192弾 特訓所とやらで特訓しよう?
その翌日、朝食後
「じゃあ特訓場所はどこにしましょうかしら。」
とヘルバティア。
俺はこの特訓場所の選定についてはどういう場所がいいのか何の情報も持っていないので、半ば蚊帳の外である。
「組合本部の鍛錬室とかはどうなのですか?。」
俺が聞いてみると、
「いえ、あそこは魔術についての鍛錬ができないので……。」
ミアンが俺に理由を説明してくれる。
「エビンロコ山、ムードイピュ岳、ルロス峰、この3箇所が候補地として妥当でしょうね。」
ミヤンがそう提案する。
「そうね、まずはエビンロコ山の特訓所がいいかもしれないわね。この国内にいるハイランカーのパーティが集まるらしいし。」
山ごもりしてものすごいハードな特訓とかをやるとかになるのかな。もしかすると兎跳びで山道を登っていくとか、100人組み手をするとか、何か理不尽な条件でサバイバル訓練とか……。
「ハイランカーのパーティが集まるとか言っていましたが、そもそもその特訓所というのは何ですか?。」
3姉妹に聞いてみる。
「あー、そうね。組合本部で説明できなかったことを説明した方がいいわね。」
とヘルバティア。
「そうですね、では、まず冒険者ランク10級は冒険者として最高最強のランクを意味するのはわかりますか。」
ミアンが説明を始める。
「まあ、俺も最初の説明で最高ランクは10級という話は聞きましたが。」
「10級へのランクアップ試験の内容が皆知っていることには疑問を持ちませんでしたか?。」
「まあ、試験内容について俺は聞いたことがなかったので、少し疑問はありましたが、さほどに疑問は持ちませんでした。しかし、内容が内容なのでそちらに好奇心はありますが。」
「基本的に期間は変動しますから3ヶ月以内はあくまで基準になります。前に私が言った、強獣ごうじゅう15体以上もしくは狂獣きょうじゅう2体以上を退治すること、と、イダーゴンの葉を1人あたりで3カロガラム集めることは実は連動した試験になります。」
そう言ってミアンは厳かにかつ険しい表情になる。
「連動した試験?。どういうことなの?。」
メムが尻尾をまっすぐにピンと立ててミアンに聞いてくる。
「イダーゴンの葉については、組合本部で聞いたと思いますが、セナシュー・イキュン国かデー・イッカホ国のとある地とにのみ存在しているものです。ただその場所に入るのには狂獣を倒す必要がある。」
「もしかして、その狂獣を最低でも2体は倒さないとイダーゴンの葉を採れないということですか?。」
「ニシキさんの言う通りです。そのイダーゴンの生息地にはヘビースネークという狂獣がいますので、それを駆除しながら葉を採集することになります。このヘビースネーク、魔法属性を多様に持っていますので、それを見極めて対応する必要があります。」
「なるほどね、それで連動した試験と。」
「ただこの試験内容には抜け穴があって、先に葉の採集をしておき、ヘビースネークに遭遇したら撤退することで、葉の採集量を稼いで条件を満たすことも可能なのです。」
「要は採集した葉の量は、次の再試験に持ち越せるということだな。」
「ただ、実力を測る点から、もしくは強獣15体以上の退治、を条件につけています。」
「だから期間は変動するというわけか。狂獣1体に強獣7.5体というのは戦闘力の割合比からかな?。」
「ええ、単純にいえばそれくらいの力の差があります。」
うーん、なるほど、死亡率も高いというのはそういうことか。しかしヘビースネークはどんな獣なのだろうか。
「さっきヘビースネークは魔法属性を多様に持っていると言ったけど、どういうことなのかしら。」
メムが恐怖心を含んだ声で聞いてくる、俺もこのヘビースネークについては正直怖い。
