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第十話 一二号室にて

 偽精霊との戦いの数分のあとでも雄一たちはまだある程度で戸惑っている。理由は別々だった。ミレイは、久しぶりに偽精霊と戦ったことはなかったのでこれは少し懐かしかった。それでも、偽精霊の悪意と気持ち悪さを感じて、その者たちは恐ろしいのも覚えた。


 ミナはその青い光のおかげで雄一を助けられて、自分がその力を持っているのはとても意外だった。


 雄一は彼は狙われているのが噂ではなくて事実であり、ミレイとミナがいたからまだ生きている。


「はー……あいつは俺を殺すに来た、か……本当に狙われているって実感」


 雄一はそう言いながらため息をつき、壁にもたらす。


「そうだな。これから毎日、今日みたいに襲われるって不思議じゃないよな」


「そうかもね」


 毎日、偽精霊に襲われる可能性は低くないという真実に雄一は絶望を感じた。自分自身を殺されるともかく、ミレイとミナをその危険にさらすのが雄一にとって一番絶望なものなのだ。ミレイがいつの日にか雄一とミナと別れる、その日からミナが守る精霊であろうとも一人で雄一を守らなければならないのだ。それでも雄一は、ミナにその重い負担を負わせたくないのだ。


「今日はお前とミナが俺を救った。でもな、いつもお前と一緒にいるわけないだろう……そのときに、ミナが俺の導く精霊だとしても彼女を助けたい……言いたいのは、ミナの力になるってのは何か出来るのか?」


「できることあるよ……でも、後で説明する。とにかく、宿屋に行って、今日泊まって方がいいよね」


「まあ、そうだな」


 ミナに力になる方法があると聞くと雄一は安心な表情をして、今にはそれについて聞かないにした。


 宿屋へ帰るため同じ道を通り、三人が並んで歩いていった。途中で、ミナの髪の色が変わった。他でもなくミナが恥ずかしく感じるときの桃色であった。だが、前回より、濃く眩しい桃色だった。


「…………」


 ミレイと雄一がミナの髪に視線をやり、ミレイは話しかける。


「どうしたなのミナちゃん? なんでそんなに恥ずかしい感じているの」


「そうではありません。私、恥ずかしくないです」


 ミレイの問いに、ミナが頭を振りながら否定を口にした。


「……えっと、ミナ……」


 そう言いながら雄一はミナの髪を人差し指で示す。


「何ですか?」


 雄一が彼女の髪を指差しているのをミナがきづき、自分の髪の毛先を取ると桃色に染まっているのを見出す。ミナが自分自身の特徴に自覚があるのでその色の意味は彼女はわかった。


 誤魔化すようにミナが両手を振り、言葉を出してみた。


「……えっと、その、あの……」


 でも恥ずかしさのせいで言葉を失う。


「明かすぎ~」


「ミナだな」


 ミレイと雄一は交互に目が合ってふたりは微笑んだ。その二人の微笑みが「可愛い」という言葉を含むように見えた。ミレイと雄一が仲悪くなくても仲が良くもなく、ミナの可愛さについてふたりはぴったりと分かり合う。


「はい、ミナちゃん、何があったの?」


「……あの、実は……ミレイちゃん」


「うん? なに~」


 ミナが照れそうな表情をしながらミレイの名前を言い、言葉を探すように仕草で目を泳がせた。やっと、目を瞑りつつ口を開く。


「ミレイちゃんの手を取っていいですか」


「……ふふふ、いいよ」


 そう聞くミナにミレイが愛しい視線で見て口角を上げ手を伸ばす。ミナが拗ねながら文句を言う。


「笑わないでください」


「……だってミナちゃんって可愛すぎて……はい!」


 ミレイがミナの体を近づけて、彼女を強く抱きしめながらミナの顔を寄せて頬と頬を擦り合わせる。雄一がそれを見ると笑みを浮かべる。


「姉妹みたいなんだぞ、ふたりとも」


「そうね、精霊同士だし」


 そう言って、ミレイとミナが同時に笑った。


 その後、三人は広場に帰った。そこから、宿屋に入って部屋を借りる。払ったのはミレイだった。


 ミレイの宿屋より上品な宿屋であり、静かな空気でもあった。


 三人は与えられた部屋へ向かい、一二号室だと雄一が見ると皮肉げな笑顔をしてゆっくりとドアを開く。中には誰もいなかった。その部屋のベッドの上で一人で泣いている女子の姿がいなくてということは雄一を少しだけ安心させた。


 三人がお風呂に入って―ミナは最初、それにミレイ、雄一は最後で。雄一がお風呂から出て、こっち世界に着てきた服をミナがくれたばかり寝間着に着替えた後、部屋に入りベッドに横になる。その部屋にはベッド二床があったのでミナとミレイは一緒に寝て雄一はもう一つのベッドで寝る。


「いいな、ここ」


「そうですね」


 頭の下に手枕をして雄一はそう言い、ミナが賛成する。愉快そうなミレイも口を開く。


「お風呂よかったし」


 疲れた日の夜に、三人が居心地よくてリラックスの時間を楽しんでいる。


 しかし、ミナが「おやすみなさい」と言おうとした瞬間、二回に誰かにドアをノックされた。 


「あれ?」


 ミレイが驚きを隠すことなくそう言ってドアの方向へ視線をやる。自然に立ち上がるとミナも起き上がって雄一を話しかける。


「川宮さん! 私の後ろにいてください。偽精霊かもしれません」


「偽精霊だったらノックしないと思うよ、ミナちゃん」


「ここに働く人として装うっておかしくない」


 雄一がそう言うともう一回ドアをノックされた。ミレイが真剣そうな表情でこっくりと頷く。


「そうかもね……とにかく、あたしはドアを開くよ。ミナの後ろにいてて」


 そう言うが早いか、ノブを握ってドアを開く。そこに表れたのは雄一はあの二一号室に泣いていた女子だった。つまり、ミツキであった。


「追いかけているわね、ミレイちゃん」


「はは~ ミツキちゃん……偶然だよね」


 その誤魔化し方はいかにもあやしくて、ミレイは嘘をついているのを分かりやすかった。ミツキが部屋に踏み込み、その部屋でミレイはたったひとりにいたと思ったミツキが冷静なままでべットのとなりで立っているミナと目を合わせる。ミナの後ろに立っている雄一に視線をやると、違和感を覚えたようにミツキ一歩を下がりながら嫌そうな顔をした。ミナが好奇心旺盛な表情をしていたけれど水色ともかく、微かな灰色がミナの髪に表れる。しかし、誰も、その色にミナの髪が染まるのが気がつかなかった。

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