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第四十一話 進学

 気がつけば俺は放課後の教室に一人でいる。


 ノスタ村へ瞬間移動したはずなのにここに来た。


 この前、〝現実世界〟に瞬間移動したときと同じ景色だ。


 俺しかいない教室。


 音のない校舎。


 オレンジ色に染まった放課後のクラスルーム。


 だがしかし、窓越しの景色は違った。ここにも季節が夏から秋に移り変わった。


 俺は教室をあとにすると、美月と美鈴と喜多村が校門の近くあるベンチで俺を待っていた。遊びに行くと今朝に俺たちは決めたみたいだから、四人でファミリレスに向かった。


***


 俺たちの注文が持って来れた後で、美鈴と喜多村と俺はスマートフォンを取り出し、美月を見つめながら彼女の動きを待つ。チョコレートケーキを食べようとした美月は俺たちの視線に気づいたらしく手を止めて、俺たちを見返した。


「うん? 顔に何か付いているの?」


「別に、なにも付いてないよ……とにかく、食べて食べて」


「はい?」


 そう促されると美月は小首を傾げた。けれどすぐに肩をすくめ、あらためてスプンを握ってチョコレートケーキの一口を口に運ぶところで画面にタップして写真を撮った。


「綺麗なんだな」


「相変わらず可愛いじゃん」


「趣味になりそうなんですね」


「だよね~」


 写真を撮った美鈴と喜多村は各々の画面を見て交互に笑顔を浮かべた。こういうのに慣れた美月は見せてちょうだいと促すと俺たちはスマートフォンの画面を見せる。


「……確かに可愛いわ」


「でしょう~」


 赤くなった頬で美月が微笑みつつ食べ続けた。美例と喜多村と俺が美月の真似をするょうに食べ始めた。


「櫂ちゃんせつなちゃんこっちこっち」


 三、四口をしたところで美鈴は腕を上げるとふたりの女子の名前を口にした。彼女は挨拶した方向へ視線をやるとそこにいたのは谷和原(やわら)(かい)と佐々(ささき)せつなだった。彼女たちは俺たちの同級生でありながら俺たちの友達ようになった。喜多村の出来事から、すなわちみやとりょうやが消えたから谷和原と佐々木と遊びにいくのは普通なことになった。


 言うまでもなく、〝異世界〟で谷和原櫂はヤワラカイであり、佐々木せつなはセツナである。


 谷和原櫂は彼女の金髪でギャルだというのは明らかでありながら話しやすい女子なのだ。反面に、佐々木せつなは黒い髪であまり喋らない眼鏡の少女なのだ。


 似合わないと見えるけれど、実際に、ふたりはよく有無相通じて親友だ。

 

 彼女たちは俺たちのテーブルに近づいて座ると注文をした。数分後で谷和原と佐々木のチョコレートケーキは持って来れた。


「ええ超おいしそうっしょ」


「そうみたいです」


「じゃ、いただきます~……おいひい~」


「食べながら喋ってはいけません」


 佐々木がそう言って谷和原の頭をやさしく叩く。


「おいしいからよ~」


「でしょう! 櫂さんもチョコレートケーキの美味しさが分かるわね」


「そーそー」


 二分間かからず、谷和原は彼女のチョコレートケーキの分を食べきった。


 俺が全部食べたところで、美鈴はそういえばせつなちゃんと彼女に話しかける。


「進学って、あの大学を狙ってるの?」


「そうです」


 前にそれに関して聞いたことがある。


 佐々木は、あの有名で高いレベルの公立大学を狙っている。彼女はいい成績だからその大学に行けるのは無理もないことだ。


「すごいね」


「けれど遠いのね。引っ越すの?」


「そうです、引っ越します」


 美月が言った通り、その大学はここからすいぶん遠いのでその大学に通えるには引っ越すのは必要である。


「…………」


「谷和原先輩なにかありましたか?」


「あ? え、特になにもないよ」


 否定を口にしながら谷和原は顔の前で手を振る。


 全員がチョコレートケーキをぺロリと平らげた後でも喋り続けた。


***


「谷和原さんの表情は変だったわね」


 皆と別れて電車から降りたのち、歩きながら美月はそう宣言した。


「ん? なのことだ?」


「気がつかなかったの?」


 肩をすくめつつ頭を横に振ると美月はため息を漏らしながら口を開く。


「そうだわ、雄一くんなのね」


「おい、そのセリフにひどいニュアンスを感じてるけど」


「気のせいだわ」


 くすっと笑う美月は言葉を継ぐ。


「美鈴ちゃんは佐々木さんの進学のこと話した時に谷和原さんの表情が強張ったわ。喜多村さんも気がついたからあの質問をしたでしょう。その上、美鈴ちゃんも気づいたはずだと思う。けれど聞かなかっにしたかもしれませんわ」


 確かに喜多村は心配そうな顔でなにかありましたかと聞いた。それは谷和原となにかが変なのが察知したかもしれない。


「そうだっだら、なんで?」


「そうわね……聞かないと分からないので谷和原さんに聞くしかないね」


 顎に手を当てた美月はそう言った。


そして、その瞬間にある思いが浮かんできた。


 美月の進学ってまだ聞いたことがない。


 彼女は大学のは知っているけれどどれ大学なのかまだ知らないのだ。たぶん、佐々木と同じく、あの大学を狙い、それから引っ越すこととなり、すなわちここから離れる。


「あの、美月って―」


 無意識に美月の手を取ると、これ以上一言さえ言えるより早く俺の視界がぼやけていく。


「雄一く―」


 美月の声も遠く聞こえて全ては霞む。これは他でもなく瞬間移動しているということだ。

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