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第40話 チート魔族参戦

 ――ぎ、ぎもぢ悪い。


 全身肉体強化しているおかげで、高速で移動できる。

 だから割と戦えるのだが、周りがひどいことになっていく。


 地面は普通に誰かの腕とか、頭とか転がっているし、死体はもううじゃうじゃ。

 それに一面真っ赤で、巨大な水たまりのごとく血が広がっている。


 手から腕にかけては肉を断つ感触が、常に刀から流れてくる。


 人を殺すことに初めはためらい、申し訳ないとも怖いとも思ったが、殺される前に殺すだけだし、君たちの宿命だと無理やり割り切った。

 フォルミドのときは殺せなかったのになぁ。

 まああのときは心の準備ができていなかったから止めただけで、今はできているので何とか殺せる。


 それよりも感触とか光景がなぁ。

 グロい、ただただグロい。

 夢に出てきたら即起床もんなんだよなぁ。


 ――これは作業。


 そんなサイコぎみな暗示を自分にかけて、侵入者を斬っていく。

 それでも斬ったときの感触で鳥肌が立つのは、いつまでたっても慣れず治ることはなかった。



「ヒャッハー!!」


 なんとなく叫んでみる。

 悪役の真似をすれば恐怖心が飛ぶかなと思ったからだ。

 ほんとは人を殺し続ける自分が悪役の様で、内心自分に苦笑しつつそれっぽくやってみただけなのだが。


「ぎゃぁあああああ!!」


 ――あかん。

 無理無理。


 効果は対してなかった。

 相手に叫ばれるとどうしても良心が先に出てしまう。

 あと恐怖心は抜けない。


 殺人に対して思うところがある分人間として正しいのだろうが、正直今はあると困る。

 戦闘中に余計な思想が脳裏をよぎるだけで、死にそうになる。


 早く終わらせてラミリアたちを生き返らせて寝たい。

 つい前日とかまでは平和だったのに、気付いたら戦争かよ。

 展開速くて心の準備ができてなかった。


 でもそんな考えはあるだけで死にそうなので、脳の奥へと追いやり斬り続ける。



 だんだん本気で戦いにきてる相手を、あっという間に無心で斬り殺してしまうのは申し訳ないことなのではないかと思ってきた。

 なんというか、瞬殺してしまうのが忍びないというか……。


 いやでもやらないとやられるわけだから、結局のところ容赦なく殺していくのだが。


「うわぁぁあああ!!」


 突然俺の体が後方に吹き飛んだ。

 そしてそのままフィリムが懸命に手入れをしていた花壇に突っ込んだ。


 ――何があったんだ?


 幸いけがはしていないようで俺は混乱しつつ起き上がり、辺りを見渡す。


 しかし俺を吹き飛ばせるような兵器や人は見当たらない。

 ただの不審者たちが暴れているだけで、特におかしなものや人はないように見える。


 ではなぜ俺は吹き飛ばされたのだろうか。

 魔法が使えないこの状況でいったい誰が?

 しかも周りに兵たちがいたのに、いったいどうやってそんなにピンポイントで俺を吹っ飛ばしたのか。


 俺は迫りつつある不審者どもから一度距離を取って、目を凝らして辺りを観察する。


「あいつは!?」


 全員が黒ローブでわかりにくかったが、俺を睨んでいる子供がいた。

 その子供は俺と目が合うと、ニヤッと微笑んでから兵たちの間に入っていき見えなくなる。


「クソ、やっぱいたか」


 あいつのせいかと怒りを感じるものの、その怒りの前に疑問が立ちはだかった。


「あいつは魔法を使ったのか?」


 あの風の魔法はあいつが使ったのか?

 この結界の中で?


 あいつが使ったのなら、ピンポイントで俺が飛ばされたのも、おかしな物や人がいないことにも頷ける。

 ただそうすると、結界が機能していないということになる。


 俺は試しに魔法を使おうとしてみる。

 結果は発動せず、沈黙。

 ということは、結界は機能している。


 ――どういうことだ?


