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第十四話 キタノ森林と呪い

 雨の音が少しずつかしがましくなってきた途端灰色の空は濃くなっていった。薄い霧もあるせいで雄一は既視感を覚える。しかし、既視感でもなくて実際にそのような場所に先にいた。


 そうだ。灰色空間だった。


 灰色空間に関して思うと雄一はまたここにいる意味と一瞬であちらの世界のことをもいだしてみたけれど何も思い出せなくてただ悩みを覚えてしまう。


 おそらく、雨が降る度に雄一は灰色空間のことを思い出してしまい、それからこちらの世界にいる意味とあちらの世界の死のことも思い出すのは癖になりそうだ。でも雄一はその思いに負けず、小さなため息をつき、ミツキの話を聞く。


「ミレイはもう説明したけれどわたしの呪いはこの世界の最も酷くて最低な呪いと呼ばれる」


「つまり、人気者だよな、ミツキが」


 雄一のセリフがミツキの耳に入ると戸惑い交じり表情を浮かべて頭を振る。


「いいえ、そうではない。わたしより世間話になったのはわたしの呪いなのよ」


「といますと?」


「この呪いをかけられた時には、わたしは五歳のころだった」


「そうですか」


 五歳から呪われているとミツキが宣言する。そんなに幼いから呪われてずっとその障害を抱えてきた。こいつは心理的に本当に強いな、と雄一は考えつつミツキが言葉を継ぐ。


「わたしはあのころからミレイちゃんの友達だからこそ、ミレイちゃんはその残酷な呪いをかけられた子はわたしだということは知っているの……でもわたしとわたしの家族を関係を持たない人はわたしはあの呪われた子であるということは知る術もないわ」


「そうなのか……半女神だからってこと。そんな簡単にお前と関わらないよな」


 ミツキの正体を知らなくても彼女の呪いは一般な話題になった。彼女の顔を見たことない人にはミツキは呪いをかけられた子だけなのだ。半女神であるという事実は呪いのせいで衆人はそれを忘れてしまったらしい。


「そうよ。わたしはあの呪われた子ということは、ミレイちゃんとあなたたちとカワタおばあさん以外、誰も知らなくて、そのゆえに、今日まで直接に偽精霊でも総偽精霊でもまだ襲ってないわ」


「そうですか」


「そうか……まあ、その呪いって間接な方法と言えるよな」


 雄一はそう言うと、昨日に彼とミナとミレイを襲ってきた偽精霊を覚える。ミレイが「呪われた子の精霊」ということは分かっていたが、あの偽精霊でさえもミツキの顔を知らないはずだ。襲う前に、きっと雄一たちを追いかけていきたのだ。そうだったら、ミツキの顔を知れれば、彼女も追いかけて襲うチャンスを見逃さない。だって、比較的に雄一よりもミツキのほうが強くて偽精霊にとって面倒くさい存在はずなのだ。


 反面に、ミツキはもう呪われているから彼女を襲うメリットもなさそうなのだ。けれど、精霊の者も偽精霊の敵だと言える。その上、半女神だし。どうにせよ、ミツキが偽精霊に襲われたことがない。


「そうだわ……けれど、いつかわたしの正体を知って襲われる可能性はないと言えないわ。それでは、呪いを解くために二つの方法があるよ」


 ミツキが咳払いをして話し続ける。


「一つ目は、総偽精霊全員を負かすでという方法。言うまでもない、この方法は一番難しいわ」


「無理そうな選択なんだね」


 ミレイがそう言いながら微苦笑を浮かべつつ頭を掻く。紛れもないそれは圧倒的な事実であり、至難の業である。六人の総偽精霊を負かす。奇跡的な成り行きで、折角一人の総偽精霊を負かしてもまだ五人が残るのだ。


「それで、二つ目の方法は、一つ目の方法より生易しいと言ってもいいけれど簡単ではない……」


「というか、その二つ目の方法はキタノ森林と関係があるってことよね」


 ミレイの言い添えにミツキがこっくりと頷いて話し続ける。


「そうよ……実際、その二つ目の方法を先週まで知らなかったわ」


「そうなの? というと、その方法を他人から聞いたよね」


 ミツキとミレイのやり取りにミナも雄一も口をはさむことなくいいコンビよなとふたりが思った。


「偶然で聞いたが……キタノ森林へ行ったらその森林の奥で住むある精霊部族がいるんだって聞いたよ。そして、その精霊部族は呪いを解くには得意なのだって」


「神話っぽいけどな」


 ある森林の奥にある精霊部族がいて、そして呪いを解くには得意だと聞いたら、ただの伝説であると考えるのは無理もないことだ。というより、そう思うのは自然なのだ。偶然で聞いたミツキの状況にはそんなに都合のいいことは罠くさいと雄一が思った。


「わたしもそう思ったわ。だから、その後で図書館に行った。そして、一冊でその精霊部族の情報についてしか見つけなかった……『ホンユジ』とその本で名付けられた。けれどそれ以外、詳しい情報がなくて、ただ浅くて曖昧な情報ばっかりだった……まるで……」


