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Kissin' The Flames  作者: J.Doe
Callin' The Flames
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Who Ignited Flames 5

 テーブル上で散らばるグラスの破片を眺めながら、明日香は立ち上がることすら出来ずにいた。


 ソフィア・ストロムブラード。その名前はテレビをすっかり観なくなってしまった明日香でも知っている名前だった。

 業界最大手である製薬会社ストロムブラードの社長令嬢にして、未知のナノマシンを体に宿すミスティーク。

 そんなソフィアの言葉がフラッシュバックしたのか、明日香は制服のスカートを思わず握りしめてしまう。


 真に迫ったソフィアの言葉に明日香は言い返す事も出来なかった。そんな後悔とたとえようのない不快感が明日香の胸中で暴れ狂っているのだ。

 確かにあの時の自分には何も出来なかった。隆久の捜索願が受理されなかった馬鹿げた言い訳に失望しつつも、その馬鹿げた言い訳こそが事実なのだと次第に理解させられていく。


 だからこそ、明日香は縋りついてでもあの執事と話をしなければならなかったのだ。

 スウェーデン人であるソフィアがどうして日本に居るのかは知らないが、スウェーデンに帰国されてしまえば、明日香には話しに行く事さえ出来なくなってしまうのだから。


 でもどうすればいい、と明日香は考えを巡らせる。


 先ほどの態度を考えれば、ソフィアは本当に兄との会話を許しはしない。そんな事は明日香も百も承知だが、それでも衝動が強く訴えるのだ。


 きっと、これが本当に最後のチャンスなのだと。


 その時、ポケットにしまいこんでいた携帯電話がバイブレーションで着信を告げる。

 班での自由行動をなし崩し的に抜けてきた明日香は、班員達からの連絡だろうとあたりをつける。決して友達が多いとは言えない明日香ではあるが、流石に旅先での単独行動を心配されないほどではない。


 しかしポケットから取り出した携帯電話のディスプレイに表示されていた番号は、事前に交換した関係者の番号ではなかった。

 だというのに、明日香は導かれるように通話を受けて携帯電話を耳に当てる。

 普段の明日香であれば、自分はどうかしてしまったと思っていただろう。

 それでも、電話の向こうから告げられた誘いは、あまりにも蠱惑的なものだった。


『君の兄を取り戻したくはないかい?』


 電話向こうのつかみ所のない声、許可なく開かれた扉から顔を出すスーツ姿の金髪の男。

 自分はどうかしてしまったと思いながらも、明日香は自然と頷いていた。

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