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俺の妹が異世界で魔法少女やってたんだが  作者: ソウブ
一章 Magical Girl Guardian
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エピローグ



 ――――数日後。

 俺は、咲実に連れられてある場所へとやって来た。


「お兄ちゃん、ごめんね。あの時は、もっと心配させることになっちゃうと思ったんだ」

「もう、終わったことさ。今さらごたごたと言いはしないって」

「うん……ありがと」


 この数日で、色々なことが分かった。


 まず、俺がどういう存在なのか。

 分かったというより、決まったという方が正しいけれど。

 あの戦いを経て、レノラさんに報告して、協議ともいえない協議がされた後、決定された。

 

 正式に付けられた名前は、"魔法使い"。

 それが、今の俺みたいだ。


 魔法少女しか使えない魔法を使う男。

 さらにマスコットとの契約もせず、ステッキすら用いない。

 それは今までにない異例の事態。

 男だから魔法少女なのもおかしい。

 魔法少年と言える年でもない。

 魔法青年とは言えるだろうが、俺が提案したそれは、咲実やレノラさんや、果てはメリルさんにまで駄目出しされた。

 曰く、なんか違う、曰く、かっこわるい、と。

 そんな訳で、そのまま、現代世界では何度も物語の中で聞いたことがある、魔法を使う者。

 "魔法使い"と、決定した。



 魔法少女省庁国の敷地内、裏庭。

 俺が、最初にこの世界に来た日に行こうとして、咲実に止められた場所。

 その場所に、足を踏み入れる。


 視界に、広くスペースが取られた場を捉える。

 その、広がった光景。


 石。

 ではない。白い石、でもない。

 墓石。

 そこに広がっていたのは、大量の墓石だった。

 ここは、墓場だ。


「みんな、魔法少女なんだよ」


 咲実が言う、この墓が、全部魔法少女の墓。

 墓の数は、多い。

 数十、もしかしたら、三桁まで行っているかもしれない。

 魔法少女は、少ないと聞いた。

 それなのに、この数。

 それとも、死ぬから少ないのか。

 それは、知らないが。


 咲実が、もっと心配させるといった理由が分かった。

 この場を、あの時に見せられていたら、俺はなにがなんでも咲実を現代世界に連れ戻して、異世界には二度と行かせないようにしていただろう。

 咲実には転移魔法があるから、あの世界に縛り付けることは実際できなかっただろうけれど、無理でもやっていただろう。

 

 もう一つ、分かったことを思い出す。

 野良マスコットとだけ、咲実に以前説明された、敷地内を浮いていたマスコット。

 あれらは、死んでしまった魔法少女のパートナーだったマスコットらしい。

 死んでしまった魔法少女の、残った片割れ。

 これを詳しく説明しなかったのも、墓場を見せたくなかったのと同じ理由だろう。

 魔法少女の死を意識させたくなかった、咲実の死を意識させて止められたくなかった、ということか。

 

