第35話 始まりの街
昨日投稿できなくて大っ変申し訳ありませんでした!!
用事があり投稿する時間が取れませんでした。
本当に申し訳ありません。
「犬車を用意してくれ。今すぐに屋敷に帰るぞ」
「どうされたのですか? 今は授業時間のはずでは?」
俺は屋敷に入るやいなやバハリスさんに犬車の用意を依頼する。
しかしバハリスさんも含め、他のメイドさんたちは俺の突然の訪問に混乱している。
そのうえ犬車の用意を頼まれるので、何事かと慌てている。
でも手を止めることなく犬車の用意をこなしているところは、さすがと言える。
「屋敷で何か起こるかもしれないんだよ」
俺は落ち着かないまま、バハリスさんに説明を始める。
「起こる、とは?」
急に深刻そうな顔をしてバハリスさんは俺に尋ねた。
「ラミリアの存在がばれたかもしれない。しかも今は屋敷の人は少ないし……」
そこまで言ってバハリスさんはより深刻な面持ちになって言った。
「まさか……襲撃?」
「起こるかもしれない。いや起きているかもしれない」
バハリスさんはそこで、メイドたちに準備を急ぐように指示を出した。
それと、武器を持っていくようにとも。
「メイドさんも行かせるのか?」
「そうです。もともと彼女たちはホールメス家の護衛と屋敷の管理、屋敷守が任務ですので、十分戦えます。私が直々に稽古をしましたので」
自信ありげにバハリスさんはそう語る。
「でもなんでそんなに必要なんだ?」
「それは相手が大人数の可能性があるからです。 天使教の制裁部は運隊と何ら変わらない戦力を持っておりますので」
ラミリアと言っただけで、 天使教とやらと分かったようだ。
話が早くて助かる。
「さっき学校で、天使教に使われていた人が情報を渡してくれたんだ。死んでしまったが……」
寂寥に顔が沈むがそれで話が終わることはない。
「……ミナトさんはフォルミドを覚えていますか? 彼女は天使教の制裁部所属です」
バハリスさんは、はっとした様子で言った。
「そうだったのか……」
確かにそれならしっくりくる。
つまりは、フォルミドが俺を殺し損ねたからミラが送られてきた。
そして俺を盗聴していたら、ラミリアが生きていることに気付いたってわけか。
それならちょうどノークラスの出張中の今を狙うのが、ベストなのかもしれない。
それならなぜすぐに俺を殺さなかったのだろうか?
まあ今はそんなことよりもホールメス家の屋敷に戻らなくては。
「ミナト様、バハリス様、犬車のご用意ができました」
メイドの1人が俺たちに伝えた。
「それじゃあ早く行こう」
俺は足早に屋敷を出て、犬車に乗り込んだのだった。
俺たちと他のメイドさんを乗せた3台の犬車は、 長い道のりを神経をすり減らしながら進み、やっと始まりの街の手前まで来た。
お昼だというのに、辺りは分厚い雲に日光を遮られている。
そのどんよりとした空気と暗さに、よからぬフラグを立てるなと切に願う。
しかし俺のそんな不安など気にせずに、犬車はどんどん街へ近づいていく。
街に近づくにつれ、俺たちは不可解な光景を目の当たりにした。
「人がいない……」
窓から街の大通りを見ながら俺はそう漏らした。
そろそろ街の中に入る。だから鮮明に中の様子がわかる。
なのに人が誰1人として見当たらないのだ。
――おかしい。
いつもならこの時間、そこそこ賑わっているはずなのに……。
多分誰もがそう思っただろう。
それでも街に入って行くしかない。
3台の犬車は辺りを警戒しながら、ゆっくりと進んで行く。
「そこの者、道を開けてもらってもいいだろうか?」
俺とバハリスさんの乗る犬車の2つ前――つまり一行の先頭の犬車から声が発せられた。
――人がいたのか!?
