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宵待月に桜は踊る  作者: 葉隠真桜
第三章
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入学式 4

「── なるほど。それでこのあたりに居たわけか。」

「はい!正直どうすればいいのかわからなかったので、助かりました!」

「礼には及ばねぇよ。困ってる人を助けるのは当然だからな。」


いきなり走り出した彼女の後を追いかけていくと、やがて白髪の少年たちの話の内容が聞こえてくる。


「ストッ、プ!」


その内容を聞き、僕はシオンさんの腕を掴み、引き留める。


「放してください!」

「ちょっ、落ち着いて!彼、別にナンパしてるわけじゃないみたいだしさ。」

「いえ!私は知ってるんです!どうせこの後 ──」


僕たちが向こうに聞こえないよう小声で言い合っていると、白髪の少年が僕たちに気付かずこう口にする。


「それで、話は変わるが……この後、暇か?」

「「!」」

「……え?」


その言葉に僕は驚き、思わずシオンさんを掴む手の力を抜いてしまう。その結果、


「あ。」

「もしよかったら、このあぶべらっ!?」


自由になったシオンさんが思い切り少年を殴り飛ばす。


「「!?」」


少年と話していた二人は突然彼が殴り飛ばされ目を見開くが、文字通り鬼気迫る様子のシオンさんを見、納得した様子を見せる。そしてそれと同時に、殴り飛ばされた少年に冷たい目を向ける。


「えーっと……シオンさん……?」

「……。」


彼を殴り飛ばした後両腕をだらりと下げ黙りこくるシオンさんに僕は恐る恐る声をかけるが、反応がない。


「……これは駄目そうかな……。えーっと、君たちは一般クラスかな?」

「あ、はい!」

「途中で道に迷っちゃって……。」

「それだったら……。」


そんな二人の言葉を聞き、僕は軽く周囲を見回す。


── 近くに見られると困る人はいないし……多分大丈夫かな。


「今から見ることは秘密にしてね?」

「え?それってどういう ──」


少女が何かを言い終わるより早く、僕は入口に転移する。


「えっ!?」

「それじゃあね。」

「ちょっ ──」


そして二人を送り届け、僕は先ほどまでいた場所に戻る。すると、


「……えーっと……何があったの……?」


たった数秒その場を離れていただけなのに、僕の目の前にはぼこぼこにされた少年と怒った様子でそっぽを向くシオンさん、そしてそんな彼女を若干引いた眼で見る皆の姿があった。


「……まさかリアル永パを見ることになるとは……。」

「永パ……?」


月見里さんの口にした聞き馴染みのない言葉に僕が首を傾げると、彼女が説明してくれる。


「あ、永パっていうのは永久パターンの略で……要するに、相手の体力がなくなるまで一方的に殴り続けることだよ。」

「……成程。」


未だに衝撃が抜けきっていない様子の月見里さんの説明に僕は納得し、それと同時に地面に倒れたまま動かない少年に憐みの目を向ける。


── でもなぁ……。確かにこんなになるまで殴られ続けるのはかわいそうだけど、正直やってたことがやってたことだから、こうなっても仕方ないんだよなぁ……。まあ、それはそれとして……この状況、どうしよう……。


「……とりあえず運ぼっか。」


少年とシオンさんを中心に広がる何とも言えない空気に耐えかね、僕はトウカに声をかける。


「だね。……シオンさんはどうするの?」

「こういうのはミリアの仕事でしょ。てことで、よろしくね!」

「……へっ!?ちょっと!?ノア君ー!?」


そしてこの微妙な空気の処理をミリアに丸投げし、僕はその場を後にするのだった。




「── ところでお兄ちゃん、さっき時空間魔法使ってたよね?」

「……あ。」


少年を運んだ後。僕はトウカの言葉に、思わず声を漏らす。


「で、でも、状況的に気付いてない人も多いだろうし、最悪僕の身体能力ってことで誤魔化せるし……。」

「はぁ……。確かにあの状況ならそんなに気にされないとは思うけど、今後は気を付けてよ?」

「うん。」

「それで……この二人、どうするの?」


そう言ってトウカは、地面に寝かされている二人の少年を指差す。


「うーん……入場までには起きててもらう必要があるけど……もう一人はともかく、"勇者"を起こすと絶対またシオンさんと敵対するよね……。」

「私も同意。でも、起こさないわけにもいかないもんね……。」

「「うーん……。」」


僕とトウカは、この悩ましい現状に考え込む。


「僕が操作することもできなくはないけど……何があるか分からない以上、下手に脳のリソースを割くことは避けたいよね。」

「だね。でもこのままの状態で出すのは途中で起きたときとかに面倒だから、それもダメだし……。」

「幻術を使うのも手だけど……使える人がいないし……。」

「……これ、割とやばい状況じゃない?」


トウカの言葉に、僕は頷く。


「……まあ、何とかなるでしょ。」

「だといいんだけどねぇ……。」


今後のことを考え、僕とトウカはため息を漏らすのだった。

作者の葉隠です!初めての作品なので、至らぬところも多々ありますが、温かく見守っていただけると幸いです。もし気に入っていただけましたら、ブックマークと☆による評価を、よろしくお願いします。

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