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75弾 イレギュラーに対処しよう

 しかし、なるほど、どこに行くのか分からなくするのだな。もしかすると、降りた地点から、組合本部まで、いついつまでに帰還しろ、という試験かな。そうこう考えながら、うつらうつらしているうちに、


「本日はここで一泊します。」


 と言って、降ろされて、目隠しの袋を取られて、どこかの村の宿に泊まる。食事は簡素に携帯食糧。場所の秘匿は徹底している。まあ、さっさと休もう。メムも何も言わず、淡々と食事し眠りについている。

 翌朝早くに起こされ、早朝から出発する。前日と同様に目隠しをさせられ、少し走っているうちに試験会場とやらに到着したようだ。


「どうぞ、目隠しをお取り下さい。どうぞ。」


 俺が、うつらうつらしているままだったので、肩を叩かれて起こされて、


「どうぞ、もう目隠しをお取り下さい。」


 やっと、目が覚めて、目隠しの袋をはずす。

 ドラキャを降ろされると、まあ見た事のない平坦な草原だった。メムも目を細めて、草原を眺めている。


「こっから、イチノシティまで戻ってこいっていう試験かな?。」


 俺がなんとなく質問してみると、


「いいえ、違います。これから現れる賊を、全て生け捕りにして下さい。」


 と言われたのだった。


「これが試験、という事ですか。」


「はい、我々は、別の所から試験監督していますので、これで。」


 そう言って、2台のうち、1台のドラキャでどこかに去って行く。

 草原を離れて行って、見えなくなるとすぐに、黒覆面の賊が現れる。


(メム様、どうでしょうか。試験内容からすると、メム様に感知してもらっているところでチートになるかもですが。)


(念話術だし、監督しててもわからないから別にいいんじゃない。ちなみに10名ね、ここにいる賊たちは。)


(わかりました。フォローよろしくお願いします。メム様。)


 現れた賊たちは、メムに視線を注いでいる。剣を持った奴が4人、弓矢が3人、杖が3人か。

 では、多人数対シングルの戦いとして考えことにする。

 駆け寄ってくる賊たちに対して、拳銃を抜き、駆け寄ってくる奴らの先頭から、ハンマーを上げ、引き金を引く。


ドシュッ、ドシュッ、ドシュッ、ドシュッ、ドシュッ、ドシュッ


 6人に対して、足元に狙いを定め、魔弾の【岩球】を発動させる。岩の弾が飛んで行き、足や金的に次々命中して行く。撃たれた、いや魔法の発動を喰らった6人は、体勢を崩して前のめりに倒れていく。

 全弾命中。そして、俺たちは草むらに身を潜め、メムは敵たちの左側へ、俺は右側へゆっくりと移動する。草原は草の背丈が意外に高く、屈んでしまうと敵から見えにくいはずだ。


 魔弾を装填しながら、メムに念話術で


(では、最強の囮役、お願いいたします。)


(任せてちょうだい。)


 メムが草むらから、ジャンプして、敵の目を引きつける。一旦草むらに潜り、カサカサと音を立てて移動し、再びジャンプして、隙のある敵の賊に、頭突きをかます。その間に俺は、魔弾の装填を終えて、静かに立ち上がり、目につく賊の足元に狙いをつけ、引き金を引く。

 

 ドシュッ、ドシュッ、ドシュッ、ドシュッ


 再度の魔弾【岩球】の発動で、4人次々に足へダメージを与えると、体勢を崩して倒れていった。

取り急ぎ、ドラキャを少し動かし、倒れて、うめいている10人の武装を解除し、手足を縛り、一部はドラキャの中に放り込み、残りはドラキャの近くに転がす。


(これで試験終了かしら。ずいぶんあっけないものね。)


 と、メムが楽観的な意見。


(いや、なんかおかしいです。警戒を厳にしましょう。)


(そう、…………え、何か近づいて来るわ。結構強そうなものが。)


 取り急ぎ、魔弾の再装填をしよう。強力な魔弾にしたほうがいいか。髪の毛0.5ガラム入りの魔弾だ。あえて威力大のものを装填する。そして用心をしながら、まわりを見渡す。


