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夢見たっていいじゃん!!!!  作者: YUKARI
第一章 出会い
3/27

3 実はアイドルでした。2

 そういえば、同年代で珍しくあたしより背の高い男の子に会った気がする。

 あたしがジッと見てる事に気付いてないノブくんは、部屋の扉をジッと見てる。


 物音がしてから、ノブくんがあたしの口にから手をどけると、ノブくんを見てドキドキしてた自分から我に返った。

 

 あ、あたし、ドキドキしてたっ!? なんか顔も熱い気がする。

 芸能人って聞いたから? って……あたし、そんなミーハーじゃないと思ってたんだけど。


「ノブちゃん、まだなのっ?!」


 バンッ! 大きな音を立てて部屋の扉が勢いよく開いて、ドカドカと秋香さんが入って来て、また恥ずかしくなって下を向く。


「あ、手配終わったので秋香さんの分は、バーコード携帯の方に送っときます。もうひとつは今コピー中です!」


 あたしが顔が真っ赤になってるのは、イライラしながら携帯を見てる秋香さんの目には入ってなさそうだし、ハラハラしながら秋香さんを見てるノブくんにもあたしのことは目に入ってないはず。


 怖い顔をしてる秋香さんを見ればメイクもして、さっきとはまた違った印象。

 キャリアウーマンと言うか、メイクすると少しきつそうには見えるけど、あたしと年齢近い子のお母さんには見えない綺麗な人を、もっさい癖に仁志くんは、ばばぁって呼んでたのか。


 と言うか、皆がビビってる人を、ばばぁって呼べるのも凄い話は気もする。


「あぁ、来たわ。じゃあ、私はバカ息子迎えに行って締め上げてくるわ。あ、痣作っちゃいけないから、やっぱボディじゃなきゃだめかしら」


 ブツブツなにか言ってる口調は穏やかだけど、顔が般若様みたいな……いや、見なかったことにしときます。


 プリントアウトをした紙をノブくんが秋香さんに渡すと、視線を合わすつもりはなかったんだけど、勢いよくあたしのほうに方向転換をした秋香さんに視線を取られる。


 嫌な予感がして、あたしは硬直……見つめると人を石化させてしまうって人ってなんかで聞いたことがあるけど、その眼力のせいで石化したそんな気分でゴクリと生唾を飲み込みあたしの緊張が一気に高まる。


「幸ちゃん、今日は慌ただしくてごめんなさいねぇ。今度はゆっくりお食事にでもつきあってねえええぇぇぇぇぇぇ」


 緊張してたら予想外に気の抜ける発言をされて、返答の言葉がすんなり出て来るわけでもなく、口だけがポカン開く。

 こんな感にニコニコして話しかけられて、手を握られるとやっぱり綺麗な人としか思えないのが不思議。


「あ、ノブちゃん? あなたも明日来ない……なんて事したら、どうなるか分かってるわよね?」


 ひゃっ! ま、また表情変わった。

 あたしの手を握ったまま、ノブくんを見る目はまさに妖怪。


 力入ってます! 痛いです! とは、また表情が変わった秋香さんには、怖くて言えない。


「わ、わかってますよ。ははは……それより、飛行機の時間がギリギリなので急いだ方が」

「そうね、行ってくるわ。クソガキ、待ってなさいよっ!!!!!!!!」


 叫びながら、ドスドスと音を立てながら家を出て行った秋香さん。


 それにしても、仁志くんは見つかったらどうなるんだろう? 怖くて想像できないけど、あたしだったら?

 秋香さんに怖いと思いつつも、血相を変えて誰かを追いかけてる感じを、何処かで見た事があるような気がして親近感も少し湧く。

 ……何処かって何処だろ? って、都合の悪そうなことは忘れておくことにして、秋香さんのことはあたし嫌いじゃないし、むしろ好感が持てる!


