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第四十六話 ノスタ村の第二夜

 時間が飛んだようでまた晩になった。


 晩ご飯を食べきった後で、昨日みたいに居間に四人はチムニーの近く座った。


 居間の暖かさはまちがいなく居心地よかった。


 四人はなにも言わずただ煙突の火を見つめる。やっと、沈黙を破ったのはヤワラカイだった。


「こっちらの世界とあっちらの世界って怖いじゃん」


 微苦笑交じりでヤワラカイがそう述べると、雄一は彼女を見て問いをかける。


「なんのところ?」


「だってさ、あれじゃん。……あたしたちにとって〝現実世界〟があって〝異世界〟もあって、きっとこれ以上もっと世界とか次元とかがあるっしょ。それなら、もっとあたしたちがいて数え切れないほどもっと人が存在して……。なんかさ、あたしたちって、あたしたち存在は意味もなく価値もないみたいじゃん」


 それを聞くと雄一はニヒルな笑顔を浮かべて話す。


「そうかもしれないな……。他愛ない程度で可笑しいんだな」


「そうですね。いつまでもそれであり続けるかもしれません」


 セツナがそう言うとヤワラカイはミナの顔を見て悪戯っぽい笑顔を浮かべる。


「けどさ、いくら次元があっても、ミナちゃんはどれ世界でも一番可愛いじゃん」


「賛成します」


「俺も賛成する」


「からかわないでください!!」


 彼女が褒められるたびにの決めセリフをミナが口にして、いつものとおり彼女の顔と髪は赤くなる。


「反応は可愛すぎる!」


「赤くなった髪と顔も可愛いです!」


「からかわないでください!!」


 ヤワラカイとセツナがそう言うとミナを抱きしめた。髪と顔が赤くなったミナは拗ねながら文句を口にした。


「その『からかわないでください』も可愛いっしょ」


「…………」


「恥ずかしすぎてなにも言えなくてミナの顔は信じられないほど可愛いのですね!」


「もう!」


 赤くなったままで泣きたがる顔で声を上げた。すると、ヤワラカイとセツナと雄一は爆笑してしまい、やがてミナも大声で笑った。


 それじゃあ寝ますか、とセツナは立ち上がろうとしたところで雄一は昨日の夜のことを思い出す。


 窓から知らない相手に見つめられる。


 幻視と幻聴だったって覚えると背筋が寒くなるのはやむを得ないものだ。


 無意識に雄一は窓を向くけれどそこにはなにもなかった。


 しかし、彼の表情が暗くなり、不安がそこにあった。


 ヤワラカイは雄一の顔色に気がついて、すぐに問いをかける。


「川宮くん、どうしたの?」


 彼女はそう聞くとセツナとミナは彼の顔をうかがう。


 語るか語らないか雄一は一瞬で躊躇ってしまう。


 余計な心配になりかねないことであろうかヤワラカイとセツナとミナをこれ以上心配させるのは望むことでもないのだ。


 だがしかし、昨日のことは幻ではなくて本当にあったのは可能性もある。だから、彼女たちは注意するために語るべきかもしれない。


 結果として、雄一は、かぶりを横に振るとともに―


「……いやなんでもない」


 ―と言った。


 今には語たらないにする。けれど、昨日のようなことがあったら、それは、幻ではなく本当のことの証なのでその場合に語ることしかないのだ。


「ならいいんだけど……。さあ、寝よー寝よー」


「うん、寝ましょう」


「ミナ、俺たちも寝ようか。客室に行って」


「はい……。川宮さん来ないのですか?」


 客室のほうへ歩き始めたミナが雄一が歩かないのが気がついてそう聞くと、雄一はソファに座って答えを口にする。


「いや俺はここで寝るぞ」


「それならあたしたちと寝てよ、ミナちゃん」


「いいんです! お休みなさい、川宮くん」


「ああ、おやすみ」


 居間から去り、ヤワラカイとセツナの部屋の前の角を曲がるところでヤワラカイは足を止めて、悪戯っぽい笑顔を浮かべながら呟くように話す。


「ミツキちゃんは客室にひとりで寝たら雄一くんはソファに寝るのかなあ」


「おい……」


 雄一は言い返そうとしたがヤワラカイは小走りで彼女の部屋に行って、バタンとドアを閉めた。


 やれやれとソファに横になると雄一はため息を漏らす。ヤワラカイは言った展開にはどうするなのか俺はと雄一は想像して、けれど、恥ずかしくなってしまったのでやばいと言いながらかぶりを振った。


 あくびをすると瞼を閉じる。


 けれど、窓のガラスの近く、居間に覗いている二つの目が、雄一の寝顔をじっと見つめていた。

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