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非日常な日常1

 いつも通りの光景が目の前に広がる。

 森林。木々からの木漏れ日と爽やかな風。気持が安らぐ。


「ナオッ!なに、ぼっーーとして!」


 鈴の音が透き通るような声でぼくを怒鳴って、二つに束ねた長い綺麗な金髪がなびく。同い年くらいの、ものすごく綺麗な女の子。燃えるような蒼い瞳が印象的で、可憐な―というにはあまりにも目つきが凶暴すぎる。というか顔の距離が近い!


「そんなに怒鳴らないでよ、エリ」


 慌ててぼくは後ずさる。そんなぼくにさらに追い打ちをかけてくるように、修道服のような服を着た(それにしては、スカートが短い)エリは体ごとぼくに迫ってくる。


「ナオがいっーーーつも、のんきだからでしょ!」


 ぼくは改めて、エリの顔をまじまじと見つめる。夜の色がそのまま染み通りそうなほど透きとおった白い肌は、日本人のものではない。こんな綺麗な子、普通(・・)じゃ、いない。


「いや、大丈夫だって。ちゃんと分かってるよ。化物(オーク)退治だろ?」


 そう言いつつ、前方にいる化物を見る。この世界ではよく見る普通(・・)の化物。オークだ。体長は2m強。体重は人間の優に七倍はあるだろう。格好は獣の皮を被っているという感じで、いかにも汚らしく化物らしい格好だ。手には長さが4mはあるだろうという太い無骨な丸太を持っている。


「わかってるなら、もっとちゃんとして!」


 エリがまたもやぼくに怒鳴ってくる。いくら化物との距離があって、森の中だからといって声を出しすぎだろ!と思うが今は何も言わないでおこう。真剣になればいいんだから。


「…わかった」


 ぼくの鋭い声を聞いて、ぼくの目を見て、エリは頬を染めてそっぽを向く。

 ほら?簡単なことだ。だって、エリはぼくに惚れてるんだから。それが普通(・・)の反応だ。


「エリちゃん、ナオ君、ただいまーっ!」


 そんな明るい掛け声と共に、ぼくとエリの後ろから小走りでやってきたのは束ねていないストレートの綺麗な銀髪に、――エリと同じ服、同じ顔。双子のユマ。エリがツンなら、この子はデレという感じ。


「ユマ、しっーー!」

 人差し指を立て、ユマを注意するエリ。それに対して、ユマは

「わっ!ごめん!」

と慌てふためく。これも、この世界なら普通(・・)だ。


「オークは何匹だった?」

ぼくが冷静にユマに問いかけると、ユマは慌てた様子から一転して、落ち着いた声で状況報告をした。


「全部で四匹。目の前に見える二匹と、その後方、五十mに二匹。手前二匹は見たとおり武器は丸太、主な防具は無し。後方二匹は、武器は五メートルを超える無骨な大剣、防具は無し」


 ぼくはその報告を聞いて状況を把握して、指示を出す。


「エリとユマは手前の二匹を。ぼくは奥の二匹を」

「そんなのダメだよ!」


 ユマの慌てた声がぼくの言葉を遮る。


「ナオ君が危ないよ!」


 ユマはぼくの心配をする。それが普通(・・)だ。

 エリは不安そうな瞳をしているが、ぼくの目をみて分かってくれる。これも普通(・・)だ。


「…大丈夫だよ。いつものことじゃないか」

 ユマに向けて笑顔で、諭すように優しい声でそう言った。

「……」

やや納得がいかないようだが、ちゃんと言うことを聞いてくれるようで、頷いてくれるユマ。


「それじゃ、…いくよ。カウント。5」


 いつも通りぼくがカウントダウンをする。


「4」


 いつも通りユマと視線を交わし、軽く笑い合う。


「3」


 いつも通りエリと視線を交わし、真剣な顔で頷き合う。


「2」


 背中から、剣を抜く。


「1」


 足に力を込め、疾走態勢。


「0」


 ぼくとエリが爆発したように飛び出――

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