「……はぁ、やっと静かになった」


 玄関のドアが閉まる音を確認してから、その場にバタっと倒れておでこをピタッと床につけて、大きなため息を吐くノブくん。

 そんな倒れ込んで、この部屋フローリングだけど痛くないのかな? 心の中で軽く突っ込みを入れてると、さっきとは違う空気にするようにノブくんの方から笑い声が聞こえた。


「……あはははははっ」


 緊張が一気に解けたのかノブくんの方を見ると、ムクっと起き上がってお腹を抱えてこらえるように笑ってる。

 

「ど、どうしたの?」

「うん。とりあえず下に降りるか」


 あたしの質問に答えるつもりはないみたいで、ポンッとあたしの頭に手を置いて、クスクス笑いながら先にノブくんは下に降りて行った。


 ──頭をポン


 頭を撫でられるようなことなんか、ここ最近はされた記憶がなかったから、ノブくんが先に部屋を出て行くのを見送った後ドキっとした自分に気づく。


 小さいころにされた、安心感とはまた違う感じでなんとも言えない感じなんだけど……もしかして、あたしニヤけてる?!

 落ち着け落ち着け、わからないけど顔も熱い気がする。

 そこら辺の男の子は女の子に、普通にこんな事するの? それとも芸能人は、普通にする事なのか? 慌てて一呼吸入れて、赤いであろう顔でみんな所に行って変に思われるのも嫌だから、パチンと頬っぺたを叩いて気合いを入れる。


「ふぅーっ!! よし!」


 気合を入れたと同時に下にいる里香に呼びかけられた。


「幸ぃ? 何やってんの? 早く下戻ってきなよぉ」

「あ、うん。今行く!」


 変な顔してたであろう顔を正して、里香の声に返事をそて階段を降りると何やら楽しそう笑い声する。


 きっと秋香さんが居なくなって、皆の緊張が解けたんだろな。なんて思ってリビングのドアを開けると、ヤバイッ! と、池山は慌てた顔をしてから、引きつった顔であたしのことを見る。


「やぁやぁ、新倉さん。さっきはその……ね? あははは」


 あたしに池山……何かしたのか? されたのか? 考えても特に思い当たることがなくて、里香をチラっと見ると何かを思い出したみたいで笑い出した。


「幸と池山は、いつから付き合ってるの?」

「あっ」


 池山とあたしが付き合ってるとか、秋香さんに意味不明な事を言ったんだった。

 いや、こいつと恋愛とか本当にありえないから! まじで、学校とかで変な噂が流れるのとかまじ勘弁してほしい。


「いーけーやーまー!!」

「いやっ! ななな殴らないでっっ。新倉様!!」


 怒りながら、逃げ腰の池山に詰め寄って怒りをぶちまけようとすると「ふーん」という声にあたしの行動を止められた。


「なんだ、お前ら付き合ってたんだ?」


 池山の首根っこをつかもうとしたとき、ノブくんが軽い感じに間に入って来た。

 よく分からないけど、変な姿は見せてはいけない気がして「冷静にならないとダメ」ということが頭をよぎる。


 百面相をしながら気を取り直して、池山の首根っこを掴もうとした手を肩に移してから、ニコって効果音が聞こえて来るような笑顔も一緒に。

 

「コホン、それで……?」


 わざとらしく咳払いをして、冷静に優しく聞くと池山が凄く変な視線をあたしに向けながら、話を始めたのも見ないふりをしてあげて。


 先週から仁志くんは、家出をしてて池山の家から自分の学校に通ってたんだけど、秋香さんの姉である池山の専業主婦であるお母さんが、仁志くんを匿ってて秋香さんは池山家に近づけなかったらしい。


 ……近づけないって、池山のお母さんも秋香さんみたいに怖いのかな? 小学校の時に授業参加とかで、見た事あるけど秋香さんぽい所は無かった気がする。

 実はもっとすごいのかとも思ったけど、秋香さんみたいにキャラの濃いお母さんだったら学校で噂になって聞きそうだけどそんな噂は聞いたことはない。


「オカンは秋香さんと、全然タイプ違うんだよなぁ。何故か、秋香さんが俺のオカンに勝てないから、俺には八つ当たりも入ってるはず……」


 八つ当たりの話はどうでもいいけど、どういうお母さんなのか気になるところだけど、詳しくはそこでは説明はしてくれないみたいだから一応そういうことかと納得をしとく。


 池山のお母さんが今日は出掛けるって嗅ぎ付けて、秋香さんに明日のイベントのリハーサル中に仁志くんと幼馴染の大輔くんとしっかり者のノブくんが拉致られて無理やりここに連れてこられた、と。

