第五十八話 階段
部屋を出ると長くて暗い廊下がミレイたちの前に伸びる。窓がありそうだけれどカーテンがかかっていて、光が入ってこないので夜だという印象が残る。廊下を照らすのはミレイが右手に握っている灯火だけだ。
「鬱陶しいですね」
「そうだね」
ミナがそう言うとミレイが廊下をうかがいながらそう賛成した。
「……ま、それをさておき、あたしが先に行くからあたしを追って」
ミレイがそう宣言すると歩き出して、彼女のすぐ後ろにミナが歩いて最後にはミツキだ。
「ちゃんと耳をすましてね」
「……はい」
囁き声をするミレイにミナがそう答えて深い息をした。
カビくさい廊下を歩けば歩くほど先より一層暗くなり、不快な空気が漂っていた。
「静かで騒ぎもないって誰もいないみたいね」
「そうわね……」
「あやしいと思います」
「確かにね」
そのやりとりをしながら廊下が二股の階段になったところにたどり着く。左の階段は上に導き、その反面に右の階段が下へ誘導する。
「上りますか? それとも下がりますか?」
ミナがその質問を口にするとミレイはすぐに口を開く。
「そうだね……こうしよう。ミツキちゃんとミナちゃんって上に行って。あたしは下に行く。十分の後で何かを見つけたらミツキたちのところに瞬間移動して報告するね」
ミレイがそう述べると右の階段へ足を運ぶ。振り返るともう一つの灯火を透明な袋から出してミナに渡す。
「分かりました」
ミナがそう言って、灯火を受けるとこっくりと頷く。
「気をつけてよ」
と、ミツキがミレイにそう呟くと彼女は階段へ歩きつつ答える。
「あんたたちもね」
ミレイの背中を見れなくなるまでミナとミツキは立ち止ったままで右の階段のほうへ眺めた。
「行こう、ミナさん」
ミツキの声を聞くと首を縦に振った後で、ミナが左の階段へ踏み出した。
階段を上った途端蜘蛛の巣がミナとミツキの髪に絡まった。ミツキが自分の髪からその蜘蛛の巣を取り除いた後で、ミナの髪のも取り除こうとして触るとミツキは口角を上げる。
「ミナさんの髪はさらさらで気持ちよくてわね」
「ありがとうございます」
ミナがお礼を言うと灯火の薄い光でミツキはミナの髪が灰色に染まったに見えた。
「怖くないの? ミナさん」
「今は、ちょっとだけです」
ミナが怖いときに、彼女の髪は青く染まるのはミツキはぴったりと分かった。そのゆえ、今はなんで灰色に見えるのかミツキには謎であった。
ミツキは肩をすくめるとミナの背中を見つめて笑顔を浮かべた。