「お兄ちゃん、こっちだよ」

 咲実に呼ばれ、そちらの方へ行く。

「ここが、アリアちゃんたちか」

「うん……」


 四人の墓石が、そこに並んでいる。

 仲の良かった四人が、横並びに眠っている。

 俺は、しばらくその墓石たちを見つめた。


 咲実はあの子たちと友達になりたいと言っていた。俺に料理を作ってくれるとあの子たちは言ってくれた。

 それらは、果たされることはなかった。

 みんな、戦いの中で死んでしまった。


「なあ、咲実」

「なに、お兄ちゃん」

 今日は、天気がいい。

 気持ちのいい風が、俺たちの体を撫でて通り過ぎていく。

「ゲシュペンストは強かった。強大な化け物だった。こんなに、殺されている」

「あそこまで強かったのは初めてだけどね。今までは、魔法少女たちで協力すれば、安全に倒せることも多かった」

「それでも、死ぬときは死んでいたんだろう?」

 だからこんなに墓石が並んでいる。

「そうだね……」

 咲実は静かにそう言った。 


「それなのに、そんな戦いの最中にあると解っていて、みんな、明るかった。笑っていた。怖く、なかったのか」

「怖かったと思うよ。すごく、怖かったはずだよ。それでも戦うことをやめたくなかった子が、守りたかった子だけが、ここに残っているんだよ」

 咲実も、そうなのだろう。

 気高く強い、精神性も魔法少女足り得た女の子たちだけが、最前線で戦っている。

 本当は、強いだけじゃない、まだ幼さの残る少女でもあるにも拘らず。 


 俺たちは、どちらからともなく手を合わせ、瞑目した。

 魔法少女たちへ、黙祷を捧げる。 

 怖くても前を向いて戦った、強い女の子たちに。


「あ……」

 気づく。

 あの子たちの態度。

 俺への、接し方。


 きっと、あの子たちは愛に飢えていたのだろう。

 だから、俺に全力で甘えることのできる兄を求めた。

 いくら尊敬する相手の兄でも、初対面の俺に甘えてきたのが物語っている。


 怖くても、死にたくなくても、戦うことをやめはしなかった魔法少女たち。それでも溜め込んでしまったものが溢れた。心が救いを求めた。そして俺を頼ってくれた。

 それが、俺へ過剰に甘えてきた態度の原因だろう。

 今となってはそんな推測しかできないが、きっと間違っていないはずだ。


 俺は君らを、ちゃんと甘えさせてやれただろうか。もっともっと、甘えさせてやるべきだったのだろうか。

 彼女たちの救いに成れていたのなら、それはどれだけ光栄なことだろうか。

 今さら考えても仕方がないことだが。


 ならば、せめて、何度でもこの場に来よう。

 ここにはいないかもしれないけれど、あの子たちが眠る場所であるここに、何度でも顔を出そう。

 俺は、いつまでだって、甘えてもらっても構わないのだから。

 俺だって、かわいい女の子たちに甘えてもらえて、仲良くしてもらえて、嬉しかったのだから。



 ――今一度決意する。

 信念を、定める。

 この世界でやりたいことが、分かったから。


 魔法少女たちの思いを背負って、これからも、誰かを守っていく。護れる力が在るのだから。

 俺は、人を助けられる人間に成る。

 それは、元からの考え、でもそれもあるけれど。

 それと。 


 一番の、俺の行動原理。

 唯一最上の、信念。


 俺は昔から魔法少女が好きだ。

 残酷な現実を知っても、魔法少女が好きだ。

 彼女たちに、絶望と恐怖に引き攣った顔などさせたくない。

 勇ましく気高い表情を消させたくない。

 俺は君たちの思いを背負いたい。持って行きたい。継ぎたい。

 だから、俺は君たちの想いを背負う。そして、魔法少女を守っていく。


 俺は、魔法少女の味方だ。

 俺は、魔法少女を守る。

 それが、最優先のやりたいことだ。


 俺は、魔法使い。

 魔法少女を守る、魔法使いだ。



 黙祷が終わると、俺は魔法少女たちの墓場に背を向ける。

 咲実が、横に並んだ。

「お兄ちゃん」

 手を握って来た。

 握り返す。


 二人並んで、歩き出す。

 その、去り際。

 後ろから、聞こえた気がした。


 ――ありがとう――


 振り返る。

 そこには、幾つもの墓石が並んでいるだけだ。 


「お兄ちゃん……?」

 咲実が、突然足を止めた俺を見て首を傾げる。


 今の、声は――。

 俺の、妄想だろうか。

 わからない。

 けれど、彼女たちが本当にそう言ってくれたのだとしたら。

 少しでも、救われてくれているといい。


 どうか、君たち魔法少女が、安らかにいられますように。




ここまで読んでくださりありがとうございます。これで一応ひとつの完結となります。二章は未定。

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