213弾 入浴中は気を使おう?
ガーワンバーさんは話を終え昼食を渡して引き上げる。
3姉妹の分は外で特訓中なのでトレガーマさんが届けるということだ。
「ねえ、私の特訓はどうするの。ダン。」
昼食を食べながらメムが聞いてくる。
「ちょっと修正しますか。」
「え、じゃあさっきメモしていた感じでやってみるのかしら。」
「ああ、そうですね。これでやってみましょう。」
「10日間の特訓期間というけど2日目ももう半ばね。」
メムが意外にも焦ったような声を出して言う。
俺もなんとかヒントでも見つけてメムにアドバイスできればいいが、まずはこの防具を使いこなせるようにしなければならないのだが……。
ふと試したいことを思いつき、寝室に戻りカバンから服を、下着のシャツを取り出して持っていくことにする。
「メム様、少し待っていて下さい。」
俺はメムにそう言って、ロッジの外に出て資材置き場をうろうろしてリヤカー、荷車を見つける。ロッジと庭の隅は距離が近いとはいえ、体力を温存してあの防具を使いこなす訓練をする必要もあるな。
ロッジ前に荷車を置いて、不動の受防具と体力回復ポーションや下着のシャツ、タオルを乗せて、近い距離とはいえ荷車を引き特訓の場に置く。
「ダン、何しているの。」
「ああ、メム様。いえ、これからどうやってメム様と特訓するかを考えていまして。俺の方でできることをやってみようかと。」
俺はそう言っておもむろに服を脱ぎTシャツと短パンの格好になる。
「ダンがいきなり脱ぎ出すから、……何かおかしくなったのかと思ったわ。」
メムがそうぶつくさ言うのを無視して、その格好で不動の受防具うけぼうぐを装着する。
「さて、かかってきて下さい。」
俺はそう言って、メムの特訓を開始する。
夕刻まで、装着→特訓、攻撃→外す、休憩→装着→特訓、攻撃→外す、休憩→装着→特訓、攻撃→外す、休憩………を繰り返してメムの特訓を続けてみる。
「ふぅ、結構やったわね、回数だけでいえば。」
「ええ、これからは、このようにやってみますか。」
「あとは夕食後に話し合いましょう。ダンもお疲れ様。」
「ふうー、これはうまく使えば、俺にも意外といい特訓になるかもですね。」
そう言いながら本日の特訓は終了。
所員が夕食を届けにきて3姉妹も戻ってきて夕食をとる。
疲れのためか皆静かに夕食をとり各自寝室へ。
「皆疲れていますね。」
俺が寝床に座りながらそう言うと、
「そうね、ダンもそうなのでしょ。」
メムも寝床に座り込みながら俺を見て言う。
「まあ、あんな重たいものを着込んでいるとかなり疲れますね。重石をつけて立っているような状態を繰り返すのですから。装着して、メム様の攻撃を受けて、休憩して汗を拭いて、を繰り返しているといい運動になりますね、いや特訓かこれも。」
「で、私の攻撃技はどうなのかしら。」
「集中力が切れる時があるように思えますね。特に最初の方、最後の方で。」
「そうね、いかに集中力の切り替えができるようになるかも考えた方がいいわね。」
「それなら一回一回で集中力を上げて攻撃技を出してみますか。回数を減らして一回に全てを打ち込むつもりで特訓するのはどうですか。」
「ただ闇雲に攻撃技を出せばいいのじゃなく、一回一回を大事にするというわけね。明日はそれでやってみるわ。」
俺とメムが互いに顔を見合わせてうなずく。そして俺は立ち上がって、
「そろそろ入浴しますか。」
「そうね、……でもまだ入浴中ね、ミヤンかしら……。」
鼻をクンクンさせて教えてくれる。
「じゃあ、少し待ちますか。」
俺はそう言いながら寝床に再び座る。
「え、思い切って無理やり入り込んで、混浴しちゃえばいいのじゃないの。」
「なんてこと言うのですか。それにそんな広い浴室じゃないでしょ、ここ。」
「えー、面白くないなあ。もっとウイットの効いた返しが欲しいのに。」
全く、疲れている時に余計に疲れさせるようなことは言わないでほしい……。しかし、
「メム様、そんな言い方をするなんて、大師匠に似てきてませんか。」
「げ、そんなつもりはなかったのだけど、あれと似ちゃうの、……なんかヤダ。」
今ごろは大師匠のディマックさんは大きなくしゃみをしているのだろうか。
そうだ、この隙間時間でちょっと魔術研究、魔弾の運用について考えよう。前に書き綴ったメモを見ながらしばらく頭の中で色々考えていると、
