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第四十三話 ノスタ村の第一夜

 夜になると、煙突に火をつけ、四人は煙突の近く座った。


「暖かいですね」


「めっちゃあたたかいね~」


 温めるためにチムニーに手を差し出しながらミナとヤワラカイがそう言ってお互いに笑う。


「反面に外はすごく寒そうだな」


「ここに秋はめっきり寒いです。煙突がすこぶる助かります」


 ため息を漏らすセツナはそう宣言すると雄一は座ったままで窓越しに外の景色を眺めた。風が強く吹いて窓のグラスとぶつかると口笛ような音がする。


 こほんとヤワラカイが口を開く。


「実はさあ、ミナちゃんと雄一くんがいるから、なんかさ、夜はそんなに怖くないってかんじ」


「わたしもそう思います」


 ふたりは曖昧な笑顔を浮かべる。


 この絶望的な状況で、この瞬間は希望を与えてくれたと言わんばかり笑顔だった。


「ノスタ村からしばらく去ればいいんだろ……。この状況が変わるまでな」


 そう促す雄一にはセツナは微苦笑をして言い返す。


「それについて話したことがありまして……けれど―」


「けど、あたしはここから動くつもりはないし……あたしたちはここに生まれ、ここに育って……今は去るなんてこと考える場合じゃないっしょ」


 セツナが言っていたことを遮って、真剣そうな顔でヤワラカイがそう宣言した。


 そのところでヤワラカイとアヤはよく似る。自分の村を愛して、そこから去るよりも死ぬ方が選ぶ。


「……ということです」


 肩をすくめて、やれやれとセツナはそう口にした。


 ひとしきり火を眺めて、居心地ほどの暖かさを肌に感じる。やっと、沈黙を破ったのは雄一だった。


「ところでさ、暗殺事件がやっているのは総偽精霊に決まってるだろけど、そのやつの顔を誰かが見てないのか?」


 雄一の質問に落ち着いたトーンでセツナが答えを口にする。


「残念ながら誰もその者の正体を見たことがありませんらしい……。しかし、ノスタ村の人として装っているという噂も聞いていました」


「やばくない」


 腕を組むながらため息をつくと雄一は口を開く。


「それは愚かでもないな。俺に手紙を送ったやつはノスタ村の人を殺しているやつはずだ。だからミナと俺がここに着いたから俺たちを見ているかもしれないし、それを出来るためにノスタ村の人として偽装するって当たり前だ……どうにせよ、注意してほうがいいぞ」


 雄一が言うのは無理ではない。


 ノスタ村の人として装って他人の信頼を得て、そして裏から殺してという手口はあり得ることなのだ。


「そうですね……それに、今は寝たほうがいいですね」


「ミナちゃんみたいにね」


 ヤワラカイがそう言うとセツナと雄一はいつの間にかソファに横になったミナを見る。彼女はすやすやとうれしそうで寝ていた。


「眠りについたか……ミナの寝顔が可愛いと思わないか」


「ふふ、そーそー」


「確かにですね」


 笑顔交じりでそう述べた雄一にヤワラカイとセツナが賛成して微笑む。


「川宮くん客室に寝る方がいいんじゃん」


「いや、今夜でここに寝るぞ。ミナがソファに寝てるし」


 雄一がそう言うとヤワラカイとセツナが頷き、おやすみなさいと居間をあとにして二人の部屋に行った。


 深い息をついて、暖かさと居心地よさで雄一はリラックス出来た。悩みがたくさんあっても、というより、悩みがあるからリラックスするのは大事だ。


 眠りについたところで「見てる」と聞くと、雄一は居間の隅から隅まで目をやった。しかし、耳を澄ますとただ風が窓とぶつかる音だけだと分かった。無意識に窓へ視線をやると家の中にうかがっている誰かの姿を見とれた。むしろ、見とれたと思った。目を擦るとまた窓に視線をし、そこに誰もいなかったのを悟った。


 聞き違いをして見違いもした。それは疲れているからかもしれない。


 雄一が立ち上がると窓まで歩いて、念のためカーテンを閉めてあらためて床に横になると寝ることにした。

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