216弾 必殺技名考えよう?
「ふう、少しロッジで休みますか。」
「大丈夫、歩けるかしら。」
俺はゆっくりと立ち上がる。少しフラリとするが、大きな問題はなさそうだ。
「もう一本飲んでおきますか。」
そう言いながらかがんで回復ローションを飲む。
また立ち上がり、上半身の服を脱ぎ、軽鎧を外してみる。軽鎧は背中のダメージが大きいようで服ともどもボロボロになっている。
「爪斬撃はなんとかなったようですが、打撃系が効きましたね。」
「ダン、まずはロッジに戻って休憩しましょう。」
メムがそう言って俺の右袖に軽く噛みつきロッジに向けて引っ張る。
ロッジに戻って、寝室に入り寝床にうつ伏せになり少し休憩する。意外なことにメムが
「じゃあ、背中に湿布を貼るから。」
そう言って湿布を上手に貼ってくれたのだった。肉球がぷにぷにして気持ちよかったのもあるのだが。
1時間ほど休憩して庭の防具とかを片付けることにする。
「ねえ、大丈夫なの。」
メムが心配するが、
「ゆっくり片付けますから。」
俺がそう言うと、
「あまり無理しないでね。私の必殺技のダメージは結構あるはずよ。」
そう言ってメムが俺を気遣う。確かに俺も意地と見栄で少々無理しているところはあるのだが。
体調を気にしながらゆっくりと片付けをする。
「これは、明日以降に片付けましょう。」
メムがあちこち凹みのできた不動の受防具を見ながら俺にそう進言する。
「そうですね。少し休んで片付けますか。」
「あと私は、ダンの魔術研究に協力するから。空いた時間で必殺技の強化と錬成に励むわ。」
「……そんな気を使わなくてもいいですよ。メム様が必殺技を完成させて、俺を必殺技で……、ボコボコにしたのは事実ですから。」
こうは言ってみるが、俺自身の課題も新たに発見できたからな。意外に実入りが良かったような感じだ。
「そう、あ、これはこっちに片しておくから。……で、ダン。必殺技の名前なんだけど、……その名前を考える協力も、……必殺技の開発に協力してくれたのだから、当然、必殺技名の開発も協力してくれるわよね。」
なるほど、気を使っていたのはそういう魂胆だったか。
「いやいや、メム様の必殺技なのですから、メム様のお好きなように付けてください。まあ、センスない必殺技名でもいいじゃないですか。俺は陰で笑ってあげるだけですから。」
「それが嫌だからダンにも協力して欲しいのよ。どうも私のネーミングセンスはどこか偏っているような感じなのよ。協力のお礼は、私のか・ら・だ、でどうかしら。」
「メム様の体に何の使用効果があるのかよくわかりませんので、そんなお礼は不要です。そんな色仕掛けして何の意味もないでしょうし、そんなお礼で大喜びするのはヘルバティアだけでしょうから。じゃあそういうことで、片付けを続けましょう。」
「むー。いけず。」
膨れっ面でいきなり京都弁、いけずって確か意地が悪いとかいう意味だったっけ。とはいえ、不満げながら俺と片付けを手伝ってくれる。でもまだ後で協力をしつこくせがんでくるだろうな。
ある程度片付けを終えたのは、まだ夕食の時間にあと1時間ほどの頃合いだった。
「ねえ、ダン。」
「もう、わかりましたから。どうせ協力してくれないのなら、また今夜あたりしつこくお願いしまくって、うんと言うまで俺を寝かさないとか言ってそうやりかねないですからね。」
「そう言ってくれるならね。本当、今夜は寝かさないで、徹夜でずーっと土下座お願いするつもりだったからね。」
この元女神猫は本当に俺を寝かさないで、徹夜覚悟で根比べするつもりだったのか……。
「じゃあ、まずは夕食時間までメム様の必殺技の中身を確認しますか。まあ端的に言えば、適当にかつ本能で頭突きと噛みつきと爪斬撃を連続で叩き込むということです。」
「ちょっと、せっかく開発した必殺技を、適当かつ本能でって、ひどくないかしら。」
俺があっさり必殺技の中身を説明すると、メムが不満を表明する。
「いや、この必殺技は本質が連続技で頭突きと噛みつきと爪斬撃をメム様が相手の様子を見ながら組み合わせて連続攻撃する技ですからね。もうさっさと『必殺連続技』とでもしますか。」
