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夢見たっていいじゃん!!!!  作者: YUKARI
第一章 出会い
5/27

5 パーティー 2

 また1人になって振出しに戻る。


 そう言えば、秋香さんが言ったあの子達って、クリスタルのメンバーの事だよね? まだ来てないみたいだし、せっかくだから飲み物でも取りに行こうかな。


 うん。普通のファミレスにあるようなドリンクバー。


「なんだけど、グラスないんですけど……」


 そこら辺の人に聞きたいけど、兄ちゃんが居なくなってまたこの場所に緊張して来る。

 傍から見ればきっと、あたしは挙動不審。


 せっかく、美味しそうな食べ物が色々あるのに、勝手に食べていいのか分かんないしっ!


「かわいこちゃんの探し物はこれですかー?」


 か、かわいこちゃん? どっかで聞いた台詞にドン引きしながら振り向くと、池山の家の前にいた男の子……ジュンくんだったけ?

 グラスを持ってニコニコしながらあたしを見てる。


「あ、カズん家に居たかわいこちゃんじゃん! 幸ちゃんの方? 一緒にドリンク取りに行こーっ」


 手慣れた感じであたしの肩に腕を回すジュンくん。


「ちょっと、や、やめて! しかも、なんで名前……!」

「あれー? 幸ちゃんは照れてんのかなぁ? かーわーいいっ!」


 回された腕を振りほどこうとしても離れないジュンくん。


 な、殴りたい……! 殴れないと言うか殴っちゃいけない。殴っちゃいけない……ここはパーティ会場で、この人たちのパーティ。

 

 無心になって心を落ちかせようと黙ってると、また殴りたくなる衝動にさせる発言をジュンくんが発する。


「それとも、ドリンク取りに行くより俺といいこと……」

「っ!?」

 

 ふざけた事ばっかり言ってるジュンくんに、堪忍袋の緒が切れて殴りかかりそうになった時、腕を引かれて誰かに抱き留められた。


「おいこら、ジュン。何してんだよ、幸は俺らの事務所の子じゃないし、ファンでもないし、中坊だよ。バカ!」

「の、ノブくん?! わっ、あ! きゃあっ」


 ノブくんに抱き留められた事にビックリして、よろけて転びそうになった所に大輔くんが腕を掴んでくれて転ばないで済む。


「大輔くん? あ、ありがとう」

「もう! ジュンくんはいい加減な事しかしないんだから。ファンでもやり過ぎだよ! 幸ちゃん大丈夫?」

「ダイの事を大輔って? まじで事務所の子でもファンじゃない……え、中坊?! じゃあ、なんで昨日あそこに居たの?」

「昨日、カズのとこの制服だったろ! もう、ジュン煩いよ。幸とダイ、ジュンほっといてあっち行くぞ」


 ノブくんにあたしと大輔くんは、手を引かれてドリンクの前に連れて来られた。


「び、ビックリした……」

「ジュンくん、幸ちゃん事務所の子だと思ってたんだね」

「そりゃ、見た目もスタイルもいいから、そんな恰好だったら言われなきゃわかんないだろ」


 見た目もスタイルもいい? 男っぽいの間違いじゃなくて?

 男の子にそんな言われた事ないあたしは、ノブくんの一言に急に恥ずかしくなって身体が固まる。


「あ、ちょっと。ノブ、幸ちゃん顔真っ赤だよ」

「は? なんで? どうして? 酒は……飲んでないよな?」

「飲んでないよ! な、なんでもないっ」


 いつもは女の子達にカッコイイとかしか言われないから、初めての事でビックリしたけどやっぱり嬉しい。


「なぁ、幸は今日は1人で来たのか?」

「え? あ、兄の悠真と来たんだけど……あ、あそこに秋香さんと仁志くんと!」

「仁志の髪いじってたから、スタッフだと思ったけどあの人って幸ちゃんのお兄さんだったの?」


 いや、そんな事を言っても、あたしと兄ちゃんの顔見れば兄妹だって、一目瞭然だと思うけど。

 同じ顔に見られてないなら、わざわざ墓穴掘るようなこと言わなくてもいいと思って、兄ちゃんの方を見てるとそこにはダンディーなおじ様もいる。


「ねぇ、あの兄ちゃんが話してるおじ様って誰?」

「おじ様って、あれうちの事務所の社長だよ。秋香さんも社長の前じゃ変な事しないはずだから大丈夫だと思うよ」


 大輔くんが説明してくれたけど、兄ちゃんに秋香さんが何かするとかは、あんまり気にはしてなかったけど……大丈夫ならいっか。


 それにしても、大輔くん昨日とは雰囲気が全然違う。

 服装のせいもあるかもだけど、最初の泣き虫の印象から一転して昨日より芸能人のオーラっぽいのがちゃんと出てる。


「そういえば大輔くん、昨日と全くイメージ違うねぇ」

「ダイのイメージが違う? 昨日、お前……もしかして泣き喚いたの?」

「だ、だって昨日は、しょうがないじゃんか!」


 ノブくんが大輔くんをからかってふざけてる。

 この感じを見てると、ノブくんはお兄さんなんだなぁってよくわかる。

  

 大輔くんは、あたしより1つ上で中学3年生、ノブくんが高校1年生でジュンくんが兄ちゃんと同じ年で高校3年生だっけ? 


