前へ目次 次へ 37/42 無 貴女と出会うまで、わたくしには自分、というものがありませんでした。 空っぽで、虚ろで、父の言いなりな、木偶。 貴女に会って、わたくしはわたくしを取り戻し、貴女の言葉で、わたくしは『人』として生まれ変わる決心をしました。 人として生まれ変わるのですから、新たな傀儡師になってください、とは申しません。 ですが…… ひとりで歩くにはまだ不安があるのです。 生まれ変わったわたくしを、傍で見守ってほしい、と願ってはいけないでしょうか……? 駆け落ち初期のとある宿で。