243弾 また狂獣と相対しちゃおう
方針が決まってからは他パーティの居そうな場所を、ヘルバティアとベンナさんが互いに地図を突き合わせて、最初に配置された位置を示して、方向を確認し、今の位置も確認して、休憩や野営に良い場所をチェックする。そして野営場所を畳んで、移動を開始する。
「そういえば、狂獣を一頭、俺たちが退治したことは他の2パーティには知らせているのですかね、審判の方々は?。」
俺がメムとモベルバンさんと一緒に先頭に立ちながらモベルバンさんに聞いてみる。
「ああ、ニシキさんがメムさんを川で洗っている間に、のろしが上がっていましたので。」
モベルバンさんがそう教えてくれる。
「まあ、メムを洗うのにちょっと手間かけていましたから、空を見ていなかったですね。」
俺がそう呟く。
俺の呟きを聞いてメムがじっと俺を見る。そしてため息とともにまた前を向き一緒に先頭を歩いていく。
(どうですか、他パーティの方は。)
(まだこの辺にはいないわね。敵の気配もないわね。)
念話術で確認しつつ前へ進んでいく。
「狂獣に遭遇した時はどんな気分でしたか?。」
周りを見ながらモベルバンさんが聞いてくる。
「一気に襲ってきた感じでしたからね、野営地に呼びにいく余裕もないと思いましたし、こうなったら時間稼ぎで戦って、戦闘の物音で皆に気付いてもらうしかない、と判断はしましたが。どんな気分と聞かれると……。」
「ああいやいや、あっしの質問の仕方が悪がったです。でもそう考えて戦闘に入ったのですね。」
俺の回答が不快感込みと解釈してしまったようで、モベルバンさんが軽く詫びをしながら納得する。
「俺としても、敵を感知しても良い形で戦闘に持ち込めれば良いですが、夜明け前みたいな微妙なタイミングで襲ってくる、しかも、一気に接近してきてですからね。判断の速さも必要ですね。これからのことを考えると……。」
「そうですね、10級のランクアップ試験ですからね。試験内容を考えればこの特訓所での特訓で課題が明らかになることも悪くはないですがね。」
俺とモベルバンさんはそう会話しながら少しゲンナリする。
そこへ、
「おーい、一度休みましょう。」
と後ろから声がかかって、休憩をとる。
その後、休憩と昼食休憩をとって昼食をとり、再び移動を開始する。
昼食を終えて1時間ほど歩いていると、
(ねえ、何か気配ね、……これは、他パーティと……ええ、狂獣の匂いかしらね。)
(ここから、どのくらいの距離ですか、メム様。)
(うーん、ちょっと離れてるかしら、2カロマータルくらいかしら。このままほぼまっすぐ進む感じね。)
(ありがとうございます。メム様。)
「どうやら、メムが何か感知したようです。この先です。」
「わかりました。メムさんが鼻を上に向けてクンクンしたので、何か感知をしたのはわかりましたが、すごいですね。」
ということで、俺とメムとモベルバンさんは、ヘルバティアとベンナさんを交えた話し合い後、すぐに先行してその場所に向かうことになる。
10分ほど小走りで急いでメムの誘導に従い進んでいると、
ジュドーン
と轟音が響いてきた。
「これは。」
「ええ、もしかすると。」
(匂うわよ、あの狂獣とおんなじ匂いね。それに10名ほどの人の気配ね。)
メムの感知も目的地に接近していることを告げている。
少し走る速度をあげて急ぎ狂獣のいるそして他のパーティが戦闘中だと思われる場所に向かう。息切れしかけて、その上でラストスパートするような感じでちょっとキツイ。
シュゴッ
ジュドーン
再び轟音が響いて、音の大きさからも接近しているようであることが分かる。
深めの藪を突っ切ると、
「ああー、どうして。」
「ええー、ちょっと。」
ざわつく声を耳にしながら、俺とメムとモベルバンさんは、藪を突っ切った勢いで、何と狂獣のオラオライオンの真正面に相対してしまったのだった。
「どわぁ。」
俺は驚きの声をあげながら、
