風呂付き幽霊付き物件
忙しく更新。
「……っと、言う訳で、皆様のご意見を伺おう……と、そう思った次第であります……いかがなものでしょうか?」
やや畏縮しつつ、ハジメはクァイナ、マニトバ、そしてモルフィスと少女(まだ名前を教えてもらっていない)を前にして件の物件の書類を提示しながら返答を待った。
「……ふぅ~ん……へ、部屋数が十二っ!?二階建てで風呂が各階に一つづつ!?おまけに一階に二十人が入れる応接間ぁ!?何なのよこのバカ広さと豪華さは……」
書類に目を通していたクァイナは、その破格の条件に目を見張ったが、すぐに冷静さを取り戻しハジメの表情を観察し、何となく納得し溜め息を吐く。
「はぁ……ま、おおかた他の物件は無くて、しかも値段は破格な代わりに一つ位は《今まで残るだけの理由》があるんでしょ?幽霊?一家惨殺?……まさか、纏めて全部……とか?」
「お察しの通り……幽霊付き物件!霊媒師は無言で逃げ出し勇猛な連中も絶叫して立ち去る激しさだとか!!」
何故か興奮気味に語るハジメと、明らかに温度差のあるクァイナの対比に苦笑するマニトバ、そしてモルフィスはと言えば、少女と打ち解けようとして様々に手を尽くしている。
「でも、それが本当の話なんでしたら、クエストになっていたりしませんか?その屋敷の幽霊騒動……」
マニトバの何気無い一言に、あら?と言わんばかりのクァイナは頷きながら、
「うんうん、有り得そうよね!ハジメ、そんな話は家主さんの所で聞かなかったの?」
「えっ!?……いや、朝早かったし、その……酔い醒ましで歩き回ってる最中に見つけたお店だったし……その、済みません……」
何故か謝るハジメだったが、クァイナの頭の中はクエストだった際の成功報酬で家賃がどれだけ浮かせられるか等で一杯だった。
「……そうなんだ!なるほどねぇ……ん?クァイナちゃん、どしたの?ソワソワして落ちつかなげじゃない?デートにでも行くの?」
「そーそー新居の前にまず新しい服を買って来てそれを着て……って、違うわよッ!!……ところでモルフィスさん、さっきからその子と何話してたの?」
褐色の髪を丸く二つに纏めた娘は、昨夜の騒動以来、モルフィスとベッタリくっついてクァイナはおろかマニトバともまだ打ち解けていなかった。
しかし、元々が同年代に見えなくもない(背丈は確実に彼女と同じ位だ)二人が並んで座りながら話をする様子は、異種族同士だという以外は姉妹か幼馴染みのように見えなくもないのだが。
「うん?この子、魔族の出身だったらしいんだけど、記憶喪失らしくて細かいことは覚えてないんだってさ!」
ハッキリと言い切られてアタフタする娘だったが、周囲の反応は、
ハジメ→「昨夜は色々と驚かせてしまって……済みません……」何故か謝る。
クァイナ→「魔族?ふーん、そうなんだぁ」特に気にせず。
マニトバ→「凄いです!私本物の魔族さんに会ったことないので、握手しても構いませんか!?……あ、柔らかいなぁ♪」何故かホッコリ。
「なぁ?気にすることないって判っただろ?昨日の夜は特別だったってさ!」
マニトバに手を掴まれたままで困惑する娘に、モルフィスは安心するように笑いかけながらウィンクする。
「ところで、貴女は何というお名前なんですか?私はマニトバ、貴女位の双子の妹がいるから、凄く親近感があるのよ♪是非とも教えていただきたいわ!」
マニトバはそう言いながらそっと手を離すと、安心させる為に肘の辺りをポンポンと触ってから、真っ直ぐ彼女の眼を見て微笑みかける。
「……わ、私はホルヘ……それ以外はよく覚えてないの……ごめんなさ……ッ!?」
ホルヘの言葉は、マニトバの抱擁により遮られる。彼女はホルヘを胸元にそっと抱き締めると、優しく語りかける。
「……ホルヘさん、私達は貴女のこと、もう少しだけ知りたいの……だから、もう怖がらなくてもいいから……ね?」
【……おかあさんキャラだなぁ……マニトバさん。胸的にも……】
【……おかあさんキャラよねぇ……抱擁力の違い……なのかな?】
二人して微妙に食い違う見解ではあるが、マニトバ→おかあさんキャラ、と決定していた。
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「……あ、あった。やっぱりあの家主さん、何回かクエスト依頼してたのね……」
「……で、何回も失敗して……その都度報酬額も割り増しになってるとか……何だかやるせない話だなぁ……」
クァイナのハジメの二人は昼前に職業斡旋所を訪れて、件の物件について依頼が出ているか確認しに来たのだが、拍子抜けする程簡単に見つかった。
遡って調べてみると、最初は【広い空家の調査と警備】程度の軽い内容だったが、次第に【複数名から受付中】と条件が変化し、【勇気ある挑戦者求む】だの【短時間で高収入可能】だのと詳細説明抜きの怪しい方向に流れ、最後は【幽霊と通じ合える稀有な方のみ希望】と、担当の役の神がキレたのか簡略な説明だけだった。
ちなみに報酬額は金貨十八枚と、平均的な月収並みだったがハジメはともかく、お金には細かいクァイナも報酬は余り気にしていなかった。ただ、問題を解決して優良物件に住めたらいいかな?……程度の気分だった。
こうしてハジメとクァイナは、正式に【不動産物件の問題点を解決する】を受託した。
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雨が降り続く昼下がり、表の通りから少しだけ奥まった区画にひっそりと建つ、その屋敷の庭に生い茂る木々の葉先にも雫が揺れていた。
屋敷の二階、表側に並ぶ窓は全てカーテンが閉まっているのだが、その一つだけは右側だけが開いていた。その開いた方から外を窺うように、切れ長で長い睫毛が揺れる一対の眼だけが浮かび上がるように部屋の奥から外の様子をじっ、と見ていた。
…………あら?……久しぶりのお客さんかしら?
フフフ……それじゃ、キチンとおもてなししなくちゃね……♪
バシャバシャと水を撥ね飛ばしながら全速力で玄関まで走ってくる一組の男女を見つけた『それ』は、自らの存在理由を確認するように彼らを眺めながら、そう呟いた。
さぁて、次はいつ更新出来るかは未定です。