「……まあ、最初に技名から必殺技を考えて開発するって言った私が悪かったとは思うけど、でもそんな投げやりな必殺技名はあまりにひどいわよ。必殺技を叫ぶにしてもそれじゃちょっと無理があるというか何というか。」
「そもそも必殺技を発動させる前に必殺技名を叫ぶ必要は全くないですよ。」
「え、えーっ。……そ、そんな。」
メムが首を垂れて肩を落とす。
なぜ必殺技名を叫ぶということにそんなにこだわっているだろうか。前にも様式美だとか言っていたが。
「こんな戦いで、わざわざ必殺技名を叫んだところで何の意味もないですよ。むしろそんな必殺技名を言うより、先に敵にその必殺技を叩き込む方が効果的です。まあ、言わないと必殺技が出せないというのでしたら、それはメム様の自由なのでいいのですが。」
「うーん、必殺技名って、でも今後また新たに必殺技を開発することも考えると、やっぱり必要じゃない。だから考えておかないといけないし、協力してちょうだい。うん、夕食後に話し合いましょう。特訓期間はまだ明日を含めて3日あるのよね。」
メムはそう言って席をたち居間を離れて外に出る。結構強引に話を押し切られた感じがする。
「どこに行かれるのですか、メム様。」
「ちょっと庭で必殺技名を考えるわ。」
メムがそう言い残して、ロッジの庭で首をひねりウンウンうめきながら考えだしたようだ。
必殺技名か……、俺も協力するか……。
しばらくして3姉妹が戻ってきて、夕食も特訓所所員によって届けられて夕食になる。3姉妹は疲れのためかメムは必殺技名を考え込んでいるためが終始無言の夕食になる。
夕食を終えて、4人と一匹が入浴を済ませると、
「さあ、ダン。必殺技名について話し合いましょ。」
「メム様、顔が近いです。そんな俺の膝に乗っかって威嚇しなくても。せめて書くものを用意させてください。」
メムが何としてもという感じで俺を話し合いに引っ張り込む。俺も紙とペンを用意して、
「じゃあメム様の思う必殺技名をどうぞ。メモ紙に書いていきますから。」
俺がそう言うと、メムが俺の膝からスルリと降りてメモを書こうと机に向かう俺の後ろに立って、
「そーねー、『メムストーム』、『ストームコンボ』、『メムの乱撃舞』という感じかしら。でも今ひとつビビッととくる必殺技名じゃないのよね。」
と言い出す。
もうどうでもいいよ、じゃあその中からとメムが選べばと俺は言いたいところだが、とりあえずメモはする。
「ねえ、ダンが考えている必殺技名は何かないのかしら。」
メモする俺の右横にきて俺の顔を見ながら聞いてくるが、
「うーん、………あの必殺技を喰らった者からすると、まあ俺より、メム様ならもっと出てくるのじゃないでしょうか。」
「えー、じゃあ、『メム百連拳』とか、…あとは『メムラシーロール』とか、『スカイライジングドラゴニックアタック』とか。」
「ああ、何か一部どこかで聞いたような必殺技名ですね。」
「ぐぅっ、……必殺技が完成してからその名を考えるって、結構大変なことなのね……。」
「さあ、頑張ってください。」
「もしかしてダンは私に協力する気がなくて、この必殺技名を全く考えていないのじゃないでしょうね。」
そうメムに言われて俺はペンを握り損ねる。
「おっとっと、いや、そんなことはないですよ。今メム様の言った技名をメモっていたのですから。うーん、まあ、そうですね…………、あれだ。」
「やっぱり、……やっぱり考えてないのねー!、協力してよー!。」
メムがそうわめいて、俺の右横からのしかかりながらペチペチと軽く猫パンチを頭頂部に打ってくる。
「ま、まあ落ち着いてください。うーん、………あの必殺技を喰らった者からすると。」
「さっきと同じようにごまかすつもりね。」
「いや、本当に落ち着いてください。……じゃあ、『テンペストコンボオブガッデス』なんてのはいかがでしょうかね。」
「ちょっと長いわね。悪くはないけど……。でもテンペストか、それは使いたくなってきたわ。うーん……。」
「じゃあ、『テンペスト・ラッシュコンボ』ってのはどうでしょうか。」
「それよ、それ。そんな感じよ。」
メムが食いついてきたのだった。




