217弾 必殺技名決まるだろう?
結局、『テンペスト・ラッシュコンボ』か『ラッシュコンボ・テンペスト』でメムが思い悩むこととなった。
「メム様、そんなあっさり決めても後で後悔しないよう、明日もう少し考えてみるのもいいのではないですか。本日寝るまでに決めなくちゃいけないものでもありませんから。」
俺は急ぎ決めることはないと言って聞かせる。
メムの『そんな感じ』を基準にして、他の候補名、『メムズフィニッシュコンボ』とか、『無相連撃』とか、『翔天猫閃』なども出てきたのだが、一部は無しにして候補名を絞り込みメモ書きにしてメムに渡したのだった。
翌朝、メムが眉間に縦じわを寄せ寝不足な表情で大あくびをしながら起きてくる。
「……どれにするか悩んでいるとあまり眠れなかったわ。」
「俺に決定権はありませんので、メム様しっかり考えて決めてください。」
「今日から魔術研究をするんでしょ。ダンの魔術研究の横で考えてみるわ……。」
「まあ、大いに悩んでください。まずは朝食にしましょう。」
そう言って悩めるメムを朝食へ促す。
居間に行くと朝食が届いているが、3姉妹の眉間にも見事に縦じわが寄っている。疲労が溜まっているだけではないような感じである。
静かな朝食になるが、ふとヘルバティアが
「そういえば、メムちゃんも何な悩みがあるのかしら。」
「ああ、必殺技の命名に悩んでいますので。」
俺がヘルバティアの疑問にあっさり答えると、
「え、じゃあ、メムちゃんの必殺技が完成したということ?。」
「すごい、すごい。」
ミアンとミヤンが驚きの反応を示す。
「私たちもメムちゃんに負けないように頑張りましょう。」
ヘルバティアがそう言ってミアンとミヤン、それに自分自身も鼓舞して朝食を終える。
その後3姉妹は身支度を整えて外に特訓しに行く。俺は魔術の研究に、メムは必殺技の命名に双方が頭を悩ましながらロッジの居間で過ごすことになる。
「ねえ、研究の方はどんな感じなの。」
研究をしている俺の後ろからメムが声をかけてくる。メムは俺が書いて渡した必殺技の候補名の羅列をずっと眺めながらウンウン唸っていたのだが、飽きたのか。それとも。
「まあ、俺の方はね、……とりあえず新型魔弾の候補はこんなものかと。」
そう言いながらいろいろ書いていた紙を見てみる。
「どれどれ、見せてよ。」
そう言いながらメムが机の上に乗ってきてそれを見物し出す。
「ふーん、分類してるのね。」
一眼見たメムがそう言いつつ凝視する。
火属性:開発済【火球】【火弾】
開発中【火炎弾】【爆裂弾】【裂火弾】
検証中【爆裂火弾】【爆焔弾】
水属性:開発済【水球】【氷球】【氷弾】
開発中【氷結弾】【氷柱弾】
検証中【水弾】【水刃弾】
風属性:開発済【風球】【風弾】
開発中【風刃弾】【烈風弾】
検証中【暴風弾】
土属性:開発済【岩球】【岩弾】
開発中【剛岩弾】【岩礫弾】
検証中【土流弾】
光属性:開発済【光弾】
開発中【閃光弾】
闇属性:開発済【闇弾】
開発中【闇黒弾】
「え、じゃあ、光属性と闇属性の魔弾は開発はあまり進んでいないのかしら。」
「メム様もそれを見たらそう言うのでしょうけど、魔弾の開発の参考のためにこの異世界トゥーアールでの魔法研究の書籍を読んでみたのですが、あまり光属性と闇属性の魔術の研究は進んでいないようなのです。そのためにあまり参考にならなくて……。それに俺的には属性のない魔法、無属性の魔術が見当たらないのも気になっていまして。これだけ一切なんの資料もないのは少しおかしいのかもしれないなと疑問を持つべきものなのか、この異世界だからそうなっていると結論づけるのかで少し悩んでいますね。」
「まあ、魔法が攻撃的なものばかりで、補助魔法や回復魔法がなぜか存在しないようなのは少しおかしい気もするわね。」
「それに俺がこうやって魔弾という形で魔法を発動させていますが、この漢字の組み合わせでどうなるのかというのはありますし、漢字を組み合わせて魔弾で魔法を発動させても効果が一緒なこともあるので。」
