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第三十七話 あちらの世界とこちらの世界

 アヤは泣ければ泣くほどそのに眠りについたから雄一は彼女を背負って樹上の家まで連れて彼女のベッドにやさしく彼女を置いた。


 四人は床に座ると疲れそうな表情を浮かべながらミツキがため息をもらす。


「残念だったね、ミヤさんとリョウヤくんのこと」


「そうだね……しかし、あれは変だったでしょ。だって総偽精霊とミヤちゃんとリョウヤくんはほとんど同時に消えたよ」


「確かにね。関係でもあるのかしら」


「…………」


 ミレイとミツキのやりとりを聞く雄一は〝異世界〟ではない世界、即ち〝現実世界〟の出来事に関して考える。


「川宮くん、どうしたの? ずっとぼーっとしたけれど」


「そうだね。あんたも変じゃん」


「あ、いや……」


 誤魔化すように雄一は無意識にこめかみを掻いた。


 それでも彼は考え込んだ。


 そして語ることにした。


「……実はな」


 〝現実世界〟のことが雄一は説明し始めた。


 ミナと連携をしようとしたところであちらの世界に行っただの高校生としての日常だの雄一の家族のことだのアヤの手首の傷のことだの美月との関係だの、そして美月の手を取ったところでこちらの世界に戻ったことも雄一は語った。


 それから、ミナとリョウヤはあの世界で猫であり、喜多村を救うためにふたりは犠牲にして、あちらの世界でも消えたとも雄一が説明した。


「そうですか」


「それはやばいね」


「凄いわね」


 はっとした三人の女子を見つめて、水色に染まったミナの髪を大したことないとみたいで無視しながら雄一は言葉を継ぐ。


「それで、お前らもあっちの世界の記憶を持っているだろ」


「うん? どういう意味?」


 美鈴がそう聞きつつ小首を傾げると雄一は答えを口にする。


「スマートフォンってなにのは知ってるだろ」


 その質問にミツキが顎に手を当てて頷く。


「……確かに……スマートフォンのイメージが浮かんでくるわ」


「私もです」


「あたしも」


 三人の女子はスマートフォンはこちらの世界にまだ発明されていないけれどもスマートフォンというものは知っている。それは他でもなくあちらの世界の記憶なのだ。


 雄一はそれに関して気がついたのはキタノ森林に来たときだった。


 彼は守る精霊について突っ込みをするためにスマートフォンと言った。そして、彼女たちが笑った。その用語を分からなかったら普通に「それはなんですか」と聞くはずだ。だが、彼女たちはジョークで笑った。しかし、それは無意識に覚えていた。つまり、どこかでスマートフォンを見たことがあって記憶に残っているのだ。


 それで、雄一は現実世界に行って来たので美月と美鈴と美奈子があちらにもいると分かった。そのゆえ、彼女たちもなにか覚えるのは不思議でもないことだ。


 それはまるで、みんなは〝異世界〟というこの世界には〝現実世界〟から反映されているみたいだ。それとも、逆なのか。どちらにせよ、〝現実世界〟というあちらの世界と〝異世界〟というこちらの世界は関係があるはずだ。


 腕を組みながら雄一は笑みを浮かべて話し続ける。


「それってあっちの世界を覚えたら行けるかもしれないなってこと。まあ今、要はなんで同時に二つの世界にいるのかって」


「あちらの世界とこちらの世界というのはごたごたですね」


「だな」


 雄一はそう言うとミナとミレイと雄一はこっくりと頷いた。


 ミツキは雄一をじっと見据えるのは彼が気がつくと話しかける。


「どうしたのか?」


「い、いいえ……特になんでもない……わ」


 赤くなった頬でミツキがそう答えると目をそらした。ミナと雄一は彼女を見て小首を傾げたが、反面にミレイは小悪魔っぽい笑みを浮かべてやれやれと頭を横に振った。


「不思議だね、こちらの世界もこちらの世界も」


 そう言いつつミレイがあくびをして床で横になる。彼女の真似をするようにミツキとミナもそれをした。


 みんなにも今日は疲れた一日だった。眠いのはやむを得ないことだ。


 けれど、一番疲れた一日を堪えたのはアヤだった。


 彼女はこれからどうするだろう。


 雄一たちだって、今からどこに行けばいいのだろうか。


 ミツキもミナもミレイも床で眠りについた後でも雄一はこれからそうすればいいのかと考え続けた。

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