 ジュンくんに対してもノブくんはお兄さんみたいな態度だった気もしないでもないけど、ノブくんはしっかり者なのかな?

 なんか、ノブくんは他の男の子とは何かが違う気がする。


「なんだよ、俺の顔ジッと見て」


 え? あー、思わずノブくんの顔ガン見してたのか。


「ノブくんって高校1年生だよね?」

「学年は1年だけど。なんで?」

「あたしとも2コしか違わないのに、随分と落ち着いてるなと思って」

「2コ? 幸は中2だっけ? 俺、今度17になるから。3コじゃね?」

「あ、ノブ?! それって、言っていいの?!」

「まぁ、いいんじゃね? こいつが黙ってれば」

「え?! あ、うん」


 ノブくん、サバ読んでるの? 別に誰かに言うつもりはないけど、なんか芸能人ぽくて、なんかすごい!


「ぶっ! それにしても、またおじさんってノブが言われたー! 年齢やっぱ無理あるんじゃないの? あははははっ!」

「は? おじさんとまでは、言われてないだろ」


 確かにおじさんとは言ってないけど、ノブくんと大輔くんがふざけながら小突き合い始める。

 これを見ると、2コも3コもあんまり変わらないと思うけど年層なのかな?

 

「あ、ちょっと、ダイ。またジュンが何かやってるから、連れて社長の方に行って来るわ」

「えぇ、また? ジュンくんも懲りないなぁ……」

「俺行くからダイがちゃんと、幸になんか食わせてやれよ?」

「うん。わかった」


 ジュンくんの方に走ってくノブくんを大輔くんと見送る。


「あれあれ、あんな風にジュンくんの面倒も、俺の面倒もしっかり見るから、いっつも年上に見られるんだよねぇ。今なんか幸ちゃんの事まで気にしながらあっち行ったし」

「なんか、ノブくんお母さんみたいだねぇ……」

「でしょ? 俺もそう思ってたんだよー」


 大輔くんと目が合って思わず2人で吹き出す。


「ねぇ、大輔くん? ジュンくんはただのチャラ男なのに……あれで大丈夫なの?」

「ジュンくんは少し変わってると言うか、空気読むのが下手って言うか面白い人だよ! 幸ちゃんは印象最悪かもしんないけど。普段はもう少しだけきちんとしてるよ」

「ふーん?」


 大輔くんの言ってる事が嘘じゃないとは思いたいけど、どうなんだか疑うしか出来なくてジュンくんのいる方に視線を向ける。


「すんごい、目でジュンくんの方を見てるねぇ。分からなくもないけど」

「あ、いやぁ……」


 苦笑いしてる大輔くん。


「あれをすると、女の子達が固まって上手く逃げれる! って言うジュンくんの持論らしいよ。幸ちゃんがファンだったら面倒って思って、さっきのしたんだと思ったんだけど。幸ちゃんから話しかけた?」

「あたしから、話しかけるわけないと思います……」


 あたしの発言に、だよねー! 笑いながら、ドリンクに飲み物をついでくれる大輔くん。


 でも、クリスタルのファンの女の子達って、普段この人たちにどんな事してんだろ。

 追い掛けてキャーキャー騒ぐのかなぁ? あたしは、ムカつく変な男子追いかけたりするけど、あたしがファンとか好きとかだったらどうするんだろ? 恥ずかしくて、近くに寄れない……とかになると思うんだけど。

 でも近くに居たいよねぇ? 遠くから見つめたり? んー。なんか難しいなぁ。


「ねぇねぇ、幸ちゃん?」

「あ、はい。何?」


 そんなことを考えてたら、顔を上げると目の前に大輔くんの顔がある。 


「……幸ちゃん?」

「わっ!」


 大輔くんがあたしの顔を覗き込んできたから、ビックリして思わず突き飛ばす。

 

「おっと!」


 よろける大輔くん。

 顔が、顔が……近かったんだもん! 男の子の顔が目の前にあることなんか、体験したことないから驚くでしょ!


 付き飛ばした罰の悪さに大輔くんの顔を見れなくなって、視線を泳がしてると社長さんと話してるノブくんとも目が合う。

 ビックリした顔ででこっちを見てるノブくんに対して、あたしもビックリして目を逸らす。


 好きだと遠くから見つめるとか考えてたら……なんか、急に男の子に対する態度をどうしたいいのかわからなくなって、もう、何?! どうした、あたし!


