第四十話 新たな問題
雄一たちはまたシルデス村に着いたから三ヶ月くらい経った。
というより、キタノ森林から去った後でノスタ村に一ヶ月でそこの宿屋に泊まった。そんな長い間でノスタ村に泊まる理由がなかったが雄一にとって居心地よかったのでそこで泊まることにした。そして二週間が経つとシルデス村に戻ることとなった。
言うまでもなく、ミレイの宿屋に泊まり、そこで住むかぎり宿屋で働かなければならないとミレイに言われると雄一はやれやれと宿屋で働き始めた。明白のことだが、雄一はミナとアヤの分もやってきた。なぜなのか? ミレイがそう決めたからだ。
毎日の休み時間には雄一が〝現実世界〟へ瞬間移動するためにミナと精霊連携をしまくってけれど一回すらうまくやれなくて、試せば試すほどまた〝現実世界〟へ行くという目的はだんだんと無理そうに思えていく。
そして秋がきた。
赤と黄に色を変えた葉がシルデス村から綺麗に見れられ、美しい背景でありながらミナが怒るときによく似合うと雄一は思う。
けれど、その秋から、その美しく儚い季節からすべてが変わり始めて、その変わりとともに終わりも近づいてくる。
***
ある朝には、雄一は階段を下りながらミナたちの声が彼の耳に入った。
「大変ですね」
「そうだね……」
ロビーに踏むと全員の視線が彼に集まった。雄一は四人を見返すとミナの髪が青く染まったのは見ると違和感を覚えた。
「どうした?」
ミツキもミレイもミナもアヤも真剣そうな顔をし、誰かが沈黙を破るのは待っているごとく黙っていて、けれどやっとミレイは口を開く。
「先月からノスタ村で暗殺事件がたくさんあってきた……三十六人は殺されて、それぞれが関係があると疑われている……」
よどみを見せるミレイは深い息をして受付の上にあった手紙を取って雄一に渡した。
「……そしてあんたを狙っているって」
雄一は手紙を受けると内容を読む。
『カワミヤ、殺された人はおまえのせいだからこれ以上誰も殺されないでほしくなければ明日にノスタ村に行って一週間でそこに待ってて。来なかったらこれからももっとノスタ村の住民を殺してやる』と書いてあった。
手紙を読みきると雄一はミレイに問いかける。
「これはどうしてここに?」
「カワタおばあさんは宿屋のフロントに見つけたよ」
「そうか」
宿屋のフロントでカワタおばあさんがその手紙を拾った。シルデス村に住む人は多いので誰がその手紙をそこに置いたのは分かりがたいことなのだ。
けれど、いうまでもなく、一番高い可能性なのは偽精霊がやったということだ。
「行くしかない、か」
腕を組んだ雄一は一分くらいで考え込んだのちその言葉を口にした。
ミツキはそれを聞くと声を上げる。
「それは罠ではないの?」
「罠であっても他の選択はないじゃん……それに、ヤワラカイとセツナがノスタ村にいるんじゃん」
ヤワラカイとセツナはノスタ村に泊まっていた間で雄一たちの友達になった女子のふたりのことだ。彼女たちはミツキと同じ年齢で金髪の長い髪に、話しやすいふたりの女子なのだ。
ミツキはやれやれとため息を漏らすと口を開く。
「まあ、止めないけれど、わたしたちも行くかしら」
そう言いながらミレイを見たが彼女は一言さえ言えるより早く雄一は話した。
「いや、来ないでくれ。お前らはここに残るほうがいいぞ。ごくに巻き込みたくないから……よかったらミナも―」
「出来ません。私は川宮さんを一人にさせないんです……それは私の守る精霊としての役目です。その上、その……川宮さんは……えっと……わたしにとってとても大切の存在なのです!」
「…………」
ミナの髪は青から桃色に彩られていった途端そう言って恥ずかしげ目を泳がせた。
〝現実世界〟で雄一の妹であろうとも恥ずかしいことを彼に言うときに恥ずかしく感じるのはやむを得ないので恥ずかしさを誤魔化すようにこめかみのあたりを掻きながら笑った。
ミナと雄一のシーンを見ているミツキとミレイとアヤはやさしい笑顔を浮かべて、それから、咳払いをした後でミツキは言葉を口にする。
「分かったわ……けれど、雄一くんもミナさんも困った状況になったら精霊の宝物で連絡しなさい」
「おう、分かった」
「はい」
ミナと雄一はミツキに頷くと手を繋ぐ。
「じゃあ、行って来るな」
「気をつけてください、ミナさん川宮雄一さん」
「おう」
「気をつけてね、ミナちゃん……あんたは帰らなくていいけど」
「お前の胸が小さくなくていいけど」
悪戯っぽい笑顔を見せたミレイには雄一はそう呟くと、殺意こめた目でミレイは彼を眺める。
「……………………なに?」
勇気があるならそれを繰り返してみてと言わんばかりにミレイは小首を傾げたところで、ミナ行こうと雄一はミナに瞬間移動をするように促すと、瞬きの間で宿屋から去っていった。




