和やかに話してるからだよ!!!!
喋るより先に!マルを!止めろ!!!!!!!!!!!!
『お前いつまでするんだよ』
ブフゥン
『……』
ハムハムハムハムハムハムハムハム
『無視かよ!!!!』
そんな馬に育てた覚えはねぇぞ!育ててねぇけど!!!!
『えー……仕方ねぇなー、俺もするから止まれって』
そう声を掛けるとピタリと止まるマル、そしてゆっくりと首への圧が離れていく。
有言実行、俺は口にしたことをできる限り守るタイプだ、ってことでマルの首をハムハム。
これぞ円満コミュニケーション!
それにしてもマルのやつ最初の咆哮以降喋らないんだが、どうした?体調でも悪いか?それならジイサンはこんなことをさせずにさっさと引き上げさせるか。
しばしのハムハムタイムを経て離れる俺。
『久しぶりだなマル、元気にしてたか?俺はなんか元気じゃねぇ瞬間もあったらしいけど元気だぜ!飯も相変わらずうまい!』
『ハナァ久しぶりー』
『おう』
『会いたかったよぉ』
『お、おう?』
あの、マルさん、目にハイライト入れて貰っていい?
つか、大丈夫そ????
ゆっくりと後退する俺、それを追うマル、じりじりとした攻防戦。
『ハナは僕と会えなくても元気だったんだねー?』
『あの……』
『僕は寂しかったよー』
『えっと……』
『ハナは僕と会えて嬉しくないのー?』
『……俺全然悪くないけど!悪くないけど、なんかスマン!!!!』
フヒュゥーン
絶対、微塵も、俺は悪くない!悪くないけどこのマルを前にして謝らないでいられるやつが居たら今すぐ俺の前に出て欲しい、そして壁になれ。
久しぶりにあった幼馴染が病んでる件について、新しいタイトルで物語が始まっちまう。
ジャンル?ホラーだよ!!!!
『嬉しい!もちろん嬉しいからな?マル全然会わねぇけど元気にしてるかなーって、考えてたし!ジイサンとか兄ちゃんとかの口からマルが勝ったぞーって聞くと、お、さすがだな俺も頑張らねぇとなとか思ってたし!!!!』
『ほんと……?』
俺、馬のジト目って始めてみた気がする、そうでもないか?でもなんだろう、これはどこかがキュッとなる気がする。
『本当だって!なあジイサン!!!!』
ブッフブッフ
「おー、どうしたハナ、マルと再会の挨拶終わったか?」
必死でアピールし始める俺を撫でるジイサン。
「マルは頑張ってきたからなぁ、ハナにも教えたろしっかり労わってやれよー」
『ほら!ジイサンもこう言ってる!!!!』
『労われって言ってるねー?』
『そこを拾うのかよ!いやわかった、わかったからとりあえず今日はしっかり休めよ長距離移動で疲れてるだろ、明日からいくらでも遊べるって……多分』
『多分?』
『絶対!!!!』
オッチャン今回ばかりは怨むぜ!