 草原の奥から、


 ガギャルウウウウー


 まさに、獣の咆哮が聞こえてくる。その鳴き声は、俺を腹の底からゾクゾクとさせてしまう。

 メムもかなり気合いの入った感じで身構える。

 そこへ、ドラキャが一台、一気に駆け込んできて、試験官が


「おい、中止だ。こいつは、危険過ぎる。強獣《ごうじゅう》の上位クラスやもしれない。」


「撤退してくれ。」


「急いで撤退だ。」


 試験官が口々にそう言い出す。

 そこへ、赤い目を光らせ、ヒグマっぽい獣がゆっくりと姿を現す。再度、咆哮する。


「これは、ヤベアクゥア。ヤベア種の水属性………。」

 

 誰かがそう呟く。

 ヤベアクゥア、そいつは、手を高く掲げる、え、腕が4本もあるのか。


「やばいぞ、四つ腕だ。」


 また誰かがそう呟く。

 ヤベアクゥアは、手を掲げた後、四つん這いになり、周辺をうろうろして、すぐにメムに視線を送る。メムが意外にも思いっきり睨み返す。


「今のうちに、捕縛した賊たちと一緒に、引いて下さい。」


 俺は、ヤベアクゥアから目を離さずに、試験官たちにそう命令する。


「やむを得ない。こいつらを放り込んで、引くぞ。監督場へ急げ。」


 試験官の誰かがそう言って撤退にかかる。

 その間も、メムと、そのヤベアクゥアは睨み合ったままだ。

 しかし、このヤベアクゥアって、こいつの大きさは身長で2メートル、ここでの単位2マータル、横幅もあり、500キログラムぐらい、ここでの単位500カロガラムぐらいか。まさにヒグマに腕が2本追加で装着された感じか。


 俺は、静かにハンマーを上げて、狙いを定める。

 後ろで、ドタバタと撤収しているようだ。ドラキャが動き出そうとしたその時に、無言でヤベアクゥアが、メムに襲いかかった。

 メムが綺麗にジャンプして、ヤベアクゥアの4本の腕での打突をかわしていく。空を切った攻撃から、ヤベアクゥアがメムに向けて、突進を開始する。

 その時、俺が引き金を引き、一気に6発の魔弾を撃つ。青白い火球が、次々に、ヤベアクゥアに向かって飛んでいき、全弾命中する。

 ヤベアクゥアの右腕2本が火に包まれながら、体から剥がれて、吹っ飛び、ヤベアクゥアは、体表の一部を焦がしながら、目と口から青白い火を吹き出す。

 そのまま、動きを止め、ズシリ、と大きな音を立て、前のめりに崩れ落ちる。

 俺は、とりあえず、魔弾を三度目の装填をして、ゆっくりと崩れ落ちた強獣に近づいていく。

 かなり近づいたところで、急に残った左腕を動かし、俺に攻撃を仕掛ける。

 げ、まずい。


「集中」


 そう呟き、動きを上げて交わそうとするが、虚を突かれる形になったためか、この攻撃をかわしきれない。体に衝撃が伝わり、俺は後方に吹っ飛ばされる。装備していた軽鎧がバラバラになる。ほとんどの攻撃威力は、この軽鎧が吸収してくれたようだが。

 メムが俺に駆け寄ってくる。俺は深呼吸をする。

 その時、崩れ落ちたまま、ヤベアクゥアが咆哮して、そのまま全く動かなくなったようだ。


「メム様、とりあえず、あの獣の様子を見てきて下さい。」


 仰向けに倒れたまま、俺がメムに頼んでみる。

 メムがゆっくりと近寄って、匂いを嗅いだりしていたが、再び俺のところに寄って、


「大丈夫、完全に死んでいるわ。」


 と俺の耳元でささやいた。

 そこへ、


「大丈夫ですかー。」


 ドラキャから身を乗り出した試験官が、そう言いながら俺たちに近づく。

 俺は、その声を聞きながら、身を起こす。とんでもない最後っ屁を食らったが、大きなダメージはなさそうだ。カバンから回復ポーションを出して、一瓶を一気に飲み干した。


「ふうっ、これで終わりかな。」


 独り言を言って立ち上がる。


「おおっ、どうやら無事のようですね。………え、これは。」


 試験官が近寄って現場を見渡す。


「一応、倒しましたが。」


 俺がそう言うと、


「え、………えええええーっ。」


 と、試験官たちはかなり驚いたようだった。

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