終結、リリアはお別れすることにしました
最終話です。
―その頃。
リリアは、トリヤが拘束されたとアロカから聞いた瞬間、
頭が真っ白になった。
「え……トリヤが……?」
「違法薬物を使用していたらしい。これからどうなるか……」
胸がぎゅっと締めつけられ、立っているのもやっとだった。
アロカはそんなリリアを見ていられず、そっと両手を握る。
「……トリヤが薬物依存になっていたって話だけど、
だからって、リリアにしてきたことは絶対に許せない」
「アロカ……」
その言葉に、リリアはようやく自覚した。
自分はもう、傷つけられることに耐えられないのだと。
花を奪われ、脅され、心を踏みにじられた日々。
そのすべてに、もう限界だった。
リリアは震える手で手紙を書き、
そっとタンポポを添えた。
届けてくれるというアロカの言葉に甘え、手紙を託した。
――――――――――――――――――――――――
「面会だ」
牢番の声に、トリヤは重い頭を上げた。
「リリアの幼馴染、アロカだ。リリアからの手紙を届けに来た」
「……リリア?!」
トリヤは勢いよく立ち上がり、鉄格子にしがみつく。
アロカの手から手紙を奪うように受け取ると、
震える指で封を切った。
――――
トリヤへ
薬物のこと、聞きました。
体調は大丈夫ですか?
ごめんなさい。
薬物のせいだと言われても、
私はどうしてもあなたを許すことができません。
でも、伯爵家に仕える前の時間は、
本当に幸せでした。
リリア
――――
短い文章を、トリヤは涙をこぼしながら何度も読み返した。
(リリア……俺も幸せだったんだ……
なんで俺……こんなことを……)
アロカは静かに言った。
「リリアは本当に傷ついていた。
でも最後まで、お前の悪口を言わなかった。
“前みたいに戻ってくれるんじゃないか”って……ずっと思ってたんだ」
アロカの目が鋭くなる。
「……ここを出ても、絶対にリリアに近づくな。
これ以上リリアを傷つけるのは、俺が許さない」
それだけ言うと、アロカは背を向けた。
取り調べの結果、トリヤは薬物を販売していたわけではないと判明し、
薬物依存から抜け出すため、更生施設へ送られることになった。
施設へ向かう馬車が、偶然リリアの花屋の前を通ると気づいたトリヤは、
鉄格子に顔を押しつけるようにして外を見た。
(リリア……リリア……)
「……リリアだ!」
店先で花に水をやるリリアの姿が見え、
トリヤの目に涙があふれた。
(あ……あいつ……)
リリアとおそろいのエプロンを着たアロカが、
優しい笑顔でリリアに話しかけている。
リリアも微笑み返し、二人は色とりどりの花に囲まれていた。
温かい風が二人を包み、
そこにはもう、トリヤの入る余地はなかった。
(俺……俺……ごめん、リリア……!!)
自分がいた場所がどれほど得難いものだったか。
トリヤはようやく理解し、
流れる涙を止められなかった。
――――――――――――――――――――――――
「リリアー!こちらのお客様、赤とピンクでまとめてほしいって」
「はーい。こちらで伺います」
リリアは慣れた手つきで花を束ね、
ロイカがくれたリボンで仕上げた。
「どうぞ。ありがとうございます!」
「まあ、綺麗にまとめてくれて……また来るわね」
客を見送ると、二人はほっと息をついた。
「ロイカがいてくれて、本当に助かるわ」
「リリアを放っておけないんだ。
好きでやってることだし、気にしないで。
リリアが元気で笑ってくれるのが一番だから」
ロイカが優しく笑う。
トリヤが捕まってから、リリアはしばらく沈んでいた。
店では笑顔を保っても、家に帰ると疲れ果ててしまう日々。
そんなリリアを支えてくれたのがロイカだった。
(ここまで元気になれたのも、ロイカのおかげだわ)
リリアは、今の毎日が穏やかで温かく、
幸せに満ちていると感じていた。
「ありがとう、ロイカ」
「どういたしまして。これからもずっと支えるから」
その言葉に、リリアは頬を染めた。
〈完〉
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