「モベルバンさん、一旦先に退がって、後から来る中団と後方を誘導して下さい。」
そう指示する。
メムがオラオライオンに二頭目の相対で、牙をむき出しながら威嚇して、鋭くガンを飛ばす。
オラオライオンは、メムのガン飛ばしに対応するかのようにメムをにらみ付け、
グワオーーーーーーーーーッ
と激しく咆哮する。
モベルバンさんが俺の指示を聞いてさっき突っ切った薮の方を山刀で切りながら視界を広げつつ後から来るパーティメンバーを誘導する準備にかかる。
「集中。」
俺がそう呟き、クイックドローの要領で魔弾【火炎弾】を一気にぶっ放す。
ドシュドシュドシュドシュドシュドシュ
ドゴッドゴッドゴッドゴッドゴッドゴッ
先ほどの1頭目の時のように顔面を火だるまにするが、時間稼ぎにしかならないか?。
そこに一人の青紫の鎧兜で両手剣を持った男がオラオライオンの後方に素早く回り込み、尻尾目掛けて両手剣を振るう。
メムがそれを見て、オラオライオンの顔面目掛けて、必殺技をぶちかます。
「ニャーシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャ、ニャシャー。」
メムは必殺技を放ったが、本日二発目の必殺技のせいか、一発目の時の勢いと威力と継続性がないため尻切れトンボのように中途半端になってしまう。しかしダメージはそれなりには与えられたようだ。
俺は再び
「集中。」
と呟き、弾倉に新たに魔弾【剛岩弾】を装填してオラオライオンの腹部に足からスライディングしながら潜り込み接近すると、
ドシュドシュドシュドシュドシュドシュ
ドゴッドゴッドゴッドゴッドゴッドゴッ
至近距離、いやゼロ距離でぶっ放してみる。そして素早くスライディングの勢いのまま抜け出す。
グワオーーーーーーー……
両手剣の男が苦闘しながら両手剣を振り切り尻尾を切り放つ。
オラオライオンはドサリと崩れ落ちた。
そこへ、
「助っ人に来ました。皆さんは大丈夫、ですか……。」
ベンナさんがそう声をかける。
「助っ人ありがとうございました。」
先ほどの両手剣の男が俺に礼を言う。俺は軽くうなずいて他の者に目をやると、
「かなり怪我人が多かったようですね。助っ人として役に立ってよかったです。」
「あ、ああ、そうですね……。」
両手剣の男も負傷者が出ている状況に少し落ち着かないようであった。
そこへドヤドヤとヘルバティアたちがやって来る。
「こちらでも負傷者たちの回復を手伝います。」
ヘルバティアが両手剣の男にそう言うと、両手剣の男は無言でうなずく。
(ねえ、妙な空気ね。純朴準星のメンバーとあの青紫色の装備をつけた連中は知り合いなのかしら。でも、目も合わさないわね。)
(……ええっと、メム様。まず回復ポーションを飲みましょうか。)
(そうね。でも妙な空気よね。そう思うでしょう、ダンも。)
メムが念話術でそう言い出すが、俺はあえてそれを肯定も否定もしない曖昧なままにしておく。こういう人間関係の話は、今の時点ではあれこれ言うべきじゃないと思っているからだ。ただメムの指摘通り、純朴準星のメンバーとあの青紫色の装備をつけた連中とは、会話も乏しく互いに目も合わさない。
そこへ、審判役がひょこっと現れる。一体どこに隠れてどうやって見張っていたのかは気になるのだが、それはさておき
「魔石は回収します。パーティによる協働戦、オラオライオン2頭の退治完了を確認しました。これでこの特訓は終了となります。各パーティの方々はそれぞれ移動して所定のドラキャに乗って下さい。」
と指示があり、各パーティの審判役らしき人物が続々現れて、それぞれのパーティを誘導にかかる。負傷者は審判役が治療するようだ。
「お疲れ様でした、華束舞踏の皆さん。さあ、こちらにどうぞ。」
そう言ってトレガーマさんが声をかける。俺はそれを聞きながら、ベンナさんらのパーティ、純朴準星の一行に一礼をすると、モベルバンさんが気づいて手を振ってくれる。そしてそのまま俺たちは彼らと離れて行った。




