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Kissin' The Flames  作者: J.Doe
Fallin' The Flames
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Kneel Down Ye All Others 2

「アンタだって同じはずだ! アイツが、ソフィアが愛しくて、ソフィアを害する世界が憎くてたまらない! 誰にも従いたくなんてなかったのに、ソフィアにはこの身の全てを捧げてしまいたくてしょうがない!」


 太刀を構えて接近してくるクロードに、声を張り上げてレイアは斬撃を繰り出す。

 超高速で振動する刃は触れ合う度に弾き合い、散る火花は肌に熱を伝えるなり消えていく。言葉を紡ぐ毎に振り抜かれる刃は鋭い。

 命を削るような一合一合を重ね、誰も入り込めない世界を作り上げるように殺意の濃度を挙げていく。


「ソフィア様の母上を殺したあなたがそれを言うか!」

「そうだ! アイツの仇である私こそが、アイツのために何もかもを捧げなきゃならねえ!」


 高速で突き出された刃にレザージャケットの襟を抉り取られながらも、半身になる事で回避しつつ踏み込んだレイアはお返しとばかりに右肘を繰り出す。クロードはその打撃を左手で受け止め、体を捻るようにして乱暴にレイアを投げ飛ばす。

 同等の実力を持っているとはいえ、女である以上体格差で劣るレイアは固い岩の地面に投げ出されながらも、転がるようにしてクロードから距離を取った。


「だから全員殺した! このままファイアウォーカーが存在すれば戦争は一生終わらねえ、世界は今まで以上に取り返しのつかない事になっちまう! ファイアウォーカーは面白がって戦火を踏み荒らすだけで、戦火を消そうとは1度もしなかった! ソフィアすら利用しようとしたアイツらを、兄弟達を平気で殺したアイツらを生かしとく訳にはいかねえだろうが!」


 歯を剥いて怒鳴り声をあげたレイアは、ボディホルスターから銃を出し、躊躇いもなく引き金を引く。

 不適格の烙印に泣いて縋った義妹の頭が破裂し、追放を選んだ義弟の遺体を鳥がついばんでいた。

 関わってきた全ての人間を愛している訳ではないレイアでも、その光景は今でも覚えている。


 たとえファイアウォーカーが子供達を素直に解放したとしても、人殺しの術を教えられた子供が日常に戻れる訳がない。子供達にとっての日常はかつて共に居た家族であり、その家族と居られなくなったからファイアウォーカーに選ばれた。ファイアウォーカーにとっての施しは兵器の廃棄処分と何も変わらない。


 だからこそ、レイアはファイアウォーカーを終わらせなければならなかった。


 片田舎に住んでいただけの自分達が、どうして"充実した装備のテロリスト達"に襲われたのか、最強にして最高の傭兵であるクロードにどうして終わりの見えない護衛が許されたのか。

 最悪のファイアウォーカーという呼び名と、聡明で可憐な赤毛の少女が答えであればこそ、ファイアウォーカーは消え失せなければならなかった。

 情けとリスクを天秤に掛けて自分を見逃してくれた義弟を殺してでも。


「あなたの世界は狭すぎる!」

「当たりめえだ! 誰も彼も救ってやるには世界は広すぎるんだよ!」


 クロードは腰につけた鞘を外して弾丸を横殴りにし、それを見越していたレイアは一気に距離を詰める。

 "Sheep Tumor"がなければ出来ない芸当であるというのに、2人は驚愕する事もなく、斬撃と銃撃をやめようとはしない。


 2人とも理解しているのだ。


 ここで退いてしまえば、ソフィアを、誰よりも愛しい少女を手中に収める事はもう出来ないのだと。


「もう戦うしかねえんだよ! メイは理不尽に犯されかけて、ジョンは守られるべき親に見捨てられて、ソフィアは強くなるしかなかった! 誰も彼もが敵なら戦うしかねえんだよ!」


 レイアは弾切れのワルサーPPKを持った手でパンチを繰り出すが、合金製の鞘で受け止められてしまう。尋常ではない痛みを右手に感じながら、レイアはお返しとばかりにリバーブロウを叩き込んだ。


 だから殺し続けた。自分達を殺そうとするファイアウォーカーを。

 だから奪い続けた。戦う為の力を、守る為の力を。

 だから糾弾(Blame)を続けた。弱き者達を踏みにじる強者の過ちを、ファイアウォーカーという存在の愚かさを。


 何もかもを失った過去を、ただの悲劇だと忘却に沈める事がレイアには出来なかったのだから。


「それでも、孤高を選ばされたソフィア様を利用していい理由にはなりません!」

「ソフィアには穏やかな世界が必要で、その世界にはソフィアが必要だ! 絶対的な存在が、誰もが跪くしかない唯一の存在が!」

「それが勝手だと言ってるんです! ソフィア様はそんな事をお望みにはなられませんでした!」


 自分を蹴り飛ばす事で距離を取るレイアに、クロードはすっかり歪んでしまった鞘を投擲する。レイアは弾丸と見間違う速度で飛来する鞘を太刀の刃で受け流し、クロードの懐へと踏み込み、ワルサーPPKを握ったままの右手を乱暴に振りぬく。

 爪をモチーフにしたような指輪の鋭利な突起がクロードの白磁のような肌を切り裂いた。


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