 

 庭でボーっとしてるノブくんが、逃げ出した仁志くんを止めるのに協力してくれない。秋香さんを一人で止めれる訳がないことに焦った大輔くんは、池山とあたし達が偶然にも同級生と分かって、女の子には優しい秋香さん対策に呼び止めて家に上がってもらった。

 その話を秋香さんに言えるはずがなく、池山が一芝居して里香には最近付き合い始めた彼氏が居るから、あたしと付きあってる事にした。


 「ダイくんは、新倉がちゃんと女に見えたんだ……」ブツブツ池山が言ってるのは、今は聞こえないふりする。


 二階にノブくんとあたしを行かせたのは、あたしが怒って「池山と付き合ってない!」なんてことを言わせないようにする。

 秋香さんに勘ぐられる前に、あたしと池山が付き合ってる事にして家に来ても不自然ではないって事にしたつもり。だったらしい。


 それにしても……ノブくん、秋香さんが怖いの知ってて庭でボーっとしてたって。

 みんな怯えてるっていうのに庭で平然としてたと思うと、肝が据わってるというかなんとやら。

 

 庭に居たから、あたしと池山が知り合いだったの分からなくてあたしにムカつく発言したのも頷ける。

 だとしたら、有名人を知らなかったあたしが「キモイ」発言したことを謝った方がいいのかな? と思ってると、ノブくんが一言。


「で、実際は? どうなの?」

「「ありえない!」」


 面白そうに聞くノブくんに謝ろうと思ってたことが、綺麗に抜けてあたしと池山が同時に声を荒立てる。


 付き合ってると思ってるのは、これで秋香さんだけ。

 これなら別に学校中に、広まるわけでもないからほっといてもいいかのな? でも、池山と付き合ってるとか思われてるのもなんかムカつく。


「それは置いといて、ダイ。明日の俺達の命を、心配した方がいいかもなぁ」

「え? どう言う事?」


 大輔くんの顔色が変わる。


「「ばばぁが何を言っても、俺の向かうところは九州って言え。北海道なんて絶対言うなよ」ってメールに書いてあったから、正直に北海道って言ったんだけどさぁ。まさか秋香さん九州に行くとは思わなかったわ」

「ま、そこら辺は俺には関係ないけど」

「カズくん他人事だと思って! って事は、仁志は北海道にまじでいるの?! の、ノブはどっちの味方なの! なんで、止めないでチケットまで用意しちゃったの?!」

「別にどっちの味方でもないけど……面白ければいいんじゃねー? 多分、俺らは大丈夫だよ」

 

 ノブくん、軽い。

 秋香さんをビビりながらも、この状況を楽しんでるノブくんが凄い人に見えて来た。


 でも部外者ながら気になることも出てきて、フと疑問を口にする。


「でも、大輔くんもノブくんも、有名なグループのイベントなら、問題あったら大変なんじゃないの?」

「ん? なんだ、あんた俺らの事やっぱ知ってたんじゃん」

「か、顔と名前は、さっき知ったの!」


 慌てて弁解すると、興味なさそうにノブくんは話を続ける。


「ふーん。まぁいいけど。でも、明日のイベント仁志が居なくても問題ないんだよ。社長も仁志の事を、出す気はないみたいだったし」

「出す気ない?! なんで、俺も知らない事をノブが知ってんの?」

「俺、秋香さんより社長の方に世話になってるから知ってんの」


 まぁ、あたしが心配する事でもないか。


「って事で、俺らはリハーサルに戻るよ。あ、イベントのチケットってわけにはいかないけど、こっちだったら、来れるはずだから……幸だっけ? あんたらが来れば? 一応、迷惑掛けたお詫び。カズはどうせ来ないでしょ?」

