219弾 課題の解決協力しよう
夕食の後片付けは俺がすることにして、3姉妹にはさっさと休んでもらうことにする。結局、3姉妹はさっさと寝室に行って眠りについたようであった。
俺も片付けを終えて、メムの見張り付きで入浴して寝室に戻る。
「じゃあ、明日は3姉妹について行くのね。いいのかしら、話を聞けていないけれど。」
メムが寝室に戻ってきて開口一番、そう確認する。
「あの疲労っぷりじゃ、とてもちゃんとは聞けないですよ。明日の朝に聞き出したほうがいいでしょう。」
「今日の夕食前みたいなあんな寝起きだったらどうするの。」
「そうならないことを祈ります。」
「誰に祈るの。」
「……メム様?。」
「なんでそこは疑問形なのよ。疑問符じゃなく『メム様っ!』って感嘆符で言うところじゃないの。」
話が変な方向に行きそうだ。
「まあまあ。それよりメム様も一緒に見るのですよね、3姉妹の特訓。」
「そうね、でもダンはどうするの。」
「行ってみてから、何をするべきか考えることになるでしょう。3姉妹に対してもお手伝いすることになるかもしれません。」
「……そうね、じゃあ、おやすみなさい。」
翌朝、しっかり睡眠をとって回復した様子の3姉妹を見て一安心する。
「だいぶ疲れは取れたようですね。」
「ええ、おかげさまで。」
俺がそう声をかけるとヘルバティアがそうお礼を言う。
「でも疲労は取れたけど、課題は残ったままだから。ね、ミヤン。」
「ええ、そうよね。でも何とかしないと今日も含めてあと3日よ。特訓期間は。」
ミアンとミヤンの話が気になるので、
「ミヤンさんに何か問題でもあるのですか?。」
「……朝食をとりながら話をしましょう。」
俺の疑問にミアンがそう答える。先延ばしにされた気もするが、確かにこの後届けられる朝食をとりながら聞いてみたほうがいいだろう。
「ミヤンの動きのキレが今ひとつ良くないのです。ここにきて疲労のせいかどうか分からないから問題なのですが……。」
ミアンが腕組みをして首を傾げながら俺に話してくれる。そう言われている当人であるミヤンは、
「うーん、自分自身としてはそんなキレが悪いと言う感じはないのだけど、ミアン姉さんとかティア姉さんとか稽古しててもよく負かされるのは事実なのよね。」
「で、こうなったらニシキさんに見てもらおうかと思いまして。」
ミアンとミヤンの話を受けてヘルバティアが俺にまとめて説明する感じになる。
「そう言えば、この自主特訓で何を特訓していたのですか?。」
「前にニシキさんにアドバイスしていただいて、従来のシーフ、盗賊や暗殺者のような型を一旦忘れて、両親から習ってきた魔法士剣士や硬堅回復士こうけんかいふくしという型を再度稽古しているのです。」
なるほどね、あとは自分自身にフィットすればいいのだろうけど、
「ところで、今さっき、えっと『こうけんかいふくし』という言葉が出ましたが、それは一体何ですか?。」
俺はスルッと出てきた初耳の言葉に戸惑いながらヘルバティアに質問してみる。
「えーっと、攻撃を受けても堅固な守りで自分自身を守り、かつパーティの回復役もすることですね。最近研究されてきている役割です。」
「へー、そのような研究が……。」
思わぬ回答に少し言葉を失う。まああれか、アメフトのディフェンスの選手の役割で、ラインバッカーという役割から研究が進み、新たにエッジラッシャーという役割が出てきたようなものか。そんなことを考えていると、
「ちょっとダン。何、皿までかじろうとしているの。」
メムに言われてふと気がつく。なぜか左手で皿を持って口に持ってきていたのだった。
「お、おおっ。考え込んでしまったか。」
そう言って慌てて皿を食卓に置く。
「ニシキさん。考え込むより、まずは実際に私たちの特訓を見てくれたほうがいいのではないですか。私を見てもらっていろいろ意見してもらえればいいなと思っていますから。」
少し慌てた俺を見ながらミアンがそう言ってくる。
「ええ、メムと俺がしっかり見てみます。どういうことが言えるかどうかはわからないですがよろしいですか。」
俺がそう言うと、ミアンを凝視しながらヘルバティアが