「まるで?」


 雄一はミツキの言葉を繰り返しつつ次のミツキの台詞を待つ。


「まるで、もう存在しなくて消えていた。いいえ、そうではないわ。その本で見つけた情報限り、わたしの仮定だけだけれど、誰かれがその『ホンユジ』部族を絶滅させられた」


「……つまり、二つ目の選択は、絶滅された可能性の高い部族を見つける、ということか」


 皮肉げなトーンで雄一はそう言うと、ミツキがため息をつきながら微かに頷く。


「いや、そうだったら、キタノ森林へ行くことは無意味だろう」


「そうかもしれないけれど、今の状況で他の選択でもある?」


「……確かにな」


 無理そうに見えても、ミツキは正しい。別の新しい選択を見つけない限り、『ホンユジ』を探しに行くという選択はしかやれない。


「したがって、今はそこへ行くことのみ出来るわ」


「その上、そのホンユジの一人や二人はまだ生きている可能性があるでしょ」


「そうです、そうです」


 ミナとミレイの励ましにミツキが弱い笑みを浮かべて三人の女子は首を縦に振る。雄一はそれを見ると、先のミツキの話を思い出す。ミツキとミレイによる、二人は幼馴染みで大親友の関係を持っている。だが、ミツキが半女神であるので、あの時に近づきがたいかもしれない。


「……そういえば、先の話だけど、なんでミレイはあのころにお前の友達だったのか? ミツキを知り合うって難しかったろう」


「んー、実はね、お母さんは長い間でミツキちゃんの家族のメイドだったよ……四歳のとき、お父さんがなくなったから、ミツキちゃんの家族の家にお母さんは働きながらお母さんとあたしはそこに住むこととなった」


 ミレイの母親はミツキの家族のメイドとして長い間で働いた。そのゆえ、ミツキの両親と親しくなったかもしれない。その結果、ミレイの父親が死んだ後、ミレイと彼女の母親はミツキの両親にその家に住むと誘われた。そこから、ミツキとミレイには関わりやすくなり、離れていた時期があったとしても現今まで友達でありつづけてきた。


 ミナがミレイの言い方に含まれているニュアンスに気がつくと首を傾げながら口を開く。


「ミツキさんの家族のメイドだったって言ったらミツキちゃんの母はもう死んでいますか……あ! ごめんなさい、そんな失礼なことを言いたくありません」


「気にしないで、ミナちゃん……そうだよ。お母さんは亡くなったよ、数年前に」


 ミレイが苦笑いをしながらそう言う。ミナは感嘆を示す瞳でミレイを見つめて言葉をかける。


「偉い子ですね、ミレイちゃん」


「ありがとう。でも、あたしよりここに偉い子がいるよ」


 ミレイがお礼を言いつつ首を横に振り、ミツキの方へ視線を向ける。その言葉と目線でミレイ言いたいことを把握したらしき口を開く。


「そっか……先の言い方って、ミツキの母親と父親も……」


「川宮さん! 失礼です!」


「ミナに言われたくないけどー!」


 ミナの叱責の台詞に雄一は皮肉げなトーンでそう言い返す。ミツキはミナに落ち着かせるように話す。


「いいよ、ミナさん。その通りだわ、川宮くん。わたしの両親は亡くなった、あのときに……」


 そう言いながら先にミレイはした顔に似る表情をする。


 ミツキとミレイが自分の親を思い出すような仕草で数秒で黙る。ミナが何かを言おうとしたけれどタイミングが悪いので結局何も言わなかった。その空気は自分のせいだと自分を責める雄一はやっと沈黙を破る。


「じゃあ、行こうか、キタノ森林へ」


「うん、行きましょう」


 ミナがそう言うと、両手を彼女の顔の高さに上げ、ファイトポーズをするように拳を握る。自明のことだが、そのポーズをするミナが非常に可愛くてせいでなのか、ミツキとミレイがその可愛さに励まされたのように、視線を合わせて交互に頷く。しかし、雄一はあるミスのところを気づいて口にする。


「……いやでも、どうしてそこに行くのか?」


「決まってるでしょ、瞬間移動で」


 首を傾げながら説明を促すように混乱交じり顔で話す。


「無理じゃねか。ミツキと俺はここにいるし、あそこに行ったことがないだろう、お前らも俺たちも」


「そのとおりだけど……だからなに」


 ミレイは雄一が言っていることをまだ理解できないみたいなので雄一はため息をついて言い方を言い換える。


「だから、この四人の中、誰も最近あそこで行ったことがなくてここに皆集まってる。つまり、ミツキと俺の現地はここで、ミナと俺でもミレイとミツキでも、最後に一緒にいた場所もここだ」


「あんたは言いたいこと分かるけど……そうだね、知らないよね」


「何を?」


 雄一の問いにミレイが無視してミツキに話しかける。


「あの本でキタノ森林の絵があったよね」


「あったわ」


「今、その絵覚える?」


 ミツキがこっくりと頷くと、ミレイはやっと雄一に言葉をかける。


「行きたい場所の名前と守る精霊か精霊の者かはその場所の映像をできるなら、そのところへ行けるよ。この場合には、ミツキちゃんはあの本でキタノ森林の絵を見たから映像を出来るんだ」


「……ミナ」


「てへ~」


 ミナはテヘぺろらしい表情をするとミツキが優しく頭を横に振りながらこめかみを押さえる。ミレイは可愛いと言わんばかり笑顔を浮かて満足そうな表情でてミツキの手を取る。雄一はため息をつきながら愛しい視線でミナを見た。


 シルデス村からハジマ村まで瞬間移動したときと同じ、「あたしが瞬間移動した後で五秒を待ってミナちゃんたちも来て」とミナに説明した。二人は頷き合ってミレイとミツキが消えていった。五秒くらいの間が経つとミナも雄一の手を握り、瞬間移動をする。その部屋から去る前に、雄一は最後に見たのは窓越しに止む気配もない激しい雨だった。

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