ピーターパン 4話
手首から先が無くなっていた。
赤黒い液体が手首から、手首だったところから止めどなく、したたり落ちる。
「これが現実だ、斬られれば血も出るし痛い。それに死ぬことだってある。死んだらママにもパパにも二度と会えない」
優しい語り掛けにチャイルド達はビクッとなる。
「しかし、君たちの王さまはそんなことお構いなしだ。彼には親が居ないから」
親と呼べるような、愛する人も。血の繋がりだけが親子じゃない。船長も船の皆が僕の親だと誇りにして言える。
「これも現実だ」
サーベルを振るうとピーターパンの肩の服が斬れた。
そこには乱暴に巻かれた包帯に血がにじんでいる。
こっちは本物だ。
「彼も絶対じゃない。さぁ、家に帰ろう?よく見てごらん。ここに居る人たちを。みんなを迎えに来た両親だよ?」
「パパ!ママ?」
抱き合う姿がそこかしげに、僕は目を細める。
嬉しい。
「ここに来れなかった人たちも待っている。みんなで帰ろう?」
「僕に親はいない!病気で死んじまった」
チャイルドの一人が目に涙を一杯にためて叫んだ。
「ならば、僕が君の親父になろう。だけど、本当の両親のコトを忘れるな絶対にだ。その上でお前は俺の息子になれ」
「誰が海賊なんか!」
「僕は両親のコトを一つも知らない。思い出もない。僕もロストチャイルドだった。僕の親父は先代のフック船長だ。船のみんなも良くしてくれた、辛いことや苦しいこともあった。だけど」
僕は泣いていたのかな?
「寂しいと思ったことはなかったぞ!!」
「来な、今から俺たちがお前の居場所だ」
悲しそうな淋しそうな憎々しげな顔を浮かべピーターパンは飛んでいった。
おかしい、チャイルドの家は見つけたはずなのに。
それに息子がいない。
ウィンガーベルが島に来てから姿を消しているのも気に掛かる。
胸の奧がざわざわと波立っていく。
嵐の前兆のように




