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第十七話 白い髪の少女

 雄一が目覚めるとテントの外に微かな光を見れるから朝だと分かる。テントを出ると朝ごはんを食べている三人の女子が雄一のほうへ視線をすてミナが口を開く。


「おはようごさいます、川宮さん」


「ああ、おはようミナ」


 ミナに挨拶を返し、ミナの隣にいるミツキと目を合わせる。


「……おはよう」


 ミツキが挨拶を言うと、彼女と雄一がほぼ同時に目を逸らす。真夜中に雄一が言ったセリフを二人は思い出したので恥ずかしくなるのはしょうがないことだ。


「おは……なに、二人とも」


 ミレイがおはようの途中で黙ってミツキと雄一の変な仕草が気になりそうな顔でそう言う。


「なんでもねえ」


 誤魔化すように雄一が何もなかったふりしてミナのそばに座る。


「……ふーん、そう。とにかく朝ごはん食べて」


「ありがとな」


 ミレイが雄一に朝ごはんを渡して彼はお礼を言う。四人は食べきるとミツキがテントを透明な袋にしまってその場所から去った。


 歩みつつ雄一はミレイがミツキの呪いのことを説明した日を覚える。というより、ミツキの呪いの効果を思い出す。呪われている者―ミツキ、とその呪われている者のそばに長い間でいる者―この場合にはミナとミレイと雄一を悪いことをばかり思わせて、そしていつの日か、その悪い思いに負けたら自分自身を失うことになる。その意識がない体がもう一人の総偽精霊になる。


 しかし、今まで雄一がその悪いことを思ったことがない。ミナとミレイもそうらしく、ミツキだってもそうらしいのだ。なぜそうなのかと雄一が自問したけれどそれは呪いの効果がなくなるとも言える。でも、結論付けるにはまだ早くて、ホンユジを見つけるのに集中をするほうがいいと雄一が考えた。


 昨日と違って、歩けば歩くほど木が少なくなって木漏れ日が多くなって風がもっと涼しくなる。


 三キロメートルを歩いたところでミナが人差し指で差しながら大声を出す。


「あ! 川です」


「本当だ」


 雄一たちの前に川がある。川岸が小石まみれで水が遅く流れていく。ミナが靴を脱ぎ、そのままで川を踏む。


「冷たいですね……ミツキさんミレイちゃん、泳ぎましょう」


 そう言いながら笑顔を浮かべてミツキとミレイを呼ぶ。


「いいね。泳ごうミツキちゃん」


「……でも水着が」


「あるよ~」


 ミレイがミツキのセリフを遮り、彼女の手のひらにあった水着をミツキに見せた。


「……仕方ないわね」


「はい、ミツキちゃん。ミナちゃんも」


 ミレイが笑みを浮かべて透明な袋から出した水着をミツキとミナに渡す。


 雄一は川を見つけたからホンユジを探すべきなんじゃないかなと言いたかったがたまに楽しむのは大事だから言うことなくため息をつく。


 雄一はミレイの方向へ視線をやると彼女が真剣そうな表情で彼を見ているのを気づく。


「……あたしたち着替えるからあっちに振り返って。こっちに見たら絶対に殺すよ~」


 ミレイがそう言いながら本当に殺すよてへ~と言わんばかり笑顔を浮かべる。雄一は頭を掻きながら振り返って舌打ちをした後言い返す。


「見ねえぞ……まあ、見たい気分になったらミツキしかいないだろう。だって、ミナとお前のむっ―……あーいってててて……何なんだよお前!」


 雄一が彼のセリフを言い切る前、ミレイが小石を拾っ彼に投げて雄一の頭の後部を打つ。振り返ることなく雄一は文句を口にする。


「いやなんでもないよ? あんたは変態で不愉快なことを言いたがった気がしただけだよ」


「言いたかったのは事実だけだっ……痛いって」


 ミレイがまた雄一に小石を投げて同じところで打つ。ため息をつくと口を開く。


「変態でキモくて嘘つきだね、あんたは」


「ちっ……この小さい胸め」


雄一がそう言うが早いか彼の後ろで危険の気配を感じたので手で頭の後部を覆いながら素早く小石まみれの土の上で座る。ミレイが投げた小石は雄一の頭の上に見れない程度の速さで通って一番近い木の樹幹に差さる。ミレイを馬鹿にするため、雄一が女子たちの方に振り向いた、けれど、見たのは―