「行かない。秋香さん煩いし、オカンも行かないって言ってたから」


 ノブくんがテーブルに封筒を置く。

 2人を見送りにあたしたちは玄関のドアを開くと同時に、誰かに声を掛けられた。


「あれー? 女の子がいんじゃーん! やべっ、ちょっとかわいくね? 一緒に乗ってくー?」


 よく見るとタクシーの中から、男の子がこっちに向かって話し掛けてりる。


「俺、一人で駅前に居たのに、ダイとノブは女の子と遊んでたのかよー」


 短髪で金髪でちょっと、少しつり目で猫みたいな顔の男の子で、この人もモテそうな感じの顔立ち。

 だけど、凄くチャライそうだから、あたしこの手のタイプは嫌い。


 でもどこかで、この人も見た気がする。


「タクシーでナンパとか、ダサい事してんじゃねーよ! ジュン」

「イテッ! なんで殴るんだよ。冗談だろ、じょーだん!」


 ノブくんがタクシーに乗り込みながら、その男の子を軽く叩く。

 

 ん? ジュンって……さっきノブくんが見せてくれたのに載ってた人か。

 グループのメンバー揃って、芸能人が来る池山ん家って実は凄いのかもしんない。


「もう! 2人とも、喧嘩しなくていいから! 早くリハ行かないと」

「ん。じゃあ、幸たちは明日、来るんだろ? また明日なぁ」

「え、どっちが幸ちゃん? じゃーねーん。かわいこちゃん、2人組ぃ!」

「ジュン、煩い! 運転手さんお願いします」


 ……な、なんだこの感じは。

 嵐のように去って行った三人組を見送ると、池山が笑い出した。


「ぷぷぷ。ジュンくんが新倉をナンパしてった。何これ! あはははっ! って、やべっ! ……ぐはっ」


 無言で池山にエルボをくらわす。


「軽口叩いて、ずみなぜんでした……だからと言いますか、これ2人が持って帰って下さい」


 うずくまりながら池山に渡された封筒を中を見ると、都内のオシャレなレストランの地図と2枚の招待状。


「イベントの打ち上げの招待状だよ。俺ん家にそれ持って来る口実で、ここに来たみたいだし。俺は行かないしお前らが行けば?」

「私、行きたいけど明日は、家の用事があって行けないの。幸がお兄さんと行って来れば?」


 打ち上げかぁ……別に嫌じゃないし、オシャレなレストランも気になる。

 ここまで巻き込まれたら、仁志くんがどうなったとかちょっと気になるから、

 兄ちゃん誘って行ってみようかな? 



 ******



 コンビニのバイトから帰って来た兄ちゃんに、打ち上げパーティーに付いて来て。

 って、頼んだら2つ返事で「別に暇だしいいよ」って言ってくれた。


 パーティーだからかそれほど硬いドレスコードではないものの、ドレスコードがあるみたいでそんな服を持ってるわけもなく、兄ちゃんと貸衣装屋に来てみた。


「弟さんも、こちらへ」


 なんて、お店の人に勘違いされるというトラブルにも見舞われながらも、水色のワンピースと肩を隠すボレロを兄ちゃんのチョイスで決定。


「うん。いいじゃん」


 適当なのか本気なのかわからないけど、兄ちゃんがあたしを褒めてくれる。

 口数はそんなに多くはないし多少……かなり? 口が悪いから凄い会話も弾むわけでもないけど、兄ちゃんと出掛けるには気が楽だから一緒に出掛けることも時々ある。


 それにしても兄ちゃんよ。身内のあたしが見てもスーツが似合い過ぎて、カッコ良く見えるのが少し怖い。

 見た目だけはイケメンであろう兄ちゃんとあたしの何処を見たら、どこを見間違えてあたしに女の人は声を掛けて来るんだろう。


 その事を里香に話すと「妹ってわかってて近づくために、話かけてるんじゃない?」って言われたけど、確実に「悠真くん!」って、声掛けられてるからなぁ。

 

 とりあえず、着て行く洋服も決まったし明日は楽しめるといいな。


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