「そうですね、ヘビースネークについてはわかる限りの情報としては、まず、どんな属性の魔法を発動させてくるか全くわからないのです。どれも同じような白色の太縄のような体型です。大きさについては長さが20マータル近くあるものもいて、それでいて潜伏して奇襲をかけるのが得意なのです。」
一口茶を飲んで、ミアンが説明を続ける
「奇襲といっても、2パターンあり、いきなり魔法を発動させて攻撃するか、一人に襲いかかり体を締め上げる攻撃をするかになります。」
「うーん、こんな話を聞くとよく倒せるパーティがあるものなあと思うが……。」
「本当、どうやって倒したのかしら。」
俺とメムはそれぞれに同じような疑問を口にする。
「まあ、正直なところ装備と人数かしらね。生き残ってランクアップ試験をクリアしたパーティは、大体が最大上限人数の9人で試験を受けているし、いい装備品を使うし、杖もいいものだしね。」
「だから重課金試験とか廃課金試験とか陰で言う方もいるのよね。」
ヘルバティアとミヤンがそれぞれ俺とメムの疑問に回答と補足説明をする。
「ひどいところになると、9人のうち1人を囮にして、その囮に襲いかかってきた後でヘビースネークに攻撃をするということで倒すことも。」
ミアンが憤りを含んだ声で言う。そりゃなんとまあ……。人柱で攻撃か。
「さすがにそれで試験をクリアにはならなくなったらしいけどね。」
当たり前だろうな、ミヤンがそう言うのを聞きながら俺はそう思う。
「だとしたら、このパーティでランクアップ試験を受けるのは今はやめておいてもいいのじゃないのかなあ……。」
「私もダンに賛成よ。」
俺もメムもこんな話を聞くと、俺たちのパーティじゃ無理ゲーにしか思えなくなってくる。
「わかっているわよ。再試験も可能なのだから、今回はあくまで記念受験よ。」
ヘルバティアがそう言う。ああ、記念受験か……。
「ただ記念受験といっても、これを機会に能力の向上は図れるのですから。特訓所を使って能力向上に励むのです。」
ミアンがそう言うが、俺は少し納得できない。
「で、その特訓所って何なのか答えを聞いていないのですが……。」
俺はその肝心の答えを求める。
「そうだったわね、特訓所とは、……特訓をするところよ。」
ヘルバティアがドヤ顔で言って胸を張るが、慎まやかだな、胸、長姉なのに。じゃなくて、
「ええ、だから特訓ってどんな特訓をするのですか?。」
「魔術研究が存分にできます。魔法発動が思いっきりできるので、最強魔法の発動も可能なのです。」
ミアンが長姉のフォローにかかる。俺はミアンがこの3姉妹の中では一番まともな気がしているが、やっぱりそうなのかもしれない。
「まあ、宿泊所もあってそこから魔術研究のためにフィールドへ行ったり、格技場もあるから組み手、素手格闘の特訓もできる施設があるのよ。」
ヘルバティアが言い足す。
「特訓所は各街の組合本部が資金提供しているからな。ただ組合本部の紹介状がないと使用できない。」
ミヤンが気合を入れた表情で言ってくる。
ああ、だから特訓をどの場所でするかになるのか、というか聞いた感じだと合宿所みたいなものか。あとは、
「それに最後の組合本部長及び警備隊総隊長の推薦する者と戦闘で勝つことというのは、特訓所でそれをするとかですか?。」
俺が試験内容の最後について確認する。
「いや、これは流れ的には最後にやる試験になるかしらね。この戦闘で負けて再試験をするということもままあるから。」
「そうね、基本的には各パーティメンバー1人ずつがこの推薦する者と条件戦闘で戦うのよね。稀に無双状態で、1人で3人を倒した者もいたけどね。」
とミアンとミヤンがそれぞれ交互に説明する。
「やっぱり時期尚早じゃないですか。よく組合本部長もやらせるな……。」
俺はやっぱり反対を表明する。メムも俺の横で頷いて反対を表明する。