俺がふとそう思うと、進行方向から男の声が飛んできた。
「先に立ってたのは僕の方なんだけど……、それは自分勝手な依頼なのではないのかな?」
イライラしているよう口調だが、まだ幼い声に聞こえる。
すると何か大きなものが吹き飛ばされたような、轟音が耳を通り抜けた。
前に犬車がいるせいで何が起きているかはわからない。
けれど前の犬車はその場で固まった。
「ドシャッ!!」
大きなものが地面に落ちる音だろうか。近くから聞こえた。
俺は音のする方を窓からのぞいた。実際は少し横を向いたぐらいだ。
だが先程その視界の先にあった店は見えなかった。
そこには犬車が丸ごとつぶれていたからだ。
箱は地面に接触したときの衝撃で、跡形もなくつぶれている。
そしてあちこちに血が飛び散っている。
犬はもう原型をとどめていないし、つぶれた箱の中からは血と臓物が止まることなく流れ続けている。
潰れた箱の隙間から流れ出るその液体たちは、地面で赤い絨毯と化している。
「ぅうおおええええ!!」
一瞬にして人が何人も死んだ。
跡形もなく、為す術もなく……。
一瞬時が止まるが、どこかのメイドさんの叫び声があたりに響き渡る。
「戦闘態勢!!」
そう響くと同時、いやその前にメイドさんたちは犬車から飛び降りている。
そして辺りへ飛び、各々の武器を前方へ向けている。
でもバハリスさんは犬車から降りず、深刻そうな顔をして俺を見ている。
「まさか、待ち伏せされているとは……。私たちの行動も把握済みなのでしょうか。いえ、今は早く屋敷へ向かうのが先でしょう」
さすがに判断が速い。
俺はバハリスさんのその提案に賛同し、犬車から飛び降りる。
外に出ると否応なく側のつぶれたものが目に入ってしまい胸が締め付けられるが、足を止めるわけにはいかない。
俺はバハリスさんについていき、犬車の後ろへ回る。
あたりで戦闘態勢を取っているメイドさんたちには、いまだに動きはない。
犬車の後ろから前方を覗いてみると、1人の子供が立っていた。
服装は大きめの
黒のローブで、フォルミドのつけていたような赤いマークが入っている。
――あいつがやったのか!
怒りを顔に出して箱の陰からその子供を睨んでいると、バハリスさんの手が俺の肩に優しく触れた。
「今はこんな足止めに引っかかっている時間はありません。裏通りを通って町を抜け、屋敷へ走っていきましょう」
「わかった……」
俺は首を引っ込めてから、首を縦に振ってバハリスさんを見つめる。
「ミナトだったよな! 出てきてくれたら、今の人に対する失礼な行為を許してやってもいいぞ!」
その子供は大きな声で煽るように叫ぶ
「……あいつ……!」
俺は居場所をばれてはいけないので、小声でそう漏らす。
あいつは今怒りを晴らしただろう。最低な方法で。
それなのに「許してやる」だと。
こっちが許しを与える側だろう。
まあ許しなんて与える気はさらさらないが。
俺が怒りを抑えながら黙っていると、子供はよりイライラした口調で叫んだ。
「じゃあ手段は選べないなあ!」
その途端辺りの家の屋根から、赤い印のついた黒いローブの人間がたくさん出てきた。
その手にはボウガンや剣など様々な武器が握られている。
すると戦闘態勢のメイドさんたちはすぐに物陰に隠れた。
そのメイドさんのあとを追うように矢が地面に突き刺さる。
「「殺せ!!」」
そんな不穏な叫び声があたりから飛んでくる。
それとともに矢の空気を切る音や、金属同士のぶつかる音、肉体が裂ける音があたりに響きだした。
もはや戦争なその場から俺とバハリスさんは一気に抜け出し、裏通りに駆けこむ。
申し訳ないし、どうか無事でと思うも、今ここで止まるとバレて殺されてしまうので後戻りはできない。
「ごめんな……、どうか死ぬなよ」
俺とバハリスさんは屋敷を目指し、肉体強化した足で裏路地を走り抜けるのだった。
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