第五十二話 喧嘩
佐々木が彼女の悩みごとを美月と俺に語ったの次の日。
ファミレスに俺たちの注文を待っている。
俺たちと言えば―谷和原に佐々木、喜多村と美鈴と美月、そして俺。
最近ファミレスだのカラオケだの映画館などに遊びに行くのが増えた。それは四ヶ月間以降高校を卒業して大学生になるのでこういうの一緒に遊びに行くことが難しくなるはずだ。だから、暇な時間があったら出来る限り活かす。反面に、今はもっとも勉強しなくてならない時期なのだから遊びに行くのは矛盾かもしれないとも言える。
どうにせよ、みんなで放課後を過ごすのはいい感じである。
俺たちの注文を持ってくるウェイトレスがテーブルに置かれるとやさしく会釈をしてごゆうくりととなりのテーブルに行った。佐々木と谷和原にアップルパイ、美月にいちごパフェ、美月にチョコレートケーキ、喜多村と俺にクッキーアンドクリーム。
「美味しそうね」
「だよね」「そうなんですね」「ばえるばえる」「そうですね」
美月のコメントに美鈴から佐々木まで各々の皿を見ながら賛成する。
美月以外の女子と視線が合うと無意識に笑う。俺たちはスマートフォンを取り出し、美月に目がける。そして写真を撮る。
彼女はチョコレートケーキを食べるときには写真を撮るのは当たり前なことになった。だって、チョコレートケーキを見る美月は非常に可愛いのである。だから、このときが来るたびに写真を撮るしかないと言える。美月だってそれに慣れているようだ。
込まれるほどでもないけれどファミレスは賑やかなのでいい空気が漂っている。夕暮れの日差しが窓のグラスから差し込むことはどこかで落ち着かせる。
「あれは超おもしかったじゃん」
みんなが食べきると過去の話をし始めた。
今回は二ヶ月めあにくらい、佐々木と谷和原は放課後には先生の机の上に踊っていた。でも、忽然とふたりはけつまずいてお尻で床に到着した。喜多村と美鈴と美月と俺は大爆笑をするとようやく佐々木と谷和原も笑った。すべてはビデオで録画されてのでたまに見直してあの日みたいに笑う。
今だtってあの日みたいに彼女たちが笑っている。特に谷和原が大爆笑をしてこの瞬間をすごく楽しんでいるようだ。
俺はその情景を見ると気づかず笑顔を浮かべる。こういうのはいつまでも続いたらいいんだな。
「先輩たちが来年大学生になるってちょっと悲しいなんです。ダブるしてもいいんですよ」
「ダブるというのは無理です、綾乃ちゃん」
「さすが佐々木先輩なんですね」
冗談まじりの喜多村のコメントに佐々木は突っ込むと全員がくすっと笑う。
いや、全員と言えば嘘だ。ひとりは笑わなかった。谷和原はただ懐かしそうな顔で自分の絡めさせた指を眺めていた。
その仕草の理由は分かると思うけれどこの場合では口にすることはいかないのだ。
しかし―
「佐々木先輩ってあの大学に行くので遠く引っ越すんですね」
「合格できればですけどね」
「出来るはずなんですよ! 佐々木先輩ですから」
「あははは、ありがとう」
こそばゆく佐々木が微笑む。
喜多村が言ったのは嘘でもない。佐々木の成績は三年の中でトップクラスなのだ。その上、聞いた限り中学校一年から上位成績で続いてきた。
言われた通り、佐々木はどれ大学にも合格出来るはずだ。
そして、その瞬間に―
「えっと……大学の話やめてくんない?」
無表情で誰もと目を合わせることなく冷たい声で谷和原は大学のことを話さないでのを促した。
美鈴と美月はその谷和原のセリフに含まれた意味を分かったようだけれど、喜多村は小首を傾げて質問を投げかける。
「谷和原先輩どうかしたんですか?」
「いやあ、別に」
「それなら、どうして―」
「ただそういうの今は聞きたくないって感じというか」
笑顔を浮かべながら谷和原はそう宣言しててへへと話題を変えようと言わんばかりジェスチャーをした。
そうするため、俺は口を開こうとした。だが、俺より佐々木は先に話す。
「今大学の話をすればいいのでしょう。どういうことかというと、卒業は近づ―」
「大学の話やめてって言ったっしょっ!」
彼女の席を立ち、両手の手のひらでテーブルを叩いてそう叫んだ。
ウェイトレスたちと他の客さえが谷和原の叫び声を聞いて俺たちのテーブルに視線をやった。
喜多村と美鈴と美月は驚いた顔を浮かべたが、一番驚いていたのは佐々木だったに見えた。
「……か、櫂、ちゃん?」
おずおずと谷和原の名前を呼ぶと彼女は自分の鞄を取って振り返る。
「騒いじゃっちゃってごめん……じゃね」
そう呟いた谷和原はドアへ歩いてファミレスをあとにした。
「谷和原先輩」
喜多村は谷和原を追いかけるために席を立とうとしたけれど美月は彼女の腕を掴んで、今に彼女を追わないほうがいいと言わんばかりにかぶりを横に振った。
俺たちは視線を交わすことしか出来なかった。そして、佐々木は涙を堪えたことのみ出来たに思えた。