「ミアンだけじゃなく私もね。」
と言い、同様にミアンを凝視しながらミヤンが
「一番初めに話が出たのは私だから先に見てね。」
と言い出した。
「まあ、まず朝食を終わらせて皆さんの特訓場所に行きましょう。そして、皆さんの特訓を見てみますか。」
俺がそう言って話を進めると、
「いやー、大変そうね。ダン。」
メムがニヤついた表情で俺に言ってきたのだった。
「じゃあ今日一日見てもらいましょう。もう昼食はパーティ全員分を外でということで、特訓所所員に朝食を届けてもらった際に話をつけていたから。」
ヘルバティアがそう言ってコップをグイッとあおった。もし俺とメムがロッジにいたままだと、昼食は来ないままだったのか。
「なるほど、意外に広いのだなあ。まさか特訓所内をドラキャで移動とは……。」
「ニシキさん、ここに最初来た時、事務所からあのロッジまでドラキャで移動したことを忘れてませんか。」
ミアンにそう言われて、俺はこの施設がかなり広大な敷地であることに気付かされる。まあ、忘れていたのは、メムの必殺技開発にかなりエネルギーを費やしたためだろう、と自分で自分に言い聞かせる。
「さあ、ここよ。ここで私たちは特訓をしているの。」
ドラキャに乗せられ連れてこられたのはやや小ぶりな道場みたいな建物だった。中に入ると、まるで格闘家の使うようなスポーツジム、ただし中にあるのは模造刀みたいな刃のない武器が壁に並び、打ち込み用のボロ布人形が何体も片隅で佇んでいる。
「すごいな、ここで特訓しているのか……。メムの必殺技開発もここですれば良かったか。」
「じゃあ、また新たな必殺技を考えたらここでまた開発しましょうよ。ダン。」
「いや、当分はもういいです……。ものすごく疲れますので……。」
「なんか胃もたれした感じの人の表情ね。」
3姉妹の特訓場所を見渡しながら、メムと話をしていると3姉妹が現れる。ただ今までとは違う武器を持っている。ヘルバティアが短剣を持ち、ミアンはショートソードの二刀流、ミヤンがロングソードに小楯を持っている。
「ニシキさんのアドバイスで、両親から教えてもらった戦闘スタイルを復活させてみたのがこれよ。でも人に見せるのは少し恥ずかしいわね。」
ヘルバティアが少し照れながら言う。
「へーそうですか。」
俺はそう言いながら3人の武器をまじまじと観察する。メムも興味津々で3人の武器を見ている。
ヘルバティアの短剣は以前俺を襲撃した時のものよりかなり短い。刃渡り20サンチマータルくらいの両刃である。そしてミアンのショートソードは刃渡り40サンチマータルくらいの両刃、さらにミヤンのロングソードは刃渡り70サンチマータルぐらいの両刃、盾は小ぶりな円状の直径約25サンチマータルくらいの大きさの木組のものである。
ただし、刃の部分は潰してあり切れないように加工されている。でもこれで生身の体に直接打ち込まれたら痛いなんてものじゃないろうな。
「こんな刃のない武器で打ち込んでも大丈夫なのかなあ。」
思わず口に出してしまうが、
「まあ切られることにならないから大丈夫ですよ。」
と人ごとのようにヘルバティアが言ってのけるので少し驚愕する。まあこういう世界なのだなあと自分自身で納得はしてみるが。
「何、ダンは怖いの。刃のない武器でもビビるなんて結構弱虫ね。」
メムが挑発気味に俺に言ってくるので
「怖いもの知らずは前に進める。怖さを知らなきゃ上には行けない。」
と言い返すと
「何それ、誰かの格言だったかしら……。でもどこかで聞いたような……。」
そう言ってメムが首を傾げる。
「じゃあ、ニシキさん誰から見ますか。」
とミヤンが聞いてくるので、
「最初はミヤンさんから見てみたいです。」
とリクエストするとヘルバティアとミアンがキッとして俺をにらむ。メムがそれを見てプッと吹き出す。
「いや、朝にミヤンさんの課題の話が出たもので気になって、先に見たほうがいいかなと思っていたものですから。」
と俺が説明すると、
「ふーん、言い訳がお上手なことで、イテッ。」
メムが余計なことを言うのでとりあえず頭をはたく。