「ざまあみろ……ありゃ?」


「…………」


 ―かなり白い水着が似合うミナとミツキはもう着替えたが、まだ着替えきっていないミレイはぎりぎり腕で彼女の裸の胸を覆って何も言わずただ雄一を眺める。雄一は彼女を見返し、ミツキにミナへ一瞥をするとまたミレイの方に視線をやる。


「……いや、ミナのほうが大きいだろう」


 雄一がそう思っていたけれど気づかず大声で言った。


 ミレイが余った手でゆっくりと彼女の足の近く一番大きな小石を拾って叫ぶように口を開く。


「あぁんたはぁ最低!!!」


「いや待ってっ」


 小石に打たれるのを避けるために雄一は迅速に立ち上がり、最も近い木の後ろで隠れる。


 一発、二発、三発。小石が樹幹を打つ音がキタノ森林の隅から隅まで響く。


 もう小石の雨が止んだじゃないかと思いながら雄一は覗き見ると、その瞬間、おでこに小石に打たれてお尻で地面に転倒する。


 雄一は「バカ」と聞こえて、それからじゃあじゃあと三人の美少女が川で遊び始めた。


 彼は立ち上がって、川を見れる位置で座って樹幹にもたれかかる。


「何なんだよあいつ。俺を殺す気か」


 ミレイを見つつそう言う雄一は指で腫れているおでこを擦りながらまた口を開く。


「頭が痛いな」


「楽しそうですね」


 雄一の右側で誰かがそう言う。雄一はすぐに立ち、そこへ視線をやる。


「お前は誰だ?」


 そこに立っているのは白くてミナより長くてミツキより短くて髪で茶色くてぼろぼろなワンピースを着る少女である。少女は弱く頭を下げて口を開く。


「わたしはアヤと言います。あなたは?」


「川宮雄一」


 雄一は自己紹介をするとあらためてアヤが会釈をして話す。


「よろしくお願いします、川宮雄一さん」


「ああ、よろしく」


 彼はそう返事するが早いかアヤが心配そうな表情を浮かべて雄一のおでこを指さす。


「川宮雄一さん! 御凸が赤くて腫れてます! 痛くないですか?」


「まあ、ちょっと痛いな」


 雄一がそう言ってアヤが彼に近づいて手を伸ばす。


「動かないでください」


 雄一のおでこはアヤの人差し指に触れられ、腫れるところがなくなっていった。彼女の人差し指の指先が白く光った。


「ありがとな」


 雄一がおでこを弄りながらお礼を言う。


 アヤが笑顔を浮かべ、ミナとミレイとミツキの方向へ視線をやる。


「あの二人の女の子は守る精霊ですね」


「その通りだけど」


 なぜ分かるなのかという疑問を雄一が覚えた。けれど一目でミナとミレイは守る精霊のは分かるのは珍しくないと雄一は思った。ミレイが言った通り、精霊の霊気が人と違うのだ。だから、ミナとミレイが守る精霊だと気づくのは簡単なことなのかもしれない。


 でもその上、雄一はもう一つの疑問を覚えた。


「素晴らしいです」


「何が?」


「守る精霊と出会うのは素晴らしいと思います」


 雄一の問いにアヤがそう答えて微笑む。


 それから、雄一は考えている疑問を言葉にする。


「……あの、もしかしたらお前はホンユジ部族の精霊なのか?」


「うん? そうですよ。わたしはホンユジ精霊部族の最後の世代の代表なんです」


 アヤがそう言いながらまた頭を下げて、笑顔を浮かべると彼女の白い髪は透明な手に靡かれるごとく揺れていた。

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