4.父、メイドと会話する
扉を開いて現れたのはクラシカルな装いのメイドだった。いわゆるヴィクトリアンメイドである。少女と呼ぶべき年齢の小柄な女の子で、白に近い金髪ショートヘアーでブルーグレーの瞳のきれいな女の子だ。黒のロングワンピースに白のフリルエプロンを身に着けた彼女は、晃と目が合うと少し目を見開き話し始めた。
「6f94b@x@ejr」
「ぱーどぅん?」
とっさにフランス語が出てしまったが、彼女の話している言葉が分からない。いや、英語でもぱーどぅん言うが。
「%zsbzakbsf@fz4d@ueyqz:……Do you know this language?」
やっとわかる言葉が聞こえた……ただし英語で。
「Yes, I do. But, I am not good at English.」
「Me too...」
晃は勉強はできる方だったが、英語はもっぱら読む専門なので、しゃべるのには慣れていなかった。しかし、ようやくまともに会話ができたので余裕が出てきた。ヴィクトリアンメイドが英語をしゃべるのは`ぽい`なあとぼんやり考えていた。
メイドの彼女も英語を話すのには慣れていないようだった。ゆっくり話してくれるので英会話初心者には聞き取りやすくて有り難い。
「Where is here?」
「5zs...bbfq@yuxjk67dgw@r」
またわからない言葉になってしまった。ほんとに英語は苦手なようだ。どうやら彼女の母国語らしいが晃にはどの国の言語なのか見当もつかない。
しばらく考えるようなそぶりを見せるとメイドの少女はどこかへ去ってしまった。
少しして、さっきのメイドが男性を連れてやってきた。
メイドよりも頭一つ分背が高いその男性は、スーツを少し豪華にしたような服を着ていた。紺色のジャケットの襟と袖の部分には銀糸で細やかな刺繍がなされており、ネクタイも光沢のある素材で刺繍と同じような柄のものだった。目鼻立ちがよく、白人のような顔立ちだが、肌の色は日本人のようにベージュ色できれいに筋肉がついた整った男性、いわゆるイケメンの部類に見えた。
メイドが開けた扉から大股でやってきたその男性は晃のベッドサイドにたどり着くなり、口を開いた。
「やっと目が覚めたんだな、父さん!」
二人とも英語ができないので間違ってたら二人ともそのくらいの英語力だと思ってください。