「わっ! な、何?! 痛っ。なんで、俺がノブに殴られなきゃいけないの!」

「お前ってば、何ジュンみたいな事してんだよ!」


 あたしが目を逸らした時に、こっちに向かって来てたみたいで、ポカンと大輔くんをノブくんが叩くと、後ろに居たジュンくんは笑って見てる。


「なんだよー、ダイ。女の子の口説き方でも俺が手解きしてやろーか? あはは」

「ちょっと、俺がジュンくんみたいな事するわけないでしょ! 一緒にしないでよ!」


 た、確かにジュンくんみたいな事は、大輔くんにはされてないから、なんか悪い気もするけど……大輔くんの顔が目の前にあって、ノブくんと目が合って。


 もう、どうすりゃいいかわかんないよーー!


「お前ら、うちの妹に何してんの?」

「に、兄ちゃん!」


 た、助かった。

 男の子だと思ってない兄ちゃんの登場に、慌てて後ろに隠れる。


「俺は今は一番、何もしてないよ!」

「俺はダイがジュンみたいな事してたから、止めに来ただけですけど」

「俺だって、何もしてませんから!」


 3人が口々に兄ちゃんに反論する。


 確かにみんな今は、あたしに何もされてない。

 あたしが勝手に混乱しただけで、ジュンくんは知らないけど大輔くんもノブくんも心配してくれてただけ。


「じゃあ、まぁいいや。幸もこんなとこで、暴れたりすんじゃねぇよ?」

「今日はまだ暴れるのは未遂です……」

「ふーん」


 3人を見ながら、何かに兄ちゃんが納得してあたしに視線を戻す。


「幸はなんか食ったのか?」

「あ、ちょっとだけ食べたけど……」

「ちょっとだけ? おい、ちょっとだけだってよ? お前ら」


 お前らって、この3人に言ってるのか兄ちゃんは。

 あたしもそうだけど、ジュンくんノブくん大輔くんの頭の上には「?」が浮かんでる。


「俺もまだ、あんま食ってないんだけどなぁー」

「だったら、取りに行こうよ兄ちゃん」


 兄ちゃんの腕を引っ張ってみたものの、兄ちゃんは3人の顔を半笑いで見てて動かない。

 3人は兄ちゃんの顔をジッと見て、何かに気付いたのかハッとした表情に変わる。


「おい、2人とも取りに行くぞ」

「う、うん」


 ジュンくんの号令で、3人は料理を取りに行ったのかこの場から離れて行った。


「兄ちゃん、なんで何にも喋ってないのにみんな動いたの?」

「さぁ?」


 さぁって、あたしの方が分からないよ。

 兄ちゃんが一体、何をしたのか凄い気になる……!


 それから、3人が料理を持って来てくれて談笑してると、兄ちゃんが腕時計に目をやる。


「幸、遅くなる前にそろそろ帰るか」

「そだね。電車も酔っ払いで臭くなるし」

「それは大丈夫、お前が居るからって秋香さんが、タクシー代くれた」


 男の子には酷い扱いするっぽいけど、やっぱり秋香さん優しいよね?

 お腹いっぱいで、あんまり動きたくなかったからラッキー!


「え、新倉もぉ帰んのー?」


 兄ちゃんの事を新倉って呼んでるのは、ジュンくん。

 兄ちゃんはジュンくんの事を知らなかったみたいだけど、何故かジュンくんは兄ちゃんの事を知ってたらしい。


 逆のような気もするけど、有名人に知られてる兄ちゃんって、実は凄いのかもしれない。


「もう、帰るよ。眠いし俺」


 って、兄ちゃんどんだけマイペース!?


「じゃあ、帰り気を付けて帰れよ」


 ポンとあたしに頭に手を乗っけて来るノブくん。

 それにまたドキッとしたけど、昨日も同じ事をされたからもしかしたらノブくんの癖なのかもしんない。


 こうやって、ノブくんはファンを虜にしているのか……なんか、モヤモヤが残るのは気のせいだよね?


「今日はわざわざ、俺たちのパーティに来てくれてありがとうございました」


 兄ちゃんにペコリと頭下げる大輔くん。


「幸ちゃんは、今度カズくん達とみんなで遊ぼうよー」

「うん!」

「あ、じゃあ、それ俺も行く」


 大輔くんの言葉に返事をすると、ノブくんも話に乗ってくる。


「えーっ? もしかして俺だけのけ者? じゃあ、幸ちゃんは俺と2人っきりで……いてっ」

「お前は何をバカな事を言ってんの?」


 兄ちゃんに怒られて、ノブくんに無言で殴られるジュンくん。

 アイドルだから女の子と2人で遊ぶのをダメと言ったのか、あたしを守る発言をしてくれたのか兄ちゃんの発言の意味はわからないけど……その光景を見てると、ほのぼのした気分になる。


 兄ちゃん、この3人と仲良くなれんじゃないかなぁ? 思い切って兄ちゃんが、仁志くんの代わりに芸能界……は、ないか。

 そんな事になったら仁志くんが逃げ回る以上に、兄ちゃんもきっと暴れるだろうな。

 もったいない気もするけど。

 

「今日は招待してくれて、ありがとう! 楽しかったです。じゃあ、おやすみなさい!」


 ぺこりと3人に頭を下げる。

 3人それぞれと挨拶を交わして会場を後にした──。


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