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雪
雪なんて、大嫌いでした、こどもの時。
理由は、想像がつくでしょう?
体調を崩すんです、雪が降ると。それも、咳とかくしゃみの前触れもなく、いきなり発熱が。
そのせいで、北部で初雪が降ったという報せが届くと、一人だけ家族から離されて避寒地に遣られるのも、嫌いな理由のひとつでした。
今は?
そうですね、あの日からはそれほど嫌いではありません。
あの日がいつかって? わかるでしょう?
わからないのでしたら、『あの晩』と言い換えてもいいかもしれませんね。
熱で朦朧として、よく覚えていないのがかえすがえすも残念です。せっかく貴女のしょ……
まあ、それは措いておくとしても、
…………こうやって降り籠められてしまえば、二人きりになれるのだから、雪も悪くないですね。
とある雪の夜のこと。




