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幻の夏祭り  作者: 皐月 満
エピローグ
100/100

夏が巡りくる

ずっと、覚えている。


声、容姿、誕生日、血液型。好きな映画、本の名前、色に音楽まで。一片も欠かすことなく記憶している。もう、零波のいた記憶の方が、他の記憶よりずっと少なくなってしまったのに。


目を閉じれば、あの日音楽室から流れた零波のフルートが聞こえてくる。


濃い、よなあ。


どうしてこんなに濃いのだろう。夏の空の色のような色。甘いような、苦いような、酸っぱいような……なんとも形容しがたい味がする。


中学一年の夏は、嵐のように通り過ぎていった。でも、夏が巡りくるたび、あの夏と数々の日々を思い出す。不思議。


「実結、雨止んだぞ」


晃太の声が聞こえた。窓の外に目を向けると、濡れた窓ガラスの向こうに淡く虹が見えた。


「わぁ、虹だ」


呟くと、晃太が反応した。


「何してんだよ。洗濯物干すんじゃねえの」


「あ、そうだった」


私はおもむろに立ち上がって、なんとはなしに部屋を見回した。


ここにもまだ、零波の思い出の欠片が散らばっている。時計、朝三世に夜四世、色褪せかけた数枚の写真。


「早くしろよ」


晃太が急かす。そういうところは変わらないのだ。


「分かったよ、今行くから」


私はドアを開けた。閉じる前に振り返る。


写真の零波が見えた。


「虹だってさ、零波。梅雨が終わるね」


部屋の中に、光が差し込んだ。


「また夏が来るね」

非常に読みづらい中、最後まで読んでくださってありがとうございます。


近々、読みやすいように一章を一話にまとめたいと思います。

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