「ミナト様!」


 声のした方を見ると、不審者の集団の中からバハリスさんが出てきて、不安そうな顔でこちらに向かってきた。


「大丈夫でございますか?」


「大丈夫だけど、さっきの魔法は?」


 少しも息を荒げていないバハリスさんにそう伝える。


「この結界は術者以外が放つ魔法を阻止するという特殊なもので、術者だけは魔法を行使できるようです。魔法はこの結界の構築者が放ったものでしょう」


「そういうことか、なら犬車を吹き飛ばした子供だ」


「わかりました、私が相手をしてきます」


 そう言ってバハリスさんは先程俺の見ていた方向へと走っていった。


「それじゃあ俺は雑魚を掃除しますか」


 そう呟いて、日本ならまず近づかないような武装した不審者集団の中に飛び込んで、切り刻んでいくのだった。

 辺りには、先程よりも心なしか量の増えた血とどこかの肉片がうじゃうじゃあり、それに加わって新しく魔法による強烈な風と音が飛び交い始めた。




「醜い奴らだな」


「ええ、掃除してやりましょう」


 俺の視界にはまず入らないような、空中に彼らはいた。


 初めに喋った方は男で真っ黒の髪を持ち目が赤く、赤と黒の執事服のような装いをしている。

 後に喋った方は女でピンクと紫が混ざったような薄い色の髪を持ち、耳が長く翼と2つの角があり、少し露出の多い装いをしている。


 女はその手に持った槍のような武器を黒い不審者集団に向けた。

 そして次の瞬間には見事なエクスプロージョンが完成していた。


 結界はその女の放った魔法により消滅し、黒ローブの不審者たちの半分が消し飛んだ。


「おい、黒ローブの人間以外に手を出すな」


 男はひどく冷たい顔で淡々と告げる。

 女の方は当然といったように答える。


「あたりまえでしょう。魔王様のご命令に従わないわけがないわ」


 彼らはゆっくりと高度を下げ辺りを見渡し、黒ローブでない人間を探す。


「2人いたぞ」


 男は静かに指を向けて示す。

 女は「ええ」と頷いてから、俺とバハリスさんを除いた混乱している黒ローブの不審者を、槍から出す光線のようなもので殺していく。



「な、なにが起きたんだ?」


 俺も黒ローブの不審者と同様、混乱していた。


 いきなり結界が割れるほどの魔法を撃たれて、一気に不審者たちが死んだ。

 しかも今は光線によって不審者たちが為す術なく殺されていく。


 光線は上から放たれているようなので、俺はその元を見上げた。


「なんか、すごい奴らがいるなぁ」


 感心していると、近くの不審者が死んだ。


 ――感心している場合じゃねえ。

 俺も殺されかなない。屋敷に逃げた方がいいのでは。


 俺はバハリスさんも連れて行こうとバハリスさんを探す。


 ばったばった死んでいくので見晴らしがよくなり、すぐにバハリスさんは見つかった。

 しかし子供は自信の真上に魔法障壁のようなものを張り、バハリスさんと睨み合っている。


 幸い今は争い合ってはいないが、上も目の前の敵も警戒するという難しい状態に陥っているので、無理もない。


 自軍が壊滅的損害を与えられているにも関わらず、上に攻撃すればバハリスさんにやられる。そんな子供。

 上からの攻撃が来たらすぐに避けなくてはならないバハリスさん。


 どちらも神経が擦り切れそうだろう。


 すると、子供に光線が降って来た。

 しかし当の彼は魔法障壁に頼って動くことはない。

 むしろこのタイミングで、バハリスさんに攻撃しようというくらいである。


 でも結果は子供の死亡だった。

 障壁をなんの苦労もなく、すり抜けるかのように貫通して、脳天から子供を貫いたのだ。

 そして彼は前から地面に倒れ伏した。


「なっ……!」


 俺が目を見開いてそう漏らすと、バハリスさんも少しばかり驚いたようでその遺体を見ている。


 しかしバハリスさんもやられる可能性があるので、俺はすぐに彼に向って走り出す。


「バハリスさん、気休めですけど屋敷にいましょう」


 俺はバハリスさんが頷く間もなく屋敷の中に連れて行く。


「上のバケモンはいったい何なんだ」


 屋敷内に入り俺が1人でつぶやくように言うと、バハリスさんは口を開いた。


「彼らは、魔族です」


 俺は驚くような顔をしつつ別にそこまで驚くことじゃないな、と顔をもとに戻した。

 だって見りゃわかるもん。

 あいつらヤバいやつらじゃん。


 そうして気付けばいつの間にか、黒ローブの人間はみんな倒れ伏していた。

 俺は魔族とやらに殺されずに済んだことに胸を撫でおろし、1つ息をついた。


 ――結局、私兵同然とか言ってた軍とやらは来なかったな。

 まあ来ても無駄足になるだけだな。来てても今から来ても。



 結界が消えたので、俺は早急にラミリアたちを生き返らせることにした。

 早くしないと上の魔族たちに、生き返らせる前に殺されてしまうかもしれない。


 3階のラミリアの部屋に横たわる3人の遺体を見てから、しゃがんで目を閉じて祈る。


 ――俺のせいで申し訳ないけど、生き返ってくれ! お願いだっ!


 そう強く願うといつの間にか彼女らの姿はなくなっており、服だけが静かに横たわっていた。


 そしてその光景を見た俺はすっと意識を手放した。


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