「ねえ、ちょっと長すぎるのじゃない、入浴。」
そうメムが言って立ち上がり浴室へ向かう。俺も慌ててメムの後を追う。
浴室のドアをノックしたが返事がない。やむを得ない、こうなったら……。
浴室のドアにロックはされていないので、俺が苦も無く開くとメムがさっと浴室の脱衣所に飛び込み浴槽へ向かうので俺もまた後を追い浴槽のドアを開けると、
「ちょっと、ミヤン。しっかりしなさい。」
と、メムが声をかける。
ミヤンが洗い場でうつ伏せに横たわっていた。
俺は急いでヘルバティアとミアンを呼びにダッシュする。
ヘルバティアらのいる寝室のドアをノックするが、反応がない。なんでだ?。鍵はかかっていないようだが激しくドアをノックする、でも反応がない。もうこうなったら、いやでももう一回呼び出そう、そう思いながらドアをノックすると、
「ふぁあーい、どうしたのぅ。」
妙に間延びしたようなヘルバティアの声、寝室のドアが開いて、ヘルバティアが寝ぼけ眼で顔を出す。
「あら、ニシキさん。どうしたのぅ。」
どうやら疲れてか寝落ちしていたようだが、
「浴室でミヤンさんが、倒れています。急いで来て下さい。」
「そう、ミヤンがぁ、え、倒れたの。それは、ミアン一緒に来なさい。」
ヘルバティアの寝ぼけ眼がすっ飛んだようで、慌ててミアンに声をかけて浴室へ。
「ミヤン。」
そう言ってミアンも寝室を飛び出す。俺はヘルバティアとミアンの後を追うように浴室へ向かう。
「あー、すみません……。私どうやらここで寝落ちしたようで……。」
俺が浴室に行くと、ミヤンは洗い場で上半身を起こしており、ヘルバティアとミアンに体を拭かれていたのだった。
これ以上は俺が見届けるわけにはいかないな……。とはいえ見ちゃったものはしょうがないか。そう思いながら俺は自分たちの寝室にて待機する。
浴室ではしばらくばたついていた様子だったが、寝室のドアがノックされ開けると、メムとヘルバティアがそこにいた。
「ミヤンさんは大丈夫ですか。」
俺が確認する。
「ええ、あの子浴室で寝落ちしちゃったようね。」
とヘルバティア。
「まあ、急病とかじゃないようですね。俺も一安心です。」
俺が安堵するところに、
「まあ、あのまま寝落ちしていると風邪をひいていたかもね。でも、私とダンが見つけて良かったかもね。ダンはしっかりミヤンの裸体を見れたわけだし。」
メムが火種をぶち込んでくる。
「見ました。申し訳ないですが緊急事態だったので。」
ここは正直に言うしかないが、
「ニシキさん、分かっているから。しょうがないわよ。アクシデントね。」
ヘルバティアはそう言ってくれるが、目が笑っていなかった。
「では、俺とメムで入浴しますので。」
この微妙になった空気を変えるべく俺はそう言い捨てて浴室へと急いだのだった。
浴槽に体をつからせメムが来るのを待っていると、ミヤンの声がして、
「あのー申し訳ありませんでした。ここで寝落ちなんて……。」
そう言いながら浴槽前のドアを開けてメムとミヤンが顔を出す。
「ねえ、ダン、ミヤンが詫びをしたいのだって。」
ニヤニヤしながらメムがそう言ってくる。
「ミヤン、何しているのですか。あなたはもう寝てて下さい。」
そう言いながらミアンが現れる。
「何って、さっきの騒動の詫びを、あと見られたお返しに私もニシキさんの裸体を見続けてやるために。」
「何言ってるの、ミヤン、バカなの。」
「ちょっと、静かにしなさいよ、ミアン、ミヤン。さあどうぞ、ゆっくりして下さい。寝落ちしてもいいように私が見張っておきますので。」
ヘルバティアまで乱入してくる。
「……もう勘弁して下さい。静かに入浴させて下さい。寝落ちの心配はしなくていいですし、だからってみんなで見張られても、狭い浴室ですから……もう帰って下さい。」
俺は半分泣きたい気分になる、もうこれ以上は疲れるようなことに巻き込まれたくない。なんでこんなことになるのか……。そこにメムが、
「なかなか味わえることないじゃない、美少女に見守られながら入浴なんて。」
「3人は本当にもう帰って下さい!。はい、メム様。さっさと体を洗いましょう!。」
落ち着いての入浴を諦めて、3姉妹を追っ払いさっさと体を洗い入浴を終えることになった。