「そうか、漢字の文字数を増やせば必ず威力が上がっていくというわけでもないのね。」
「ええ、文字数が増えれば俺の体力の削られる量が増えるのですが、効果が似たようなものだったら文字数を少なくした方がいいですから。」
メムとそう会話をして俺は立ち上がり背伸びをする。
「ダンが魔術について、この異世界の魔術についてそう考えているのね。ところで……。」
「もしかして必殺技の命名を俺がして欲しい、とかですか。お断りしたはずですよ。」
「…読まれてたか。……じゃあ、命名のヒントなんてくれないかしら。」
メムが舌打ちしそうな表情で俺を見ながら呟き、俺にヒントとやらをお願いする。
「ヒントですか?。ピントがずれても知らないですよ。」
俺がそう言うと、
「え、今のはダジャレのつもりかしら、やーねー親父ギャグ。やっぱ中身は50歳ね。」
メムにそう言われ俺は少しイラッとしながら、
「そうですか、じゃあヒントは、なしの方向でいきますか……。」
「いや、悪かったわ。でもいやなものはいやなものよ、そんな親父ギャグは。」
「ギャグのつもりで言ったのじゃないですけど……。」
俺が少し怒りをにじませながら言うと、
「申し訳ございませんでした。ここは是非ヒントを、私に、このメムめにいただけませんでしょうか。お願いいたします。」
そう言いながら土下座をし出した。手のひら返しが凄まじい。
「あまりヒントをあげると、考えなくなるから嫌なのですが……。この必殺技だけで今後乗り切れないかもしれませんからね。その時新たな必殺技を考えることもあるかもしれません。それでこれは軍艦の命名方法になるのですが、軍艦の種類によって例えば潜水艦なら各都市の名からとって命名したり、軍艦なら旧国名からとって命名したりしています。必殺技の種類やタイプによって命名しやすくかつ分かりやすくするように考えるのがいいのではないでしょうか。」
俺がそう教えると、
「なーるほど、いいヒントね。よーし。」
メムは決断したようであった。
「じゃあ、俺は魔術の研究を続けますので。」
決断した表情のメムを横に置いて、俺はまたさっさと魔術研究に勤しむことにする。
「え、普通そこは、『じゃあどんな必殺技名になったのか。』とか私に聞くところじゃないの。なんでスルーしちゃうのよー。」
「こっちの研究も手伝って欲しいところなのですが……。メム様の必殺技開発で俺の予定を変えてメム様に付き合いましたので。それにこういうのは勿体ぶったほうが、メム様の必殺技の価値も上がるというものですよ。」
俺がそう説得すると、
「おおっ、なるほど、そうね。戦闘になってその時に披露すればいいわけね。じゃあその時はダンが後ろでスモークを焚くとか爆発させるとか演出してくれるわけね。」
思わぬ反応に俺もずっこける。
「あのー、それは……一体、何のイメージでしょうか。」
「いやーねー、ヒーローとかヒロインが登場した時って口上を述べて、新必殺技を出す直前には後ろで爆発して、あれ、必殺技を出した後だったかしら、それとも登場した時だったかしら。」
メムも自分で言ってて混乱しているが……。本当に何を見てこんなことを言い出すのか。
「必殺技にこだわるのはいいですが、戦闘に勝つためにやることじゃないですよね、そんな爆発などの効果を見せるのは。まあ俺の話し方も悪かったかもしれませんが、ここぞというところで必殺技を披露すればいいだけですよ。そして強敵を倒す。そういうことです。」
「ああ、そうなのね。確かにシンプルに考えるといいのかもしれないわね。戦闘中は目の前の敵を倒すことに集中しなくちゃね。」
ふー、なんで必殺技の開発でこんなに疲れた気分になるのかなあ。
「よーし、いつか来る強敵との戦闘で披露してやるから。その時までは必殺技名は伏せておくわ。」
「ああ、そうですか。どうぞどうぞ。」
メムが怪気炎を上げるかたわらで、俺は魔術の研究に勤しむのだった。




