非日常な日常2
さてさて、初バトルシーンです。
楽しんで頂けたら幸いです。
「それじゃ、…いくよ。カウント。5」
いつも通りぼくがカウントダウンをする。
「4」
いつも通りユマと視線を交わし、軽く笑い合う。
「3」
いつも通りエリと視線を交わし、真剣な顔で頷き合う。
「2」
背中から、剣を抜く。
「1」
足に力を込め、疾走態勢。
「0」
ぼくとエリが爆発したように飛び出す。
手前のオーク2匹がこちらに気付き、1発喰らえば即死亡するような丸太を上段に構える。
エリは手に持っている煌びやかな細剣を下段に構えて突進していく。
ぼくはこの2匹の間を通り抜けるためにさらに速度を上げ、風の如く疾駆する。
2匹はそれぞれ別々に、ぼくとエリを狙うつもりなのか、お互いに距離をとってきた。
加速する。限界まで加速する。もう地に足が着いているのかどうかすらも分からない。
オークが丸太を振り上げる。
しかし、その速さは遅すぎる。
オークを通り過ぎる瞬間に丸太を持っている腕を斬り落とす。その衝撃も感覚もない。
「ウグゥゥォォォォオォ」と汚い叫び声が聞こえるが、それを無視して奥の2匹へと疾走する。
奥の2匹が汚い叫び声を聞いて、こっちを振り向く。振り向いたときには、既に奴らの目の前に達する。
奴らが無骨な大剣を背中から抜くよりも速く、――剣を振るう。
とても反応できる速さではない速度で打ち込む。
「うぉぉぉぉおおお!」
絶叫しながら剣を2匹のオークに叩き込み続ける。右、左、右。斬りつけるたびに、オークから星屑のような緑の結晶が飛び散っていく。
――速く。もっと、速く。
――加速する。加速する。
「グォォォォオオ!」
2匹のオークは汚い雄たけびを上げながら、上段から斬り落とし攻撃を同時に放とうとしてきた。
しかし、そんなことを無視して2匹をまとめて剣でラッシュを続ける。あまりの速さに脳の神経が焼き切れる感覚に囚われて、アドレナリンが体内を駆け巡ることにより、興奮で覚醒しそうになる。
「ぁぁぁああああああ!」
叫び声と共に、止めの横薙ぎの一閃を放つ。それは2匹のオークの身体を深く切り抜いた。
「グゥゥォォォォオォ!」
2匹のオークも、同様に絶叫して――膨大な緑の結晶となって砕け散った。辺りに緑の結晶が雪のように降り注いだ。
剣を振り払い、背の鞘に収める。
キンッ
という甲高い音を発て、光緑の線が残る。
しばらく倒した余韻に浸って、エリ達の方を振り向く。
向こうも終わっているようで、同じように緑の結晶が雪のように降り注ぐ中、二つに束ねた長い綺麗な金髪をなびかせ、手にはレイピアを持ち、佇んでいるエリがいた。
…その光景に…言葉を失う。
「…………」
エリもこっちに気付いたようで、目が合って、ぼくに――微笑む。
キラキラと照りつける木の間からの太陽の光の中、その光が反射して緑の結晶が輝きながら雪のように存在している中で笑う彼女は――美しかった。
「つかれたぁ~、お腹へったぁ~」
ぼく、エリ、ユマの三人で森から街へと続く街道を歩いて街に帰っている途中にユマがぼやき出した。
「ナオくんの、シチューが食べたいなぁ~」
ユマがぼくの後ろから背中をつつきながら言ってくる。…やめてくれ。エリがすごい睨んでくるから。
「ユマッ!ナオは疲れてるんだよ!」
エリがぼくの横から後ろにいるユマに注意する。
「大丈夫だよ。ユマは何のシチューが食べたいの?」
「う~ん。クリ~ムシチューにグリズリーのお肉!」
ぼくの問いかけに対して、とび跳ねるように手を挙げて横に移動してくるユマは嬉しそうに笑顔を浮かべていた。この笑顔だけでぼくの心は癒される。
「えっ!?グリズリーのお肉なんて固いだけじゃない・・嫌よ。私はミミーのお肉がいいわ」
とユマの反対側にいるエリが顔を覗かせて答える。
「えっー!?ぜっ~たい、グリズリーがいいよ!煮込んだらすごくおいしいんだよ!」
「いやよ。絶対ミミー!」
「グリズリー!」
「ミミー!」
ぼくを間に挟んで2人の言いあいが始まった。これは、しばらくは止めることはできないなーと傍観者の立場で2人を眺める。
こうして見るとやはり、2人はとても可愛い。
エリは綺麗な金色の髪で、ツンデレだ。
ユマは綺麗な銀色の髪で、癒し系だ。
と言っても、2人を想像し、創造したのは・・ぼくだ。
しかし、スタイルも同じグラマーな設定で創造したつもりだったのだが、・・・エリはスレンダーになってしまっている。これはぼくの深層意識の影響かもしれないと思っている。
自分で想像し、創造したのにも関わらず、ぼくの想像とは異なっていたり、ぼくの意思とは無関係な動きをしたりすると自分の深層意識の影響だと思っている。
「ナオはどっちがいいの!?」
と思考をそらしていると、エリが怒っている顔でぼくの顔に迫ってきた。
どっちでもいいよ。
と言いたいところだが、この2人のじりじりと迫ってくる様子では無理だろう。
うーん。グリズリーの肉は熊みたいなモンスターの肉で、固く臭いも強い。したがって、調理にも時間が掛かるし、正直めんどくさい。
ミミーは兎のような家畜の肉で、柔らかく臭いもほとんどない。さらに、どんな調理法でも大抵は美味しく頂ける。
「すぐに食べれるミミーの方がいいかな。グリズリーは下準備がいるからね」
グリズリーは確かにめんどくさいが、ユマの笑顔が見れるなら安いものだ。しかし、今回はユマもおなかが空いているみたいだし早く食べれた方がいいだろう。
「やった!」
と嬉しそうにするエリに対して、
ずぅ~ん
という効果音が付きそうに落ち込んでいるユマ。
ちょっと可哀そうなことをしたかな、と思わず苦笑してしまう。
「けど、そうだね。ナオくんも疲れてるし、ミミーの方がお料理しやすいよね!」
しかし、ユマの復活は思ったより、早かった。
「わたしも手伝うからね!ナオくん!」
とものすごく笑顔で言われたら、こっちが照れてしまう。
「じゃあ、急いで帰るとしますか!」
「「うんっ!」」
と走り出して街へと向かう。




